pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
05月27日
19:16

ふぃるめも267 メーサーロシュ・マールタと魔女教室

 
 

 今回は、5月26日~27日の日本上映開始作と《メーサーロシュ・マールタ監督特集》上映全作など10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第267弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■5月26日公開作

『aftersun/アフターサン』

11歳の娘と、兄に間違われる31歳の父が過ごす夏。
思春期の入り口で様々に絡まる娘の想いと、離れて暮らす父の屈託が時にぶつかり、時に溶け合う。
古い家庭用ビデオカメラのザラつく色調で魅せる情感表現と響き合う、輪郭不明瞭な語り口がひたすら沁みる。A24北米配給。

"Aftersun" https://twitter.com/pherim/status/1658810500329902080




『THE KILLER/暗殺者』
少女を守る殺し屋の突貫。
あれこれ策を弄さず毎度正面突破しちゃう面白さ。
オールド・ボーイ伝来のハンマーアクションも楽しい。
レオンからジョン・ウィック、アジョシへ連なるアサシン+少女の王道路線へユーモア加え、換骨奪胎する手つきに直近の韓流がもつ巧さ光る。

"더 킬러: 죽어도 되는 아이" "The Killer: A Girl Who Deserves to Die" https://twitter.com/pherim/status/1660958035492347904




『THE WITCH/魔女 ー増殖ー』
超能力少女x秘密組織x犯罪集団の異能バトル三昧。
謎の研究所に捕獲された少女が謎集団の襲撃を生き延び、心優しい牧場主のもと人間らしい感情に目覚めるが。
新手の異能少年少女が続々襲い来るアクション極振りSF、加速するこの韓流娯楽の振り切りモードかなり好き。

"마녀(魔女) Part2. The Other One" "The Witch : Part2. The Other One" https://twitter.com/pherim/status/1661580715551784961 
 
 
 
 
■5月27日公開作
 
『ぼくたちの哲学教室』

ベルファストのある男子小学校では
“哲学”が主要科目になっている。
誕生前に続いた武力衝突の火種がなお残ることへの学びと、内なる怒りや衝動への気づき。
生徒を対立の前線へ絶対に立たせまいという決意が全身に溢れる校長の、哲人皇帝ぶりが凄まじい。

"Young Plato" https://twitter.com/pherim/status/1662084941746929666 
 
 『ベルファスト』https://twitter.com/pherim/status/1503199766238285824




■《メーサーロシュ・マールタ監督特集》 5/26~
 https://meszarosmarta-feature.com/
 
『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』1970
工場で働くユリの、婚約者を含む不良仲間たちに囲まれた灰色で鬱屈とした日常からの解放を描く、メーサーロシュ・マールタ初期作。
1960年代ハンガリーで若者の心を捉えたビート・ミュージックが、恋に落ちた演奏家との逃避行を軽快に引き立てる。

"Szép lányok, ne sírjatok!" "Don’t Cry, Pretty Girls!" https://twitter.com/pherim/status/1658457710818627585

 『WANDA/ワンダ』1970 https://twitter.com/pherim/status/1543524826886705152
 『リバー・オブ・グラス』 https://twitter.com/pherim/status/1441027143895449610
 『ファミリー・ネスト』 https://twitter.com/pherim/status/1487415429932797957
 ‘Varsovie’1962 https://twitter.com/pherim/status/1591187807951028224
 
 
 


『アダプション/ある母と娘の記録』1975
木工所で働く43歳カタは不倫相手との子を欲する。
施設暮らしの十代アンナは彼氏との結婚を望む。
淡々と進むテンポが心地良いメーサーロシュ・マールタ代表作。不倫相手を家族と会わせるクズ男、居候先でsexし悪びれない少女など70sハンガリーの奔放さにビビる。

"Adoption" "Örökbefogadás" https://twitter.com/pherim/status/1659773148961857537 
 
 
 
 
『ナイン・マンス』1976
工場で働きながら農学を学ぶユリ。
ユリと会った翌日に求婚するヤバ目上司にドン引きしつつも愛し合うが、前夫との子がいると知った上司は超スネる。
前作同様に尋常でないダメ男を愛する展開が、質実な映像に不思議リアリティを醸しだす。タイトル回収のラストびっくり。

"Nine Months" "Kilenc hónap" https://twitter.com/pherim/status/1661225714002317312 
 



『マリとユリ』1977
紡績工場の女性工員寮新入りと寮母の交わり。
メーサーロシュ・マールタ長編第7作。アダプションを継ぐ歳の差友情物で、ダメ男要素は倍になる。(互いの夫)
己を騙しても歩みゆく大人のズルさを、子どもが見抜く仕立てが利く。東欧旧ソ連圏インテリアの素朴風味にガチ見入る。

"The Two of Them" "Ők ketten" https://twitter.com/pherim/status/1662310961192243200




『ふたりの女、ひとつの宿命』1980
裕福な女が、夫との子を生んでとユダヤの友人に代理母を依頼して始まる三角関係。
イザベル・ユペールがユダヤ人を演じ、ファシズム迫る1936年ハンガリーを舞台に描くメーサーロシュ・マールタ異色作。度々挿入されるナチス映像が衝撃の終幕で活きる構成の妙。

"The Heiresses" "Örökség"  
 
 


■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

『スマイル』“SMILE”

黙ってじと見してくる笑顔の怖さ。
意味を剥奪された表情ほど、不気味なものはないよなと。大好きイット・フォローズ風味が最後までもつかなって懸念を、中途発現するリング遺伝子が見事に裏切るホラー快作。
コロナ禍下の疑似科学流行を想わせる呪い伝染の仕立ても良い。

"SMILE" https://twitter.com/pherim/status/1659898401587331072 

 『イット・フォローズ』https://twitter.com/pherim/status/1051117409656963072

 
 
 

 余談。メーサーロシュ・マールタのような日本ではマイナーだけど質実な監督特集、コロナ明け後も続いていくといいですね。
 
 その一方、韓流娯楽作は今なおどんどんグレードを上げるさなかに感じられ、殊アクション物に関して往年の香港が世界に対して占めた地位を更新していく予感さえ。おそらく鍵は個別の才能ではなく、産業としての量産体制そのものの拡張にあるのでしょう。





おしまい。
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