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　今回は、8月18日～19日の日本上映開始作と、特集《ウルリケ・オッティンガー　ベルリン三部作》上映作などから10作品を扱います。（含配信ドキュメンタリー1シーズン/短編1作/再掲1作）

　タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第276弾です。強烈オススメは緑、超絶オススメは青で太字強調しています。（2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。）


　
■8月18日公開作

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
デヴィッド・クローネンバーグ怪作堪能。
刺青つき臓器を巡る世界観は謎原理に充ち魅惑的。レア・セドゥ「初めの解剖があるのは2度目の解剖があるからです」とかもうひれ伏すしか。
ヴィゴ・モーテンセン&クリステン・スチュワートらの快演も大変美味。

"Crimes of the Future" https://twitter.com/pherim/status/1691752658342994019　
　
『コズモポリス』https://twitter.com/pherim/status/329524963889528832
『ポゼッサー』https://twitter.com/pherim/status/1499577319446355970




『エドワード・ヤンの恋愛時代』“獨立時代”4Kレストア版
アラサー男女の華やかにして孤独な時間。
1994年作で、日本のトレンディドラマを想わせる賑わいと派手さにも関わらず、終盤へ近づくほど光と影で語るエドワード・ヤン/楊德昌の画になりゆく。
「この邦題はない」by濱口竜介 at TIFF talk笑う。

"獨立時代" "A Confucian Confusion" https://twitter.com/pherim/status/1649381067189784576　

『恐怖分子』’86 https://twitter.com/pherim/status/633103405246869504
『台北ストーリー』『恐怖分子』他台北画 https://twitter.com/pherim/status/969891189712338945
『台北ストーリー』’85 https://twitter.com/pherim/status/861035049210097664




『ふたりのマエストロ』
一流指揮者父子の微妙な距離感。
最高峰ミラノ・スカラ座音楽監督への父就任の知らせが、息子と名前を取り違えたと判明さあ大変。
嫉妬やらわだかまりやらプライベートの諸々やらの描写が細かく「え、そゆこと!?」って驚く展開も。『コーダ あいのうた』製作陣参加作。

"Maestro(s)" https://twitter.com/pherim/status/1691986631203713058

『コーダ あいのうた』https://twitter.com/pherim/status/1483998314593144834
『TÁR/ター』https://twitter.com/pherim/status/1656305607694221312




■8月19日公開作　チリの二人組監督《レオン＆コシーニャ》によるストップモーション・アニメ2篇
　zaziefilms.com/lacasalobo/
　
『オオカミの家』
チリ南部のドイツ系集落を脱走した少女が、2匹の子豚と暮らし始めて迷い込む悪夢。
黒い森からの呼び声、抑圧の多重性、変容する認識世界。ここまで象徴的に心をえぐるストップモーションアニメは初めてで、ナチスへ紐づくコロニア・ディグニダが残すトラウマの深さに慄える。

"La casa lobo" "The Wolf House" https://twitter.com/pherim/status/1692764713392980417

『光のノスタルジア』https://twitter.com/pherim/status/716983654719750146
『NO』主演G・ガルシア・ベルナル https://twitter.com/pherim/status/514430856148971522
『1976』https://twitter.com/pherim/status/1594324040432635905
『ローマ法王になる日まで』https://twitter.com/pherim/status/870098713246482432

拙稿『ローマ法王になる日まで』http://www.kirishin.com/2017/06/10/41160/




『骨』“Los Huesos”
愛人として拘束された主人公が死後、権力者の支配から脱する物語。
ミッドサマーのアリ・アスターが惚れ込み製作志願、1901年チリ制作のフィルムが近年、ミイラ化遺体と共に発見されたという設えが良い。不穏と不気味の奥向こうに切なさ炸裂する珠玉短編。

"Los Huesos" "The Bones" https://twitter.com/pherim/status/1693814529325731943

『ミッドサマー　ディレクターズカット版』https://twitter.com/pherim/status/1238658264977440768
『ヘレディタリー／継承』https://twitter.com/pherim/status/1078192681652674560




■特集上映《ウルリケ・オッティンガー　ベルリン三部作》 8/19～　ユーロスペースほか
　https://punkte00.com/ottinger-berlin/
　
『アル中女の肖像』西独 1979
裕福な暮らしを捨て《呑んで生きる》覚悟を決めた女が、ベルリンへと降り立ち始まる限界酒場放浪記。
奇想天外なショットを絡め移動し続ける70s西ベルリン端景も逐一楽しい。『水曜どうでしょう』風パノラマ寸劇など謎の先進性で魅せるウルリケ・オッティンガー初期作。
ファスビンダーが「最も美しいドイツ映画」と評し、リチャード・リンクレイターが最愛の作品に挙げるのも納得の唯一無二時空。

"Bildnis einer Trinkerin" "Portrait of a Female Drunkard. Ticket of No Return" https://twitter.com/pherim/status/1691463421039095808

“Cycling the Frame” 西独1988 ティルダ・スウィントン27歳時
https://twitter.com/pherim/status/1590550760924000256
『一体何故この連中の映画を作るのか？』東独1980 byトーマス・ハイゼ
https://twitter.com/pherim/status/1381213097424134147




『フリーク・オルランド』西独 1981
荒野ゆく黒頭巾の行者が、輝く全裸女性の樹に出逢う冒頭部から延々連なる奇想天外。
ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』をウルリケ・オッティンガーが翻案したフリーク版、ナチス下1936年ベルリン五輪会場など映り込みも興味深い。

"FREAK ORLANDO" https://twitter.com/pherim/status/1692827214986039563




『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』西独 1984
メディア女王の牛耳るバーレスク時空を描く、ウルリケ・オッティンガーの妙なるオスカー・ワイルド翻案作。
芸者姿の歌い手が、胴当てだけ漆塗り鎧だったりして和む。壁の東西が世界の両極みたいな対照性みせる時代感。

"Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpress" "Dorian Gray in the Mirror of the Yellow Press" https://twitter.com/pherim/status/1694315652750946579

『マグネティック・ビート』https://twitter.com/pherim/status/1561548087759618048
『人民警察』https://twitter.com/pherim/status/1383383771827773440
『さよなら、ベルリン　またはファビアンの選択について』https://twitter.com/pherim/status/1533617876225372160




■国内過去公開作（含映画祭上映作）

『ザリガニの鳴くところ』Amazon/U-NEXT
ディーリア・オーウェンズ原作環世界の精彩なる映像化の試み。
人種/性差別等を含み込む、半世紀前の湿地環境を生きる人々の衣食住再現や、自然描写への傾注ぶりで魅せる。野性味を欠く主人公+青年2人の配役と、原作で秀逸だった“監獄の猫”描写だけは残念。

"Where the Crawdads Sing" https://twitter.com/pherim/status/1691071248707813376　

【原作ツイ↓】https://twitter.com/pherim/status/1436983288518758403
湿地に暮らす少女の知性。動物や植物や社会から弾かれた人々の、黙して彼女を見守る優しさ。
全身の覚醒と、湿地への合一をこのうえなく触覚的に描いてその全体が乱反射する水飛沫の光に充ちている。野生動物学者である著者の眼差しが、ふと始まる自然描写の端々に顕れる。

ピラール・キンタナ『雌犬』https://twitter.com/pherim/status/1547137811111100416


　

■国内劇場未公開作（含VOD公開/DVDスルー作）

『OUR PLANET　私たちの地球 II』Netflix
OUR PLANET 第2シーズンは《移動》へ焦点化する好企画。
2年前話題になった、中国南西部を500km旅する象の大群も登場。イレギュラー行動の原因は当然人類なのが切なくも申し訳ない。
精細映像眼福。何か観たいけど人間はいいやって時、ありますよね。

"OUR PLANET II" https://twitter.com/pherim/status/1692375680917615045　
　
『サファリ』https://twitter.com/pherim/status/956855821287043072

　



　余談。チリ製アニメ2篇と西ドイツ映画3篇、クローネンバーグ新作にエドワード・ヤン4Kリマスター。お盆明けの渋さ炸裂、好ましう。





おしまい。
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