今回は、3月29日~4月5日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第302弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■3月29日公開作
『美と殺戮のすべて』
現代美術界のスターであり続けるナン・ゴールディンが、オピオイド問題を機に欧米美術館の制度そのものへ叛旗を翻す。
70’s以降のドラッグ/ポストパンク/LGBT文化を駆け抜けた彼女の足跡と、サックラー家を頂点とする医薬/美術欺瞞構造を両軸として語る手際の良さに見入る。
"All the Beauty and the Bloodshed" https://twitter.com/pherim/status/1773586544571429349
※METエジプト展示室ほかめぐり追記するかもー
『メットガラ』https://twitter.com/pherim/status/851666862895022080
『ナイトミュージアム3 エジプト王の秘密』https://twitter.com/pherim/status/552313846913073152
『シチズンフォー スノーデンの暴露』https://twitter.com/pherim/status/740887101898530816
『オッペンハイマー』
原爆の父オッペンハイマーの生涯。本気のクリストファー・ノーラン演出と、超抑制されたキリアン・マーフィの凄演。
戦後の苦悩までもを質実に再現、Interstellarの多次元宇宙を理論物理学者の脳内へ爆縮させる映像濃度に戦慄する。出演陣豪華鮮烈。全く原爆肯定の話ではないよ。
"Oppenheimer" https://twitter.com/pherim/status/1703643112411893934
『インターステラー』https://twitter.com/pherim/status/1309486761232326659
『ダンケルク』https://twitter.com/pherim/status/1622193913330274305
ゲイリー・オールドマンがトルーマン大統領、エミリー・ブラントが妻、フローレンス・ピューが愛人共産党員を演じるノーラン“Oppenheimer”時空では、ケネス・ブラマーやケイシー・アフレック級が雨後の筍のように十人単位で現れ続けるテレンス・マリック現象も楽しめました。
『ソング・トゥ・ソング』https://twitter.com/pherim/status/933164612849057792
『聖杯たちの騎士』https://twitter.com/pherim/status/809972238262947841
“Oppenheimer”を実際観て、日本未公開が続く理由に被爆国ゆえの空気とキノコ雲への忌避が働くことも充分察せられた。
けれどキリアン・マーフィの黙考顔と戦後描写の醸す反核姿勢は明確で、視覚的衝撃は注意喚起で躱せるし、日本の配給会社もこの時代にこの鋭利な反戦傑作をぜひ。
『沖縄の民』https://twitter.com/pherim/status/1534368676769845249
『ドライブ・マイ・カー』と原爆 https://twitter.com/pherim/status/1417122283928264705
“Oppenheimer”では、アインシュタインとオッペンハイマーの水辺での対話が度々リフレインする。
この人類の至宝博士に扮する“戦場のメリークリスマス”以来の名優Tom Contiの眼差しが、くり返されるごと深まる演出はインセプション味にも溢れ、ノーラン節みなぎる一作でした。
『インセプション』https://twitter.com/pherim/status/1306813109789626368
■3月30日公開作
『成功したオタク』
推していたK-POPスターが、性加害で逮捕された。
アイドル本人から認知されトップオタとなっていた監督が、推し活女性らの“その後”に取材する変わり種ドキュメンタリー。目が醒めたと語り、あるいはなお寄り添おうとするファン達の逡巡を、深堀るより共感的に撮る姿勢が趣深い。
"" https://twitter.com/pherim/status/1777647613745025153
『ファン・ガール』https://twitter.com/pherim/status/1345224585017397254
『愛してる!』https://twitter.com/pherim/status/1579727098302042112
■4月5日公開作
『インフィニティ・プール』
観光客が特権もつリゾート島で、画期的な人体クローン技術により死刑を弄ぶ遊びが始まる。
ポゼッサーに続き炸裂するブランドン・クローネンバーグの倒錯世界。マローボーン家の掟から毎作存在感増すミア・ゴスのファムファタル演技に見入る。
"Infinity Pool" https://twitter.com/pherim/status/1775502649032675482
『ポゼッサー』https://twitter.com/pherim/status/1499577319446355970
『Pearl パール』https://twitter.com/pherim/status/1673672467640987651
『X エックス』https://twitter.com/pherim/status/1542490208922308613
『マローボーン家の掟』https://twitter.com/pherim/status/1113289143084130304
『ブルックリンでオペラを』“She Came to Me”
小人症のイケ親父ピーター・ディンクレイジ演じるスランプ中のオペラ作曲家が、タグボートの女船長と勢いでいたしたのがバレ、さあ大変。
NYの都会生活を体現する精神科医&妻役アン・ハサウェイと、下町気風な船長役マリサ・トメイとの対照が楽しい。
"She Came to Me" https://twitter.com/pherim/status/1776078013400256569
『パーフェクト・ケア』https://twitter.com/pherim/status/1466048601579089921
『シンクロナイズドモンスター』https://twitter.com/pherim/status/924824161746280448
『毒娘』
怪異化した少女をめぐる一戸建てホラー物。
魂の傷と手芸がハサミで結びつく設えや、理想の家族像を追う父親が抱える欲望のグロテスク表現など見入る一方、観念先行の演出が生む冗長さは惜しい。
耐えている抑圧に無自覚な母役/佐津川愛美が、控えめながらズシンと来てもっと観たい。
"" https://twitter.com/pherim/status/1777293404323627141
『呪怨:呪いの家』https://twitter.com/pherim/status/1282510076192755713
『リトル・エッラ』
大好きなおじさんトミーの恋人が休暇に来ちゃって、エッラの嫉妬心が燃えあがる。
愛する人の幸せと自らの望みとがぶつかる苦渋。傑作ロスバンドのクリスティアン・ロー監督作で、LGBTQ表象がごく自然に映り込む北欧社会の穏やかな懐深さに心和む。
"Lill-Zlatan och morbror Raring/Mini-Zlatan and Uncle Darling" https://twitter.com/pherim/status/1775727734507065773
『ロスバンド』https://twitter.com/pherim/status/1491383140489003009
『ロッタちゃん はじめてのおつかい』2Kリマスター版 https://twitter.com/pherim/status/1762669918900920359
『リンドグレーン』https://twitter.com/pherim/status/1197348766040252418
■日本公開中作品
『ヴェルクマイスター・ハーモニー』4Kレストア版
動乱の予兆漂う町の広場で、息を潜める鯨の巨軀。
寡黙に歩む群衆の弩迫力。立ち尽くす男らの相貌を舐め続けるカメラの異様。低空から男を睥睨するヘリコプターの不気味、耳を圧する羽音の轟き。タル・ベーラが世界の底を割る、この両眼が目撃する。
"Werckmeister Harmonies" https://twitter.com/pherim/status/1774347146797687022
『サタンタンゴ』https://twitter.com/pherim/status/1174162136920023042
『ダムネーション 天罰』“Kárhozat”1988 https://twitter.com/pherim/status/1485812854930685953
『ファミリー・ネスト』“Családi tűzfészek”1977 https://twitter.com/pherim/status/1487415429932797957
■国内過去公開作(含映画祭上映作)
『BAD LANDS バッド・ランズ』
詐欺組織の現場隊長演じる安藤サクラがハンパない。
ヤクザ/警察とも台詞にキレがあり、賭場や大阪・西成の隠れ家など魅せ場を心得た舞台設定の連続で飽きさせない、『日本のいちばん長い日』の原田眞人監督作。山田涼介好演、生瀬勝久や宇崎竜童のガチ熱演シビれる。
"" https://twitter.com/pherim/status/1748712126581993890
『万引き家族』https://twitter.com/pherim/status/1022281342753468417
『ゴジラ-1.0』https://twitter.com/pherim/status/1719688998392865224
『SISU/シス 不死身の男』
老兵がワンコを連れ、襲い来る戦車隊と対峙する。
掘り当てた金塊を懐に忍ばせた老人が、実は伝説のツワモノでしたという構図自体が、ソ連とナチスに焦土化された小国の願望を具現化する。その場にある物で次々殺す翁の奮闘がひたすら面白い。
"Sisu" https://twitter.com/pherim/status/1774644933137485857
『ナチス・バスターズ』https://twitter.com/pherim/status/1465318409076232204
『女狙撃兵マリュートカ』https://twitter.com/pherim/status/1538716148472365058
『エア』“Воздух” https://twitter.com/pherim/status/1717888447938171050
『戦争と女の顔』https://twitter.com/pherim/status/1547563782066487296
『戦争のはらわた』https://twitter.com/pherim/status/899111812561371136
余談。いろいろひと段落。さて。
おしまい。
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