pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2023年
08月14日
12:28

ふぃるめも275 ロジエ、ロズニツァ、タランティーノ。

 
 

 今回は、8月11日~12日の日本公開作と、特集上映《みんなのジャック・ロジエ》上映作などから10作品を扱います。(含短編2作/配信ドラマ1クール)

 ※8月11日公開作『アウシュヴィッツの生還者』については次回扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第275弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■8月11日公開作

『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』

レザボア・ ドッグスに始まる作品履歴の逐一を、常連俳優らが情熱的に語り切る。
サミュエル・L・ジャクソンの回想や金欠話など垂涎。
悪名高きワインスタインとの交接から目を背けず、タランティーノの過失にもガチ焦点化する姿勢に見入る。

"21 Years: Quentin Tarantino" "QT8: The First Eight" https://twitter.com/pherim/status/1690198263658696704

来日会見出席時withティカプリオ連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1166353746974167042
栗山千明『キル・ビル』動画ツイ https://twitter.com/pherim/status/1421361956540149761
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』https://twitter.com/pherim/status/1416974863240101888
『ヘイトフル・エイト』https://twitter.com/pherim/status/1602862025671323648

拙稿「タランティーノが目指す場所」 http://www.kirishin.com/2019/09/09/44006/





『ソウルに帰る』
幼い頃フランスへ養子に貰われた主人公が、実親に会うため韓国を訪れるも異文化摩擦に神経をすり減らせる。
出生地での孤独の果てに出逢うもの。カンボジア系仏人監督ダヴィ・シュー自身の経験が反映された映像に、2016年作ダイアモンド・アイランドの万華鏡感が想起される。

"올 더 피플 이윌 네버 비" "Retour à Séoul" "Return to Seoul" https://twitter.com/pherim/status/1663327880540209154

ダヴィ・シュー監督2014年作『ダイアモンド・アイランド』
https://twitter.com/pherim/status/852136967055736832
ダヴィ・シュー製作2021年作『ホワイト・ビルディング』
https://twitter.com/pherim/status/1465885528683790343
ダヴィ・シュー ラインプロデューサー参加2021年作『ONODA 一万夜を越えて』
https://twitter.com/pherim/status/1446082494705459208


『ソウルに帰る』、カンボジア系フランス人監督ダヴィ・シューの醸す、所々で場を主役とするかのような静けさは、名作コロンバス/アフター・ヤンのココナダにも似る。
異人種マイノリティの傍観者的静謐とも言い換えられそうな。イケイケ韓流作群とも異なる持ち味。8/11公開。

『コロンバス』https://twitter.com/pherim/status/1237570383189966848
『アフター・ヤン』https://twitter.com/pherim/status/1588776681707536384





■8月12日公開作 セルゲイ・ロズニツァ《戦争と正義》ドキュメンタリー2選
 https://www.sunny-film.com/

『破壊の自然史』
人類にとって空襲とは何か。
セルゲイ・ロズニツァ最新作が超弩級。
爆撃機と演説、軍需工場で働く市民の日常と瓦礫の街。編集の神業により第2次大戦の対立構図を換骨奪胎する目線の先へ、自ずとマリウポリやアレッポを想起させる構成に戦慄する。音響など演出面も過去最高度。

"The Natural History of Destruction" https://twitter.com/pherim/status/1690542288676823040

『アウステルリッツ』https://twitter.com/pherim/status/1327234717226205184
ゼーバルト引用 https://twitter.com/pherim/status/1330333771720114179
『エセルとアーネスト ふたりの物語』https://twitter.com/pherim/status/1177419828325339137

拙稿「」 ※近日追記





『キエフ裁判』
ナチス高官らを裁く軍事法廷。
東京&ニュルンベルク裁判に比べ知名度の低いそれは、独ソ戦時のナチの蛮行を暴く名目にソ連の内政的思惑が結びつく“人道的報復”のショーケースと化した。
自由の象徴でもある現マイダン広場での処刑場面が孕む風刺は痛烈。

"The Kiev Trial"

『バビ・ヤール』“Babi Yar. Context”https://twitter.com/pherim/status/1566984259675787266
『東京裁判』https://twitter.com/pherim/status/1156398221905686528





■特集上映《みんなのジャック・ロジエ》 7/29~ ユーロスペース
 https://www.jacquesrozier-films.com/

『アデュー・フィリピーヌ』1962
仲良しリリアーヌとジュリエットが、青年ミシェルをとりあいながらも笑い踊るバカンス日乗。
アルジェリア戦争の兵役を控える青年の不安が下地となって、ひたすら陽気な日々を一層引き立てる。ゴダールも嫉妬したジャック・ロジエのヌーヴェルヴァーグ初期傑作。

"Adieu Philippine" https://twitter.com/pherim/status/1683228893493497856




『トルテュ島の遭難者たち』4Kレストア 1976
ロビンソン・クルーソーツアーを企画した旅行代理店の男がその場しのぎを重ね、太っちょの相棒は逃げだし、あげく皆で遭難する。
けれどリアルの遭難をも楽しむ一行の風情が楽しく、そのカラッとした楽天性は『アデュー・フィリピーヌ』にもどこか通じる。

"Les Naufragés de l’île de la Tortue" https://twitter.com/pherim/status/1685424351926251520




『メーヌ・オセアン』4Kレストア 1985
ブラジル人の踊り子デジャニラが、ナント行き列車で検察係と揉める場面に始まる、ジャック・ロジエのゆるゆるロードムービー。
内陸の田舎駅で降り、港町からユー島へ。主人公が入れ代わりつつ車、船、飛行機と乗り継ぐ旅の、想いもよらない終盤展開がよぶ解放感に浸りきる。

"Maine Océan" https://twitter.com/pherim/status/1687817589769269249




『バルドー/ ゴダール』2Kレストア 1963
ゴダールxブリジッド・バルドー『軽蔑』(1963)後半舞台カプリ島の撮影現場に取材したジャック・ロジエのドキュメンタリー。
監督役フリッツ・ラング翁へのフォーカスが、巨匠を仰ぎ見るようなロジエのリスペクトに溢れ奥ゆかしい。

"Le Parti des choses : Bardot/Godard" https://twitter.com/pherim/status/1688395719160569856

『ニューヨークの中国女』1968 https://twitter.com/pherim/status/1653044673622188035
『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』1971 https://twitter.com/pherim/status/1655187105285558272
『中国女』“La Chinoise”https://twitter.com/pherim/status/1648815361041793024
『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』https://twitter.com/pherim/status/1271689436682530816





『パパラッツィ』“Paparazzi”1963
ブリジッド・バルドーを追うパパラッツィたちと、ゴダール『軽蔑』撮影陣によるカプリ島での攻防。
望遠レンズでスキャンダルを狙うハイエナの典型イメージのみならず、警察の悪口など彼らの愚痴にも耳を貸すロジエのフェアネスが珍妙なユーモアを醸して和む。

"Paparazzi" https://twitter.com/pherim/status/1690918100102004737




■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

『ガンニバル』

暴力警官 vs 人肉食一族。
下界秩序の及ぶ里山を、旧家の財力で支配する山奥の後藤家、が崇拝するカニバリズム土俗信仰。素敵すぎる。
そして柳楽優弥と吉岡里帆の夫婦演技。法の番人が時に法を乗り越える必然を《抑え難い怒り》へ結晶化、妻だけが怒りを包摂し得る構図で魅せる。

"GANNIBAL" https://twitter.com/pherim/status/1683457472848363522 

柳楽優弥ツイ https://twitter.com/pherim/status/1082258545607725056
吉岡里帆in『島守の塔』ツイ https://twitter.com/pherim/status/1556816885437861888



 


 余談。『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』は、ある畏友から「観たい」と聞かされるまでノーマークというか存在を忘れていて、公開当日になってギリで試写サンプルを観て水準の高さに驚く始末。
 
 他監督によるありきりたりドキュメンタリーと舐めるなかれ。タランティーノ映画ファンなら必見の仕上がりになってます。





おしまい。
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