今回は、6月2日~3日の日本上映開始作と、特集企画《再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅》上映全4作など10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第268弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■6月2日公開作
『苦い涙』
名匠フランソワ・オゾン新作は、精力みなぎる映画監督が俳優志望青年に溺れて蟻地獄。
ファスビンダー名作リメイクで、主人公らを男性へ、舞台を映画界へ変え本来の自伝的性質をより濃厚に。全てを目撃する秘書役の寡黙さこそ、性愛の奥行きを雄弁に語る姿に震撼する。
"Peter von Kant" https://twitter.com/pherim/status/1664076736550809600
“Summer of 85” https://twitter.com/pherim/status/1424930106271690755
『2重螺旋の恋人』https://twitter.com/pherim/status/1023395969147133952
『婚約者の友人』https://twitter.com/pherim/status/921211563066908672
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』をめぐり書きました。
http://www.kirishin.com/2020/07/15/44134/
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
伝統的生活を守るキリスト教派メノナイトの村で、集団的な性暴力から逃れるため女性たちが密かに話し合う。
ルーニー・マーラらが、意見の相克を乗り越える過程を熱演。実話ベースの質実な会話劇を、筆記者=実直青年(ベン・ウィショー)の視点が際立たせる。
"Women Talking" https://twitter.com/pherim/status/1661929016604131328
【映画評】 壊れた世界をたて直す 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
http://www.kirishin.com/2023/05/29/60534/
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を巡り書きました。↑
男達を赦すべきか、戦うべきか。
村を出るべきか、残るべきか。
女達の決断と、1人の青年が果たす役割、サラ・ポーリー監督作の深さの由来、など論じました。
『田園の守り人たち』https://twitter.com/pherim/status/1144440873465159681
『ある歌い女の思い出』https://twitter.com/pherim/status/1495008991197294593
『私たちは歌で語る』https://twitter.com/pherim/status/1320514182706417664
『ブラック・デーモン 絶体絶命』
巨大ザメが、海底油田の環境汚染に怒り心頭。そうとは知らず、家族を連れ企業幹部が訪問さぁパニック。
海洋プラットフォーム火災でバーニング・オーシャンを更新しつつ、メガトロン言及含めMEGへと挑む意欲作。アステカ神話にゴジラ構図にてんこ盛り楽しいよ。
"The Black Demon" https://twitter.com/pherim/status/1663524025220616193
■特集上映《再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅》 2023/6/3~
https://khudojnazarov.com/
『少年、機関車に乗る』“Братан”1991
17&7歳兄弟の、父が暮らす遠くの街への機関車旅。
ソ連末期タジキスタン大平原ゆく列車は駅でもない運転士宅で止まり、トラックや馬と競争し、不良少年団から投石を浴びるなど読めない展開が飽きさせない。バフティヤル・フドイナザーロフ26歳時デビュー作。
"Братан" https://twitter.com/pherim/status/1663016151415398400
『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』https://twitter.com/pherim/status/1217643668515033089
『鉄道運転士の花束』https://twitter.com/pherim/status/1160757929261195265
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』“Кош-ба-кош”1993
町の上空ゆくロープウェイの操縦士青年が、博打のカタにされた娘を想う。
ドタバタ劇の要所要所でロープウェイのカーゴが舞台となることが生む、物語の抜けと画のキマり方が爽快。撮影中に内戦勃発、背景へ取り込む瞬発力。
"Кош-ба-кош" https://twitter.com/pherim/status/1664194622283816960
『ルナ・パパ』“Лунный папа”1999
村に暮らす17歳少女が、旅芸人のテントを訪れた夜ふしぎな体験を経て子を孕む。
お腹の子を語り手とする、村八分さえコミカルに描かれる妊婦の奇想天外大冒険。診察台の乗り方を知らず飛行ポーズをとる秀逸カットが、全編の軽さと疾走感を象徴する。終幕最高。
"Лунный папа" https://twitter.com/pherim/status/1665554804628770816
かわいすぎる主演チュルパン・ハマートヴァは『グッバイ、レーニン!』から『インフル病みのペトロフ家』まで幅広い履歴があり、ハリウッド映画でもよく見かける伊達男な弟役モーリッツ・ブライブトロイもまた世界的名優と言ってよく、バフティヤル・フドイナザーロフをマイナー/カルト監督扱いすることのほうが誤りなのだと感覚。
チュルパン・ハマートヴァ出演作:
『インフル病みのペトロフ家』https://twitter.com/pherim/status/1511907278848364545
『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』https://twitter.com/pherim/status/1217643668515033089
『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』https://twitter.com/pherim/status/1125950422529728514
モーリッツ・ブライブトロイ出演作:
『修道士は沈黙する』https://twitter.com/pherim/status/973116439287627776
『ワールド・ウォーZ』https://twitter.com/pherim/status/368726788949553152
『消えた声が、その名を呼ぶ』https://twitter.com/pherim/status/908639910591995904
拙稿「あるアルメニア人の旅路」https://note.com/pherim/n/n2871bb175b07
『海を待ちながら』“В ожидании моря”2012
海が干上がり陸の孤島と化した古い漁村へ、かつて海難事故ですべてを失った男が帰還する。
アラル海縮小を背景する、陸の船を引きずり流浪する男の物語。バフティヤル・フドイナザーロフ乗り物シリーズ中で最も哀切に充ちて風刺も鋭く、黙示録ENDに戦慄する。
"В ожидании моря"
■国内過去公開作(含映画祭上映作)
『ザ・ディープ・ハウス』
湖底のホラー屋敷物という複合技。
廃墟+水中探検の設定だけで垂涎級。セットごと巨大プールへ沈めて撮影敢行、って逸話も狂ってて好きdeath。
YouTuber男女が、視聴数欲しさに危険冒す自滅展開の、寅さん級の安定感なごむ。U-NEXT配信中。
"The Deep House" https://twitter.com/pherim/status/1662791770391068673
『海底47m 古代マヤの死の迷宮』https://twitter.com/pherim/status/1381842800388448256
『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』2018
製作開始から38年がたつ未完の大作『外套』。
ロシアの現場アトリエで取材班を待っていたのは、旺盛かつ饒舌な哲学者のようなノルシュテイン本人の語りだった。
“ソ連下の制約こそタルコフスキーに創作の自由を与えた”とは、彼ならではの至言。
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■2023年秋公開作
『旅するローマ教皇』
教皇となり南米からバチカンへ入った男の旅路へ、紛争下エリトリアからイタリアへ脱出した男が随伴する。
ジャンフランコ・ロージ監督の眼差しは、就任後9年で53カ国を訪れた教皇フランシスコの熱意と陽気さの奥向こうに、唯一無二の政治性を引き受けた者の孤独を捉える。
"In viaggio" "In Viaggio: The Travels of Pope Francis" https://twitter.com/pherim/status/1663742988261167104
2020年作『国境の夜想曲』“Notturno” https://twitter.com/pherim/status/1491019101715582979
2016年作『海は燃えている』https://twitter.com/pherim/status/829540157674057728
2013年作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』https://twitter.com/pherim/status/508867705277906944
拙稿「教皇という孤独 『旅するローマ教皇』」 http://www.kirishin.com/2023/06/02/60588/
※ジャンフランコ・ロージ監督へのインタビュー記事を、2023年秋頃掲載予定です。
余談。
フドイナザーロフが凄かったです。というか中央アジア~カフカース周辺には、まだ日本では知られてない名監督&名作群がたんまり眠ってるんだろうなと。なにしろ地理的にも、モスクワ/全ソ国立映画大学文脈と映画大国イランに挟まれてるわけで。
#2023年5月映画ランキング
https://twitter.com/pherim/status/1663660742518910976
帰れない山
ナイン・マンス
旅するローマ教皇
少年、機関車に乗る
ウーマン・トーキング 私たちの選択
セールス・ガールの考現学
ぼくたちの哲学教室
劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE
それでも私は生きていく
苦い涙
次点:ブラック・デーモン
番外:EO, BEEF
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
06月04日
12:07
1: いなだ つつみ
ロープウェイのやつと、砂漠を行く船のやつに心奪われました
06月05日
12:06
2: pherim㌠
いなださんは観ると必ず何かしら面白い発見をしてくれそうです。渋谷でやってますのでお気が向きましたらぜひ~ヽ(`▽´)/