pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2017年
10月28日
00:05

ふぃるめも76 シンクロナイズド・ダンケルク

 


 今回は、10月末~11月初旬の日本公開作を中心に。

※《ふぃるめも》記事のみ[Web全体に公開]にしています。コメント書き込みの際はご注意くださいませ~。(“いいね”は外から見えません)

 タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第76弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)




■10月28日公開作

『リュミエール!』

こんなにも感動するとは思わなかった。1895年からの11年間リュミエール兄弟が撮りためた50秒の短篇1422本から108本を選び4Kデジタルで。古くて新しいこの試みに言葉を失う。それらは余りにも生き生きとしてコミカルで、美しく機知に富み全編が躍動していたから。





『はじまりの街』
父の暴虐から逃れトリノで暮らす母と子の再生への道のり。各々に試練の続く日々が、季節の彩り豊かに映し出される。息子の娼婦への恋心が描く軌道の切なさ。しかし全編を貫くのは周囲の人間に暖かく支えられた、人生への大らかな肯定。これをやらせるとイタリア映画はいつも無敵だ。





『星空』
主人公少女と転校生少年の抱える心の欠落が、パズルの欠けたピースに象徴される。台湾の国民的絵本作家ジミー・リャオの同名絵本を映画化。旅へ出た二人を応援するように、折り紙の動物たちが跳ね回る場面の楽しさ。喪の営みを見つめる秀作『百日告別』のトム・リン監督による冒険成長譚。

映画『星空』、台湾公開時の原題は“星空 Starry Starry Night”。ギタリストで作家のシー・チンハン(石錦航)出演など、トム・リン(林書宇)監督最近作『百日告別』との連環を読みとる楽しみも。http://twitter.com/pherim/status/838614561301262336




『ポリーナ、私を踊る』
舞踊映画の傑作。伝統的バレエの核からコンテンポラリーダンスの最前衛へ躍り出る一人の少女がたどる無二の軌跡。ロシアバレエの抱える屈託に旧共産圏文化の今日宿す陰翳が濃縮反映され、主人公の内発衝動から一切離れずコンテンポラリーの系統発生模様を映す展開は言絶の域。





■11月3日

『ゴッホ 最期の手紙』

120人超の画家を雇って6万枚超の油彩画と水彩画を描かせた前代未聞のゴッホ調アニメーション。狂気を感じる試みそのものがゴッホにふさわしくも感じ、Adobe風デジタル変換では起こり得ない手仕事ゆえのブレや偏りが確かに凄味を感じる。登場する絵人物のモデル達が実は名優揃いなのも狂っており良い。





『ノクターナル・アニマルズ』
トム・フォードのシャープで冷たい視覚魔術。残虐スリラーな劇中劇の進行が、アート業界で成功した主人公の絢爛たる日常を侵食する。主演ジェイク・ギレンホール&エイミー・アダムス安定、若手アーロン・テイラー=ジョンソン文字通りのキレッキレ演技が光る。開幕悪趣味の寡黙な威力。


 Tweeting Nocturnal Animals: https://twitter.com/pherim/status/803398797090922496

 ↑『ノクターナル・アニマルズ』、デミアン・ハースト、ジェフ・クーンズ、アンディ・ウォーホルなど著名な現代美術作品が続出、しかも大半が本物で、映像の鋭い輪郭を支えてます。バンコクのがら空き映画館で夜な夜な観て打ち震えたの、もう一年近く前なのね。日本公開は11月3日。




『シンクロナイズドモンスター』
アン・ハサウェイ演じる都落ちヒロインが、地球の裏側に現れる怪獣と共振し。ダメ人間集まる場末酒場がまた良い。前作『ブラック・ハッカー』にも驚かされた監督ナチョ・ビガロンド、やることがとても新しくとても変。けれどわかる。このわかる感じがすっごい楽しい謎快作。今後も目が離せそうにない。





■日本公開未定作品

"Geostorm"

近未来の地球を覆う気象管理衛星の網が暴走、ドバイは大津波に沈み、香港でマグマが噴き、東京は巨雹に潰され、モスクワは熱線で灼かれてもう大変、というディザスター物。《地球を救うヒーローを救う女》という構図が繰り返される密やかな今日性も。バンコクIMAXにて鑑賞。





■日本公開中/公開済作品

『哭声/コクソン』

國村隼の怪演でも話題を呼んだ本作、度々の聖書引用に外来の悪魔と土地神が入り乱れ、善悪聖邪定まらない展開が終始熱いナ・ホンジン監督が存分に本領発揮。韓国地方農村の疲弊、限界集落化を背景とする『殺人の追憶』以降の「いい知れない不気味さを宿す僻地」を巡る映像表現の秀逸。





『ダンケルク』
五感の前景化により映画体験の更新を試みる点で『ハート・ロッカー』以降の体感的戦争物の極北をゆく本作、クリストファー・ノーランが撮ったことで空中戦も船の沈没場面も次元が一つ付加されたような眩暈を楽しめた。物語への回収不能の残余こそに表現の本質が宿るとでも言うような。

『ダンケルク』は日本とタイのIMAXにて鑑賞。二度目にはふと、『めぐりあう日』が映しだすダンケルクの町や浜辺が想起された。騒乱の戦争劇であれ家族の情念劇であれ、人々の動きの背景に映り込む風や波の描くもの、フレームの外から流れ込む音や光の語るものに、より惹かれるということはある。

  『めぐりあう日』tweet:https://twitter.com/pherim/status/759041474428186624




 余談。

 ただいま家呑み小休止中。終電で帰るひとが帰り、これから来るひとは来る途上です。タイ渡航準備もまだ始めておらず、きのうは5時起きだったので体力的にもわけわかめですが、ていうか人生もうそんなものですね。

 今回の日本滞在は諸々あってタイ移住後最長となったのですが、思い返してみるとこの間にも、時の間メンバーでは海外勢もとより北海道から北陸、関西、九州のかたとお会いしまたお世話になりました。これはこれでなんというか長大な一編の映画を観ているようでもあり、というのは強引すぎるまとめかもしれませんけれど。
 にしても76弾か。いったん続きだすと続くものですね。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh

コメント

2017年
10月29日
16:57

※11/11公開の『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』を次回へまわしました。

『リュミエール!』は、劇場へ行って観るならせっかくですから大画面&最前席をおすすめします~(*´ω`*)

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