pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2025年
03月01日
13:07

ふぃるめも352 イスラーム映画祭10上映全作

 
 

 今回は、イスラーム映画祭10上映全12作品を扱います。(含再掲1作)

  イスラーム映画祭9主宰/藤本高之さんにインタビューしました。↓
  
  「イスラーム映画祭10、その大いなる達成」
   https://www.kirishin.com/2025/02/17/71516/


 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第352弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■イスラーム映画祭10
 http://islamicff.com/index.html
 
『モーグル モーグリ』Mogul Mowgli
俳優/ラッパーのリズ・アーメッドが主演&脚本参加、病とルーツの狭間で軋む魂を叩きつける。
パキスタン系移民の家庭に育ち、テロリストと疑われる役で脚光を浴びハリウッドスター入りしたリズだけが連打できる言葉の生々しさ、リズムが響かせる痛みに胸貫かれる。

"Mogul Mowgli"

『ソニータ』https://x.com/pherim/status/919715708321243136




『さよなら、ジュリア』Wadaean Julia
圧倒されたスーダン傑作。
北部の富裕なアラブ系ムスリム女性と、南部ルーツの貧しいアフリカ系クリスチャン女性の交錯を描き、宥和と衝突の果てに息子の採る選択が、撮影3ヶ月後に起こる現紛争を予言し空恐ろしい。ガチで巧緻の塊。

"Goodbye Julia" "Wadaean Julia" https://x.com/pherim/status/1895322532628316280

↑製作のAmjad Abu Al.ala監督イスラーム映画祭6上映作『汝は二十歳で死ぬ』https://x.com/pherim/status/1383772514757713922

『ようこそ、革命シネマへ』https://x.com/pherim/status/1245813308101259269
『南スーダンの闇と光』“Hearts and Bones” 『南スーダンの闇と光』“Hearts and Bones” https://x.com/pherim/status/1334850440064688128
『ダム』https://x.com/pherim/status/1645986798831808514
『ナイジェリアのスーダンさん』https://x.com/pherim/status/1108316773860835340
『グッド・ライ いちばん優しい嘘』https://x.com/pherim/status/554092390399479810




『怒れるシーラ』Sira
一族惨殺と暴行による妊娠を生きのびる。
婚約者との未来を夢みる遊牧民女性が、武装勢力に攫われ犯され荒野で捨てられ、生存への格闘が始まる。
サヘル地域の現実を酷薄に描く迫真作。MADMAXやDUNEを超えるリアルが今この地上にあるということ。

"Sira" https://x.com/pherim/status/1893451215201009672

『バハールの涙』https://x.com/pherim/status/1084289785571639296
拙稿「太陽の少女たち」https://www.kirishin.com/2019/01/18/22262/

イスラーム映画祭10上映全作スレッド https://x.com/pherim/status/1892125225677889749





『母たちの村』Moolaade
陰部切除を恐れる少女達を保護し、村での孤立を闘い抜く女。
サハラ他に残る女子割礼の廃絶を願う“アフリカ映画の父”ウスマン・センベーヌ監督作。泥建築が麗しく、堆積した父権を象徴するよう映り込むサグラダファミリア級の巨大蟻塚が地味に利く。

"Moolaade" https://x.com/pherim/status/1893813370052084032

超傑作『私は今も、密かに煙草を吸っている』https://x.com/pherim/status/1769203769450099176




『チュニスの切り裂き男 (シャッラート)』Le Challat de Tunis 2014
2003年に次々と女性へ切りつけたバイク男の未解決事件をめぐるモキュメンタリー。
皮膚を売った男/マリアムと犬どものカウサルビン・ハニーヤ監督♀作で、質実な社会派テイストと奇抜な発想の同居が持ち味と納得される。

"Le Challat de Tunis" "The Challat of Tunis" https://x.com/pherim/status/1896754217244938454

『マリアムと犬ども』https://x.com/pherim/status/1627109755339808768
『皮膚を売った男』https://x.com/pherim/status/1459369705655848962
『Four Daughters フォー・ドーターズ』





『イチジクの樹の下で』
イチジクの実を摘む老若男女の一日。
ある姉妹と訳あり青年を軸に、ほぼ全編が収穫作業を映し続ける。適度にサボって駄弁る少女らが夕暮れに化粧を始め、宴かと思ったらトラック荷台で歌いながら帰るだけ、それが得も言われない感動を誘って驚く。

"Taht alshajra" "Under the Fig Trees" https://x.com/pherim/status/1892863938477322429

『イチジクの樹の下で』はドキュメンタリー出身のErige Sehiri監督作。
収穫の一日が描かれ、何気ない会話や実際ありそうな場面の集積からなるのだけど、ふしぎな充溢感に全編が満たされている。
本作の描写が端正な“双子座殺人事件”、読ませる。→https://yako.hatenadiary.jp/entry/2025/02/21/232615

『ラグレットの夏』https://x.com/pherim/status/1297540559884623877
『ファイヤ―・オブ・ウィンド』https://x.com/pherim/status/1859502609813676333





『ラナー、占領下の花嫁』2002
分断政策の進むエルサレムで、午後4時までの結婚か国外移住を父から迫られる娘の半日。
パラダイス・ナウ/オマールの壁のハーニー・アブー=アスアド監督初期作で、分離壁直前のパレスチナ生活模様が活写され、終盤の路上群舞が烈しく沁みる。

"Al-Qods fee yom akhar" "Rana's Wedding"

2005『パラダイス・ナウ』https://x.com/pherim/status/1205683681962024961
2013『オマールの壁』https://x.com/pherim/status/724787832963756033
2015『歌声にのった少年』https://x.com/pherim/status/779249049291493376





『ギャベ』Gabbeh
イラン社会の閉塞に鮮やかな色彩で抗う。
ギャッベ織り絨毯で知られる遊牧民の女が幸福を願う姿を描き、母国上映禁止となったモフセン・マフマルバフ初期名作。
“パンと植木鉢”制作時の騒動を映画化した“サラーム・シネマ”出演者を主役とする機敏。

"Gabbeh" https://x.com/pherim/status/1893114127356436921

拙稿「モフセン・マフマルバフ監督インタビュー イラン映画の詩性と、亡命後の映画製作をめぐって」https://www.kirishin.com/2025/01/09/71047/
『パンと植木鉢』“A Moment of Innocence”1996 https://x.com/pherim/status/1622796987174371328
『サラーム・シネマ』1995 https://x.com/pherim/status/1630179916011683842


※イスラーム映画祭10リマスター上映をめぐり追記予定




『シリンの結婚』 1976
僻村での望まない結婚から逃れ、憧れの彼が働く西ドイツへ。
トルコ西独間の雇用協定に乗りケルンへ辿り着く女性の転落模様が、悲しすぎて眩暈する。過酷な生活労働と蔑視の下でも充実した時間や手応えを得る描写が巧いだけに一層悲しいこれは名作。

"Shirins Hochzeit" "Shirin's Wedding"

拙稿「女は二度死ぬ、二度生まれる。」https://x.com/pherim/status/1642645806812663810
『女は二度決断する』https://x.com/pherim/status/989812428983562241
『痕跡 NSUナチ・アンダーグラウンドの犠牲者』https://x.com/pherim/status/1389236695275499528
『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』https://x.com/pherim/status/1785279912292835820
『私の舌は回らない』https://x.com/pherim/status/980722822170361856
『おじいちゃんの里帰り』https://x.com/pherim/status/482704291283496960
“Auf Einmal” (All of a Sudden) https://x.com/pherim/status/1252794143153156104
『太陽に恋して』『そして、私たちは愛に帰る』https://x.com/pherim/status/672988922499108864





『ハリーマの道』Halimin put 2012
なんだこれ、って脚本の巧緻にたまげる。
ボスニア寒村で暮らすムスリム女性が、紛争時セルビア軍に連行された夫と息子を捜す中で、錯綜した過去が呼び起こされる。
一辺倒な登場人物は皆無で、各演者の風格と変化に富む田園景も見処。

"Halimin put" "Halima's Path"

『泣けない男たち』https://x.com/pherim/status/1506875812259139588
『アイダよ、何処へ?』https://x.com/pherim/status/1435101486556409856





『カシミール冬の裏側』
ショール織りの妻と、反政府活動の咎で拷問を受けた夫の冬。
ヒンディー映画に描かれる景勝地“カシミール”とは全く異なるムスリム住民のリアルを、現地出身監督が描く迫真作。織物が編み上がる遅さと鮮やかさが、あまりにも多くを象徴し慄える。

"Maagh/The Winter Within"

『ハーミド~カシミールの少年』“Hamid” https://x.com/pherim/status/1808327025159295166
ジャンム・カシミール州旅行連ツイ(窓編)https://x.com/pherim/status/1038997147398692869





『神に誓って』
父の策謀で英国からパキスタンへ誘拐、僻村で強制結婚させられる従妹マリアム。
9.11後の米国でCIAの拷問受ける音楽家兄、狂信的宗教者に洗脳され音楽を捨てた弟。
禁忌めぐり“南アジアのカラマーゾフ”ばりに熾烈な宗教問答交わされ、極上の混淆音楽が響き渡るキレッキレの名作。

"In The Name of God" https://twitter.com/pherim/status/1307240572558532608

『神に誓って』は2020年イスラーム映画祭5以来の再鑑賞。
再鑑賞ツイート追記予定。



 

 余談。イスラーム映画祭10上映全作の個人お好み順位は下記の通り。名作ギャベが下位グループへ回る豊穣ぶり。

 さよなら、ジュリア
 シリンの結婚
 怒れるシーラ
 ハリーマの道
 神に誓って
 カシミール冬の裏側

 イチジクの樹の下で
 ギャベ
 モーグル モーグリ
 ラナー、占領下の花嫁
 母たちの村
 チュニスの切り裂き男





おしまい。
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