今回は、第36回東京国際映画祭(2023年10月23日~11月1日開催)ワールド・フォーカス部門とNippon Cinema Now部門上映作から12作品を扱います。(含短編1作/再掲2作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第321弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■ワールドフォーカス部門
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
『ミュージック』“Musik”
アンゲラ・シャーネレク初見の充実。
オイディプス王を換骨奪胎する本作は、時間/空間軸もズレゆき、既存の映画文法ばかりか物語構造にさえ依りかからない。そこで模索される映像表現の閾値は“音楽”の抽象性にも近い。
“イサドラの子どもたち”のアガト・ボニゼール/Agathe Bonitzer出演。
"Musik/Music"
『イサドラの子どもたち』https://x.com/pherim/status/1308730321358057472
『湖の紛れもなき事実』
火山灰地の湖で起きた15年前の未解決事件追う刑事の執念。
前作『波が去るとき』と同じパパウラン警部補を主人公に、ドゥテルテ政権下の圧政へ全身で抗うラヴ・ディアス215分作(短め)。表現の一様でなさ、観られる機会の有り難さなど想う恒例の。
"Essential Truths of the Lake" https://x.com/pherim/status/1827266250130813200
『波が去るとき』https://x.com/pherim/status/1599968751872798721
『立ち去った女』https://x.com/pherim/status/917032622332698626
『見えるもの、見えざるもの』https://x.com/pherim/status/1235760025169047552
『愛は銃』“爱是一把枪”
刑務所帰りの青年が、マジメに更生を図るも社会が許容しない。
ロング・デイズ・ジャーニー主演リー・ホンチーの監督初長編。雰囲気とノリだけで魅せようとする、非監督業界人が初めて映画を撮る際のありがちムーヴながら、限界突破感で最後まで引っ張る胆力や良し。
"爱是一把枪/Love Is a Gun" https://x.com/pherim/status/1830599513293431179
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』https://x.com/pherim/status/1233025952046665728
拙稿「地球最後の晩餐 『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』&『凱里ブルース』 ビー・ガン監督インタビュー」https://www.kirishin.com/2020/02/29/41571/
『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』
ヴィム・ヴェンダースが、巨匠アンゼルム・キーファーの製作過程を3Dで撮る。その平面作の凹凸がもたらす映像快楽の衝撃。
ピナ・バウシュに続く戦後ドイツ芸術の3D固定を、『誰のせいでもない』他での手法的冒険に並行させる、Wendersの矍鑠たる膂力にめまいする。
"Anselm" https://x.com/pherim/status/1824578719928947118
拙稿「【映画評】 ヴェンダースの冒険 『PERFECT DAYS』『アンゼルム』 第36回東京国際映画祭」
https://www.kirishin.com/2023/12/22/63913/
TIFF初見時ツイ https://x.com/pherim/status/1719565062544011321
『誰のせいでもない』3D https://x.com/pherim/status/796638438246219776
『アランフエスの麗しき日々』https://x.com/pherim/status/945099886105468928
“PERFECT DAYS” https://x.com/pherim/status/1716408130580648080
“Somebody Comes into the Light” https://x.com/pherim/status/1739139806545002866
『世界の涯ての鼓動』https://x.com/pherim/status/1154990468775567361
拙稿「【映画評】 『世界の涯ての鼓動』」https://www.kirishin.com/2019/07/30/27641/
“Somebody Comes into th Light”
ヴィム・ヴェンダースが“PERFECT DAYS”クランクアップ当日、踊る田中泯を撮った短編。音楽: 三宅純
弦のようにしなる躯体へ木漏れ日が注ぐ白黒映像は瑞々しく、PERFECT DAYS本編(役所広司だけが田中と目を合わせるんだよね)にも一部使用。
[動画見当たらず]
"Somebody Comes into th Light" https://twitter.com/pherim/status/1739139806545002866
“PERFECT DAYS” https://twitter.com/pherim/status/1716408130580648080
カンヌ会場での泯踊: https://twitter.com/pherim/status/1739139806545002866
拙稿「【映画評】ヴェンダースの冒険」 https://www.kirishin.com/2023/12/22/63913/
『夏の終わりに願うこと』“TÓTEM”
少女は感じとっている。誰も教えてくれないけれど、父の誕生日は今日が最後かもしれないと。
みなが望むから、気づいていないフリをする。妹の無邪気な明るさ、つらさを隠す母。繊細な連なりの果て突如訪れる鋭き不穏。リラ・アヴィレス第2作、この監督は要注目。
"TÓTEM" https://x.com/pherim/status/1821469970767008119
『箱』 “La Caja” https://x.com/pherim/status/1508640528694341633
『息子の面影』“Sin Señas Particulares” https://x.com/pherim/status/1453725858095534098
『メイ』“梅的白天和黑夜”
独居老人72歳メイの日常。
キャリーバッグを引きながら上海市中をめぐる彼女の日々は、孤独にも貧しくも映る一方でパワフルで忙しい。マッチングアプリみたいのも積極的なのが凄い。
上海の派手な急発展とも無縁の淡々と流れる時間を質実に撮る羅冬/ルオ・ドン監督作。
"梅的白天和黑夜" "May" https://x.com/pherim/status/1825266907949453452
上海裏町探訪ツイ https://x.com/pherim/status/1110672352499523584
『パッセージ』“Passages”
自由にこじれすぎる三角関係。
笑えるフランツ・ロゴフスキのクズ演技を、ベン・ウィショーらが引き立てるアイラ・サックス監督作。作家性を感じ『ポルトガル、夏の終わり』より秀逸。
“センスの良い黒人ゲイ青年”演じるErwan Kepoa Fale再び。
"Passages" https://x.com/pherim/status/1828990839969951828
『ポルトガル、夏の終わり』https://x.com/pherim/status/1294104183960793091
『Winter boy』“Le lycéen” https://x.com/pherim/status/1734131204914569435
『ひとつの愛』“Un Amor”
イザベル・コイシェ新作。スペインの山里へ越して来た女は、粗暴な男達に蔑まれつつ欲望され。
孤立する女が安住を模索するコイシェ十八番の流れに加え、より大文字の過去を忍ばせる“あなたになら言える秘密のこと”他にも通じた底流の存在を感覚。
"Un Amor" https://x.com/pherim/status/1828269795147686059
『マイ・ブックショップ』https://x.com/pherim/status/1101795487441551361
『あなたになら言える秘密のこと』https://x.com/pherim/status/1665307545911664640
『ザ・ビースト』“As bestas” https://x.com/pherim/status/1590317651578228738
『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』
半世紀ミシュラン三つ星を保つレ・トロワグロに流れる時間。シェフの誇り、職人の意地。
フレデリック・ワイズマンが充たす底抜けの欲望。個別実人生を伴う他者感覚のトレースを可能とするこの4時間は、驚異的に短いのだ。堪能。
"Menus Plaisirs - Les Troisgros" https://x.com/pherim/status/1824399947476898262
『エッセネ派』"Essene" https://x.com/pherim/status/1056378071706611712
『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』https://x.com/pherim/status/1051659069134532608
『ボストン市庁舎』https://x.com/pherim/status/1447765133753683972
『築地ワンダーランド』https://x.com/pherim/status/781848912718016513
『ノーマ、世界を変える料理』https://x.com/pherim/status/723701730597167104
『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』https://x.com/pherim/status/804830163384954880
『女性たちの中で』“Las buenas compañías”
中絶が違法だった1977年、バスク地方に暮らす少女が味わう家族の軋轢、社会の矛盾。
仕事場の富裕宅、闇堕胎で感染症に罹る親戚など様々な社会層/立場が瑞々しく描かれ、殊に抗議運動や収監中の穏和な父など、フランコ政権崩壊直後の動乱描写が印象的。
"Las buenas compañías/In the Company of Women" https://x.com/pherim/status/1831165661781102720
『すべての月の夜』 “Ilargi Guztiak” https://x.com/pherim/status/1501031246322802690
『おもかげ』“Madre” https://x.com/pherim/status/1291939654501986306
■Nippon Cinema Now部門
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
『彼方のうた』
穏やかな出逢い、偶然のすれ違い。
漂う不思議な空気と、不穏の気配。
映画でこその密やかな描写を磨く杉田協士監督作。小川あんのジト見に『天国はまだ遠い』が想起されると、濱口竜介『偶然と想像』の音が流れてアッてなる。希薄さの濃さ。好きだこれ。
"Following the Sound" https://twitter.com/pherim/status/1742439744360030208
『天国はまだ遠い』https://twitter.com/pherim/status/872291764068941824
『偶然と想像』https://twitter.com/pherim/status/1499706415367143426
余談。『彼方のうた』は劇場公開済み。『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』『夏の終わりに願うこと』は公開中。『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』が8/23公開。こうみると、一般公開してお客が入りそうな作品は概ねされており配給会社もちゃんと目端利かせてますねと。
『パッセージ』だけ、ミニシアター系でウケるのは間違いなさそうだけど公開予定ないっぽい。上映権お高めの仏映画でメジャー俳優揃ってるからペイしないのか、いつものLGBTQ回避モードなのかわからないけど。
おしまい。
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