今回は、5月30日公開のフランソワ・オゾン監督新作『秋が来るとき』と、オゾン過去作など10作品を扱います。(含配信ドラマ1クール/極短編1作/再掲1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第364弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■5月30日公開作(監督インタビュー仕事作のため公開日前倒しメモ)
『秋が来るとき』Quand vient l'automne
質実のフランソワ・オゾン監督新作。
ブルゴーニュで穏やかに暮らす80歳の女性が、臨終間際の親友から実娘の死の真相を聞かされる。
都会的で母を疎む実娘と、粗暴だが情に厚い親友の息子との対照も鮮やかな、マグダラのマリアを巡る冒頭の説教が全編へ響く、贖罪と赦しの物語。
"Quand vient l'automne/When Fall Is Coming" https://x.com/pherim/status/1916695711606808983
フランソワ・オゾン監督へ『秋が来るとき』を巡りインタビューしました。
→拙稿「自然のうちで祈ること」https://www.kirishin.com/2025/05/30/78426/
フランソワ・オゾン『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』をめぐり書きました。
http://www.kirishin.com/2020/07/15/44134/
フランソワ・オゾンふぃるめも既出作:
『婚約者の友人』2016 https://x.com/pherim/status/1720768137006882914
『2重螺旋の恋人』2017 https://x.com/pherim/status/1023395969147133952
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』2018 https://x.com/pherim/status/1283016948138164225
“Summer of 85”2020 https://x.com/pherim/status/1424930106271690755
『すべてうまくいきますように』2021 https://x.com/pherim/status/1621735620602384384
『苦い涙』“Peter von Kant”2022 https://x.com/pherim/status/1664076736550809600
『私がやりました』“Mon crime”2023 https://x.com/pherim/status/1720768152051867659
『秋が来るとき』2024 https://x.com/pherim/status/1916695711606808983
■フランソワ・オゾン国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)
『ホームドラマ』SITCOM 1998
フランソワ・オゾン初長編は、良き家族イメージのおかしくも切なき決壊を描く笑撃作。
アメリカ直輸入のsitcom=ホームコメディ様式を採用し、フランス現代家族模様を痛烈に皮肉る演出に、技法の多様さで知られるこの名匠の萌芽てんこ盛り。
"SITCOM" https://x.com/pherim/status/1918148290887204925
『0.5の男』https://x.com/pherim/status/1834887353728745721
『ふたりの5つの分かれ路』5X2 2004
離婚協議後の惨めなベッドシーンに始まり、ある男女の歴史を出逢いまで遡る、フランソワ・オゾンの巧緻きらめく一作。
全てを象徴するラストシーンのキマり具合がもう完璧。原題は“5X2”、記号的題名の流行った時期ながら流石に邦題が優る。
"5X2" https://x.com/pherim/status/1926204719212454265
■フランソワ・オゾン国内過去公開作(含映画祭上映作)
『8人の女たち』8 femmes 2002
開幕10分でカトリーヌ・ドヌーヴが踊り、イザベル・ユペールにイビられるエマニュエル・ベアールが死体を見つけ、中心に座すお婆は白黒時代の大女優ダニエル・ダリューっていう銀河級の豪華作。
初長編から4年でこれ撮るオゾンの凄味たるや。
"8 femmes" https://x.com/pherim/status/1919605009265922465
二十数年ぶりに観た。当時この豪華さは全然わかっておらず、良質室内コメディとして楽しんだぼんやり記憶。
『エンジェル』Angel 2007
勝ち気な少女が戦前の抑圧下を生き延びる軽快さ、筆一本で逆境跳ね返す奔放さ。
フランソワ・オゾンが、作家エリザベス・テイラーの1957年小説を洒脱に映画化。画家=マイケル・ファスベンダーとの恋、編集者夫人=シャーロット・ランプリングとの対決など見処多し。
"Angel" https://x.com/pherim/status/1930456141974401284
“Angel”、20世紀以前の困難な状況下で書き続けた女性作家の一代記映画には良作が多い中でも、2007年の本作がもし前半のテンションと機知で駆け抜けていたらMetoo文脈や同性愛描写での再評価を経て、オゾン代表作のひとつと目されたかも。後半の失速が残念。作品検索では見つけにくいが、現在U-NEXT配信有。
実在女性作家一代記モノ:
『コレット』https://x.com/pherim/status/1127767498084929539
『ビッレ』https://x.com/pherim/status/1285042543063789568
『リンドグレーン』https://x.com/pherim/status/1197348766040252418
『金の糸』(ოქროს ძაფი)2009 https://x.com/pherim/status/1497193264977301505
『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』https://x.com/pherim/status/920662015055618049
“Mon amie Victoria”(My Friend Victoria) https://x.com/pherim/status/1316941382389551111
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』https://x.com/pherim/status/1225976700070055936
『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』https://x.com/pherim/status/887553622061457408
『風よ あらしよ 劇場版』https://x.com/pherim/status/1757661726735319546
『しあわせの雨傘』Potiche 2010
赤ジャージに青エプロンの謎ドヌーヴが見られるのは本作だけ。
雨傘工場主の妻が、ワンマン夫が倒れ社長登板したら独特のセンス発揮し大繁盛。原題“Potiche=壺”はお飾りの意。
ジェラール・ドパルデューが昔色々あった男をユーモラスに演じ尊い。
""
『17歳』Jeune et jolie 2013
名門校生イザベルが、バカンス先で初体験を済ませてなだれ込む売春日乗。
瑞々しき主演マリーヌ・ヴァクト、ここから同じオゾン監督作“2重螺旋の恋人”へ繋がるのか。情を通じた客の妻シャーロット・ランプリングが放つ視線の精悍さは鳥肌物。
"Jeune et jolie/Young & Beautiful"
『2重螺旋の恋人』2017 https://x.com/pherim/status/1023395969147133952
『彼は秘密の女ともだち』Une nouvelle amie 2014
幼馴染を失くした主人公が約束を守るため家を訪ねると、その夫が女装し赤子をあやしていた。
ロマン・デュリスのユーモラスで切ない女装演技を、クリシェを逆手に活かすオゾン監督の演出が引き立てる物語の牽引力がもう凄い。
"Une nouvelle amie/The New Girlfriend"
『ガッジョ・ディーロ』“Gadjo Dilo”1997 https://x.com/pherim/status/1624321187307491328
『エグザイル 愛より強い旅』“Exiles” 2004 https://x.com/pherim/status/1640828119186821120
『動物界』“Le règne animal”2024 https://x.com/pherim/status/1855104071663075592
■VOD配信/TV放映作(非劇場公開作)
『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』シーズン1
裕福な白人3組を迎えるハワイ高級リゾートの従業員たち。
セレブ一家の息子が地元の若者と交わり目覚めるくだりやカタストロフへ向かう構成など、Season3が諸々1の更新を目指したとわかる。セラピスト姐ほか共通人物の登場が好趣。
"The White Lotus Season 1" https://x.com/pherim/status/1935172161700003908
『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』Season 3 https://x.com/pherim/status/1919728146435240065
『太陽の下の18才』https://x.com/pherim/status/1397384197400981509
■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)
『そらいろのたね』
これ、ジブリ製作で、ぐりとぐら作者/中川李枝子さんの絵だったと今更知る。
家の種を植える「創造」、動物がわらわら集まり家が膨らむ「共生」、独り占めした主人公が太陽におしおきされる「節度」の3話構成との由。
子供の頃TV番組の合間に観てた謎、世紀超えの種明かしだん。
"" https://x.com/pherim/status/1936996825703330280
『メアリと魔女の花』
https://x.com/pherim/status/928127484834463744
余談。これまで当ふぃるめもで短編を扱う際は、配信ドラマやアニメ1クールと併せることで消費時間の総合を映画へ寄せていましたが、今後はこの流れにCMレベルの超短編も加えることにします。すでに3600作品を超えているわけですが、数十分の短編1、2本を併記しても5時間~10時間超のドラマとかを1本に数え続けるのは、総合的に不整合感が増す一方であるためもあります。すべてがあくまで主観的な話ですが。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh