pherim㌠

<< 2017年11月 >>

1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930

pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2017年
11月10日
10:16

ふぃるめも77 悪魔祓いと魔女の愛

  

 今回は11月中旬の日本公開作と、日本公開未定作を中心に。


 タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第7弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■11月11日

『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』

逃げる政治家詩人と追う警察詩人、極寒チリ最南部へ。騒擾と渾沌の南米政治、幻惑と眩暈の南米文学が混淆する虚実定かならぬ追跡劇に、口ずさまれる詩の数々が並走する。幕切れも見事。清濁併せ呑むルイス・ニェッコ名演、ガエル・ガルシア・ベルナル安定の憂愁顔。





■11月18日

『悪魔祓い、聖なる儀式』

カトリック教会でのエクソシスト需要増加に迫るドキュメンタリー。とりわけシチリア島に実在する現役エクソシスト・カタルド神父への密着場面が良い。なるほどこのコミュニティでこの神父の振る舞いは活きるよなと深く納得されるし、地中海にもユタやイタコはいるんだなと。

センセーショナルな演出を排した質実作だが、予告編冒頭の絶叫でつい笑ってしまうひとには笑えるシーンが多い作品。




■11月23日

『gifted ギフテッド』

ダメ親父と隻眼猫と隣のおばちゃんこそがファミリーな数学天才少女と、彼女を巡る大人達の綱引き。エリート教育・飛び級制度の短所を優しく包摂的に描く珍しさも『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督ならば納得。少女役マッケンナ・グレイスの演技力が驚異的で将来楽しみ。

『gifted ギフテッド』は、子役&猫カワユス+ハートフル良脚本のロングラン確実構成。あとマーク・ウェブは『アメイジング・スパイダーマン』1、2の監督。これ『アイアンマン』1、2で疲れたジョン・ファヴローが低予算傑作『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』撮ったのと同じ流れで胸に沁みる。




■日本公開中作品

『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』

スティーブン・キング持ち前のホラー展開炸裂、スタンド・バイ・ミー風80's少年少女冒険譚のテイストが加わり、同題過去作から大きく飛躍を遂げた良作ダークファンタジー。血を暗喩する風船の赤の抽象度を上げたのも感心。なお続編制作決定済み。


  "IT"を観たバンコクの映画館で本当に起きた怖い話:
  https://twitter.com/pherim/status/925903065131057152





『メアリと魔女の花』
風になびく髪やうねる衣紋、そよぐ枝葉や揺らめく焔、ざわめく箒の先など空気を介するムーヴメントの描画が突出して印象的。ただその他の面では映像的にも軒並み点睛を欠き、物語は極めて弱い。ジブリ新作を楽しみに待てた時代の終わり、それは新たな始まりでもあるんだなと。





■日本公開未定作品

『マザー!』

ダーレン・アロノフスキー新作『マザー!』、客十人いなかったけど滅茶良くて笑った。一件の家を舞台とするほぼ室内劇。『ノア 約束の舟』で広げきった風呂敷を、『π』のミニマルな構築性へ閉じ込めた、アロノフスキー現時点での集大成とも言える珠玉作。バルデム好き必見。日本公開2018年1月。

とつぶやいた翌日、映画批評家大寺眞輔さんのツイートで日本公開中止を知る。https://twitter.com/one_quus_one/status/92555739092516454...
ガーンでございます。公開中止の理由が「米スタジオのパラマウント・ピクチャーズの意向」ってどうなんだろう。主演俳優だけでも一定の客入りそうでかつ結構いい映画でも、日本全国公開に乗らないことって時々ありますね。宗教や性や暴力が絡むと特に。

ダーレン・アロノフスキー『マザー!』、日本公開近くにまた呟こうと確保しておいた画像をレクイエム込めここで放出。ハビエル・バルデムの演技幅ほんとに凄かったよ(みてこのイキリ顔 ※冒頭画像↑2枚目)。エド・ハリス&ミシェル・ファイファーのゲス夫婦(でもアダム&イブ)笑えたし。公開しようずパラマウント殿。




"Stronger"
ジェイク・ギレンホール主演、ボストン・マラソン爆破事件をめぐる実話ベースの被害者青年復活劇。両足切断のどん底に突き落とされた冴えない男が、家族恋人との葛藤やメディアからの英雄視に耐えつつ再生を遂げていく。《アメリカまだまだイケる》物に特有の熱気充満する一作。

"Stronger"、当然ながら序盤は同じボストンマラソン爆弾テロを描く『パトリオット・デイ』と同じ画が幾度も登場する。本作はより感情描写に焦点化した感。日本公開未定ながら、DVD化前の2018年中に小規模ロードショーされると予想。

  『パトリオット・デイ』https://twitter.com/pherim/status/872699141712781312




"Breathe"
幸福の絶頂期にポリオ由来の全身麻痺となった青年と、彼を支える妻を巡る実話ベース立志伝。呼吸装置の故障後2分で死ぬ状況下で夫を退院させた妻の英断と格闘が社会を変えていく。『沈黙 -サイレンス-』『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールド主演新作、首上だけの難役を熱演。

"Breathe"は日本公開未定、"Stronger"(上記)との対照を諸々思うなど。例えば両作とも実話ベースで、身体障害者となった夫を妻が支える。それも日本の「糟糠の妻」的健気さでなく大胆果敢に(強いヒロイン潮流)。個人主義的弱者切り捨て離婚社会へ異議を申し立てる「いい話」として。




“The Last Face”
圧倒のショーン・ペン監督新作。紛争地難民キャンプでの抜き差しならない選択の連続、から逆照射される国際都市安寧の虚構。密林逃避行の迫真。ハビエル・バルデム&シャーリーズ・セロンの他、終始寡黙なジャン・レノが地味に光る。『ナイロビの蜂』の系譜継ぐ良作。

ハビエル・バルデムって日本人ファンも多いはずですが、彼主演のショーン・ペン監督作"The Last Face"も日本公開の話を全然聞かず。こちらもタイで観て個人的には衝撃的に良かったのだけど、同時にこのガチリベラル路線は今日本公開に乗りにくいかとも。https://twitter.com/pherim/status/925572934663421957




"The Osiris Child: Science Fiction Volume One"
豪州産SF大作。マッド・マックス、スター・ウォーズ、エイリアン、インターステラー、オブリビオンをB級ベースでごった煮して、仕上げに第9地区エリジウムをふりかけました感。決して悪くはなく、レトロSFファンにはむしろオススメ。とはいえ日本公開未定作。






 余談。

 最後の『オシリス・チャイルド~』は、小規模の日本公開来るかなぁと思っているうち、観てから半年以上たって噂まるで聞かずなので、公開未定カテゴリーで放出しちゃいます。緑字の『ラストフェイス』もかなり前に観たものです。そういう作品がそこそこ溜まっているので、今後数回かけて消化していく所存です。




おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh

コメント

2017年
11月11日
01:52

1: apriori

昔の映画itですが、じわじわとしたよい怖さだったのにオチで、え?ってなったことがあります
リメイク版はあのオチのままなんでしょうか?

2017年
11月11日
04:08

昔の方はVHSレンタルで観た覚えはあるのですが、オチまで覚えてないですねぇw

とはいえ決めの場面を除けば、全体として結構違うとは思います。というのも、今回の作品は今の流行をベースに『IT』のモチーフを乗せた仕上がりになっているからです。例えば『ストレンジャー・シングス』というNetflix配信中の良ドラマとは、少年少女チームの構成(主人公+紅一点+黒人少年1+メガネ+小太り)が同じなら、子役俳優まで一人共通していたりします。

2017年
11月11日
06:44

3: apriori

オチはここじゃネタバレになるのでいえないんですけど、なんというかなぁ。
子供の頃IT見て、面白かった記憶だけ残ってたんですよ。
で、大学の時に、友達と一緒に見て、あまりにもあまりにもなオチに数時間を返せ、と思ったことがありますw
といっても、当時のSFXのレベルのせいかもしれませんけどね
つうかこれ、マクドナルドから苦情来ないのかなぁ…

2017年
11月11日
13:20

本作に関しては開幕ホラー冒険成長譚エンドな流れに突き進むので、終幕が近づくにつれ予定調和感が増す感じであまりオチは気になりませんでしたね。

個人的な感覚としてマクドナルドの彼については、敢えてジャンク風味を出す路線同様の毒味も売りという自覚がありそうだし、あまり不都合にも思ってなさそうなw

: