今日(2017年6月23日)、午後7時から光州全南大で、大学主催の市民読書運動の一環として「一冊の本トークコンサート」が開かれました。
市民を対象にインターネット上の投票で「市民が選ぶ一冊」を選出。そこで、約1年前に出版された小説家・韓江(ハン・ガン)の最新刊
「흰」(白い) (副題 The Elegy of Whiteness、残念ながら日本語未訳)
が選ばれました。
そして、本日はその作者を呼んで、行事が開かれたというわけです。
コンサートは、約千人入る会場がほぼ9割埋まる中、作家を壇上に迎え、文芸評論家・車美怜(チャ・ミリョン)光州科学技術院教授が進行役を務め、著書の一部を朗読しながら、市民アンケートから抜粋した作家への質問を行う形で2時間あまりの間、行われました。
韓江(ハン・ガン)は昨年、作品「菜食主義者」が、韓国人小説家として初めてイギリスの文学賞ブッカー賞を受賞し、話題になった光州出身の小説家で、代表作の一つ「少年が来る」は光州民主化抗争を題材にしています。
https://www.amazon.co.jp/%E8%8F%9C%E9%A3%9F%E4%B8%BB%E7%B...
特に、「少年が来る」は、個人的に光州事件に関心のある人にはぜひ読んでほしい力作です。(内容的には読むのが辛い作品ですけど…自分は途中で読めなくなって、半年ほど放置してました。しかも翻訳版は、ちょっと高いなあ…)
https://www.amazon.co.jp/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%81%8C%E6%9...
韓江(ハン・ガン) Wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%93%E6%B1%9F_(%E5%B0%...
以下は、その行事の内容の抜粋です。
本来、きちんと質問内容や朗読された部分の翻訳まで入れて、整理すればいいんだろうけど、そこまでする余力がないので、主な内容のメモを箇条書きに近い形で書いておきます。
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自分(韓江(ハン・ガン))には、早産で生まれて二時間で息を引き取った姉がいた。そう母に聞かされて育った。
生まれたばかりなのに、まっ白なきれいな肌をしていたという姉。
今も色白の父(小説家・韓勝源)、その父が世界で一番の美男だと信じている母。
それに反して色黒の自分。
子供のころ、姉が欲しかった。
自分は本来、姉のものだった人生を自分が与えられているという、「もうしわけなさ」を感じてきた。
言われてみれば、自分の作品には姉妹が出てくるものが多い。
「少年が来る」の作業が大詰めのころ、詩人の同僚と食事しながら、
「各自が様々な色をテーマに作品を書いたらどうか」
と冗談まじりにした雑談がきっかけで、「흰(白い)」を書き始めることに。
雑談の翌朝、「白」から連想されるものを書き出す。
おくるみ/産着/塩/雪/氷/月/米/波/白い木蓮/白い鳥/白く笑う(茫洋とした無邪気な笑い(慣用句))/白紙/白い犬/白髪/白装束
(「흰」9ページ、書き出し部分)
韓国語の「白い(희다)」と「白い(하얗다)」とを比べると、「白い(희다)」には、哀しみ、生と死、根源がある。
それぞれのものへの断想を元に作品にしていけば、その過程で何かが変わるという予感があった。
その後、ポーランドの翻訳家(「菜食主義者」の訳者)の勧めで、ポーランドに短期滞在。
その間の体験を元に執筆。
1章はそのほとんどが自身や家族の本当の体験を
2章から現れる小説の主人公「彼女」は生まれてすぐに死んだ自分の姉であり、彼女だったら自分が暮らした未知の土地(ポーランドのワルシャワ)をどう見て、どう感じるだろうか、を
3章は、その彼女(姉)の帰国と別れ
を描いた。
姉に白いものを返してあげたかった。
生きるのはいいことばかりではないけど、その中の白いもの、美しいものだけを姉に返しなら、喜んでもらえると思った。
一時、廃墟と化したワルシャワ。
白い廃墟の延々と続く破壊後の映像を見た。
頑固たる強い意志でその時、失ったものを再現した都市。
姉の目でその都市を眺めた。
<作中、死者の目で物事を眺めることは、辛くないのかという質問に対して>
辛くないかといえば、もちろん辛いが、かといって書かないことのほうがもっと辛い。
自分が生きている意味が分からない。それを知りたくて、書いている。
ある先輩作家にもっと楽に作品を書けばいいと言われ、理解ができなかった。自分には、このやり方しかできない。
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*一応、写真も撮ったんだけど、俺が写真が下手な上、この方、しゃべるときに、一つ一つ言葉を選ぶように伏し目がちに話すので、撮った写真が全部、目を閉じてるようにしか見えない…遠景だけあげておきます。
*メモと記憶をもとに書いたので、若干、単語の選択等、違っているかもしれません。文責は私に。
*実際のトークはもう少し、合間合間に冗談などのユーモアを挟みながらのものだったのですが、本筋に関係ないので、割愛してます。
*知人が内容を知りたがってるので、公開範囲を、WEB全体に公開、にしておきます。
追記
2018年12月に邦訳が出ました。
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%8...
コメント
06月24日
06:50
1: ぶんけん
日本語ウィキを見たら、最新刊や詩人としての活動が記述されてなかったんで、ものすごく久しぶりに編集加筆しちゃった…