pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2024年
07月09日
16:02

ふぃるめも313 イスラーム映画祭9上映全作

 
 

 今回は、イスラーム映画祭9上映全12作品を扱います。(含再掲2作)

  イスラーム映画祭9主宰/藤本高之さんにインタビューしました。
  https://www.kirishin.com/2024/03/14/65538/

  
 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第313弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■イスラーム映画祭9
 http://islamicff.com/index.html
 
『私は今も、密かに煙草を吸っている』、超傑作。
ハマム(公衆浴場)での半日の出来事のうちに、《ここで女が生きること》の苦しみと軋み、歓びのすべてが照射される。
パピチャと同じアルジェリア内戦下1995年を、女性スタッフのみで撮り切った本作の気骨に言葉失う。(続

"À mon âge je me cache encore pour fumer/I Still Hide to Smoke" https://twitter.com/pherim/status/1769203769450099176

イスラーム映画祭では、忘れ得ない一作に出逢い続けてきたけれど、今年もまずは『私は今も、密かに煙草を吸っている』がそうだった。
女だけの空間が、男たちの抑圧行動を外部へ締めだすアジール描写が本当に見事。ちなロケ場所はテッサロニキのオスマン朝期ハマム1444年造。

『パピチャ 未来へのランウェイ』https://twitter.com/pherim/status/1320682389299867648
拙稿「身にまとう自由の奥行き、絹布の祈り。」https://www.kirishin.com/2020/10/28/45896/
『ある歌い女の思い出』https://twitter.com/pherim/status/1495143556910292993





『スターリンへの贈り物』
カザフ人鉄道員の男が、ユダヤ人移送客車から排出された死体の中に生きた少年を見つけ匿う。
ソ連圧政下の1949年、ポーランド人/朝鮮人/政治犯の妻/ムスリムら強制移送された人々が助け合う共同体の光景が瑞々しい。寡黙な反骨翁にシビれる。

"Podarok Stalinu/The Gift to Stalin" https://twitter.com/pherim/status/1774778415939551602

『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』https://twitter.com/pherim/status/1740908284738224602
『ポーランドへ行った子どもたち』https://twitter.com/pherim/status/1532560873973501952
『ようこそ、革命シネマへ』https://twitter.com/pherim/status/1267407486862032897





『私が女になった日』
成長し男児との交遊を禁じられる9歳少女、離婚を望み自転車レースへ出場する女、夢みた嫁入り道具を買い揃える老婆。自転車を馬で追う親族の男らが無闇に勇壮。
キシュ島描写も興味深い、マルズィエ・メシュキニ初監&夫モフセン・マフマルバフ脚本作。

"THE DAY I BECAME A WOMAN" https://twitter.com/pherim/status/1782588013798961339

『パンと植木鉢』https://twitter.com/pherim/status/1622796987174371328
『少女は自転車にのって』https://twitter.com/pherim/status/484115096273043457





『メークアップ・アーティスト』
メイクを学びに大学へ通っていいという結婚時の約束を守らない夫との軋轢と、雄大なザーグロス山脈との対照が爽快なドキュメンタリー良作。
撮影班の都会感覚に妻が影響されてると業を煮やす夫の姿はユーモラスで、解決策に一夫多妻が浮上する流れは驚かされる。

"Makeup Artist" https://twitter.com/pherim/status/1785519207800799607

『キャラメル』“سكر بنات” https://twitter.com/pherim/status/1646323269866508288

ちな『メークアップ・アーティスト』はU-NEXT配信中。
因習的価値観を内面化する義母に対しては主人公が優しくいたわることも、ギスギスしない良作となった一因かも。
イスラーム映画祭9併映のイラン映画『私が女になった日』とは、海と山で両極の多民族性も楽しめる。




『ファルハ』“Farha” ヨルダン/サウジアラビア/スウェーデン2021
村を襲う突如の暴力。父により納屋へ隠され、外の状況不明のまま出られず生き凌ぐ時間。
イスラエル建国に伴う1948年のパレスチナ大災厄(ナクバ)を、将来の夢膨らむ快活少女と抑圧的な父という家族景を突き崩す濁流として描く意欲作。娘の面影に“Sofia”↓も想起され。

"Farha" https://twitter.com/pherim/status/1615933943475507206

 『ソフィアの願い』https://twitter.com/pherim/status/1501794736423665664
 『お父さんはナクバと同じ100歳で生まれた』https://twitter.com/pherim/status/1103866194287722497
 『ザ・タワー』https://twitter.com/pherim/status/1364533508589322244


『ファルハ』父役アシュラフ・バルフム(أشرف برهوم/Ashraf Barhom)。
ハリウッド始め様々な映画で“保守的”&“狡猾な”アラブ人の役柄で見かける名脇役の彼、ガリラヤ近郊のアラブ人クリスチャン家庭に生まれ、ハイファ大学で演劇を学んだ経歴の持ち主でした。

 『パラダイス・ナウ』言及記事 https://twitter.com/pherim/status/1205683681962024961
 『タイラント』https://twitter.com/pherim/status/720262516744454144
 『300: 帝国の進撃』https://twitter.com/pherim/status/444740807350689792


パレスチナ大災厄=ナクバが襲う村を描く『ファルハ』。欧米ドラマで悪役を演じることも多い名優Ashraf Barhomの、父権的ながら娘を思う複雑な名演も見ものです。
予約開始30分で満席になった岡真理さんトーク回、去年まで幕間にお話し伺ったりしてたので、時流を感じました。




『戦禍の下で』“Sous les Bombes” 2007
2006年イスラエルのレバノン侵攻直後、行方不明の妹と息子を探すため、主人公ゼイナがMr.ビーン似のTAXI運転手とレバノン南部を旅する紛争地ロードムービー。
主人公ら4人以外全て素人の面々が放つ憤慨も瓦礫の町もガチリアルな気骨作。

"Sous les Bombes" https://x.com/pherim/status/1797510755602104566

『テルアビブ・ベイルート』https://x.com/pherim/status/1592155554302263296
『天国と大地の間で』https://x.com/pherim/status/1512685049149153280





『アユニ/私の目、愛しい人』
シリア“強制失踪”の実態を追う。
アサド政権の不当な拘束による家族の喪失、生の断絶。古代修道院修復で功績あるイタリア人神父さえ“失踪”する現状、を支えるロシアの影が仄めかす希望の無さと、失踪者写真群の放つ無音の呻きに戦慄する。

"Ayouni" https://x.com/pherim/status/1802470573697900561

『馬三家からの手紙』https://x.com/pherim/status/1241237376241815552
『ニューオーダー』https://x.com/pherim/status/1531841606948913152





『辛口ソースのハンス一丁』
婿探しに奔走する、在独トルコ系移民2世の苦闘と恍惚。
妹の不意の妊娠から主人公の物語は半ば強制的に駆動され、保守性も込みで自らの欲望の在り処に無自覚なまま突っ走る姿が清々しい。アテネフランセ現代欧州映画特集にて初鑑賞。

"Einmal Hans mit scharfer Soße" https://x.com/pherim/status/1803573565729677723

『女は二度決断する』https://x.com/pherim/status/989812428983562241
拙稿「女は二度死ぬ、二度生まれる。」https://www.kirishin.com/2018/05/30/14668/
『私の舌は回らない』https://x.com/pherim/status/980722822170361856
『痕跡 NSUナチ・アンダーグラウンドの犠牲者』https://x.com/pherim/status/1389236695275499528





『ハンズ・アップ!』“Les mains en l'air”
チェチェン難民で強制送還の危機迫る少女をみんなで匿い、大人たちへ反旗を翻す。
2067年の老婆が想う2009年パリでのこと。サルコジ右傾化社会へのエスプリが全編で利く、硬派ジュブナイル冒険作。終盤の藪の中展開せつない。

"Hands Up" https://x.com/pherim/status/1805201413800444084

『サマー・オブ・84』https://x.com/pherim/status/1155672647293734913




『憎しみ』
ユダヤ/アラブ/アフリカ系の若者3人が、灰色の日々を駆け抜ける。
パリ郊外映画潮流&ヴァンサン・カッセル人気の原点ついに観た。一触即発テンションが全編凄まじい、アメリ主演青年のマチュー・カソヴィッツ監督1995年作。ヘイトの相貌その結末。

"LA HAINE" https://x.com/pherim/status/1806155568647901427

パリ郊外映画banlieueスレッド https://x.com/pherim/status/1232142772452282369
『アメリ デジタルリマスター版』https://x.com/pherim/status/1723531117884747846/history
『スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話』https://x.com/pherim/status/1302800731586535426





『炎のアンダルシア』
12世紀アンダルシア、ムワヒッド王朝ロマンス。
哲人アヴェロエス=イブン・ルシュドが、王子らの恋模様とイスラーム主義の興隆に巻き込まれる。製作国エジプトの社会風刺を忍ばせるユーセフ・シャヒーン1997年作。焚書刑再現は殊に痛切。

"AL MASSIR" https://x.com/pherim/status/1807178205843091818

『アル・リサーラ/ザ・メッセージ』https://x.com/pherim/status/1239127421598613504




『ハーミド~カシミールの少年』
失踪した父を想うムスリム少年と、インド軍兵士との“アラーとの通話”を介する交流。
インド最北ジャンムー・カシミール地域の紛争を背景に、瑞々しく心の絆を描く良篇。旅行時の諸々が想起され胸熱、父が船大工という設定佳き。

"Hamid" https://x.com/pherim/status/1808327025159295166

ジャンム・カシミール宿窓連ツイ https://x.com/pherim/status/1049317196021678080
ザンスカール山渓昼食 https://x.com/pherim/status/1094059857395605506






 以上です。

 《イスラーム映画祭9》全作連ツイ https://x.com/pherim/status/1767929673651212573

 にしても。主宰藤本さんへのインタビューも8回目。なんのかんのでコロナ禍も乗り切ったし、藤本さんの髪型も色々変わったりして、期せずして続いちゃったものの感慨、なかなかに滋味深く。
 
 



おしまい。
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