pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2017年
11月25日
14:24

ふぃるめも78 正義のかなた

 

 今回は、11月末~12月初めの日本公開作や日本公開未定作、
 東京大学ラテンシネクラブ上映作など12作品を扱います。
 (通常回より2作多いのは『gifted ギフテッド』『希望のかなた』再掲のため)


 タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第78弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■11月23日公開作

『ジャスティスリーグ』

水と会話するアクアマンかこよす。キョドるコミュ障2代目フラッシュのキテレツ戦闘斬新。帰ってきたスーパーマンのパルプンテぶりは『キングスマン2』を迫力で凌ぐが、復活後の彼にとっての善=人類救済となる根拠はさらに薄くなったのではとか。監督ザック・スナイダー堅調。

アクアマン、日本語字幕がどうなってるか知らないけどベンアフと「魚と話せるって?」「いや水と心が通じてる」みたいな会話してた。でも本来魚と話せる設定。禅か。あと彼の登場場面、刺青長髪で同じ役者が演じる『ゲーム・オブ・スローンズ』の暴虐王がそのまま登場したようで別の次元横断感あった。

  一方バンコクでは ……: https://twitter.com/pherim/status/933978236186275840




『gifted ギフテッド』
ダメ親父と隻眼猫と隣のおばちゃんこそがファミリーな数学天才少女と、彼女を巡る大人達の綱引き。エリート教育・飛び級制度の短所を優しく包摂的に描く珍しさも『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督ならば納得。少女役マッケンナ・グレイスの演技力が驚異的で将来楽しみ。

『gifted ギフテッド』は、良物語+天才子役+猫カワユスというロングラン確実な神構成。かつマーク・ウェブは『アメイジング・スパイダーマン』1、2も監督。これ『アイアンマン』1、2で疲れたジョン・ファヴローが低予算傑作『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を撮ったのと同じ流れで胸に沁みる。




■11月25日公開作

『J:ビヨンド・フラメンコ』

イベリア伝統舞踊ホタの精髄。原題"Jota de Saura"が示すごとく監督カルロス・サウラ入魂の映像美。ロマの律動、アラブの旋律にのり、町ごとの微細な差異にまで誇りを込めたアラゴンの民族色綺羅びやかな踊りが溢れ出る。サラ・バラス、カニサレスなど有名どころ揃い踏み。





■12月2日公開作

『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』
1786年『フィガロの結婚』初演時モーツァルトのプラハ滞在を描く。貴族婦人との危うい不倫関係を軸に展開する物語そのものが『フィガロの結婚』に重なる夢幻構成の秀逸。美術衣装冴え渡り満腹感の襲う終盤唐突に現れる、狂気のような創造の素顔に震撼。





『希望のかなた』
地獄の黙示録風に黒塗り顔で現れるシリア人の男。石炭貨物に潜った越境場面に始まる本作は、難民問題に発する欧州の諸問題と正面から向き合いながら当代一流のユーモアを忘れず、笑いのなかに綺麗事では済まされない現代のメランコリックを忍ばせるアキ・カウリスマキさすがの快作。


  主演シェルワン・ハジ(クルド出身)関連tweets:
  https://twitter.com/pherim/status/919138598854713345


  試写メモ32.1: http://tokinoma.pne.jp/diary/2586
  シェルワン・ハジ interviewed by pherim: http://tokinoma.pne.jp/diary/2589





■日本公開中作品

『マイティ・ソー バトルロイヤル』

ヒトモノ問わず空間移動の3D演出が良く、IMAX鑑賞の価値あった。アベンジャーズ中浮きがちなThorでベタに笑わす試み。K・ブランシェットと浅野忠信が殴り合う隔世感。M・ラファロやA・ホプキンス、カンバーバッチにマッド・デイモンまでいて誰も主役でない特盛感。





■ラテンシネクラブ第一回上映会&トーク@東京大学駒場キャンパス
 東京大学教養学部教養学科 地域文化研究分科ラテンアメリカ研究コース主催
 http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/events/events_z0109_0009...

『沈黙は破られた:16人のニッケイたち』
アルゼンチン映画。軍政期の強制失踪事件に巻き込まれた日系人達を巡るドキュメンタリー。犠牲者3万に及ぶとされる事件の全体がタブー視された社会状況下での日系移民、そして沖縄出自という立場ゆえの葛藤と相克。映し出される多義的な「沈黙」の余韻の濃さ。





『誰か家にいますか?』
ブラジル・サンパウロで、格差の拡大に伴い深刻化する託児問題。グローバル化対応策としてのネオリベ政策が、経済都市中流層の相対的没落を呼び育児への負担となって顕現する様に、現代社会の普遍とBRICsの固有性をみる。「貧困化」を子が実感する描写は痛いし説得的だなぁと。

ただこの「貧困化」は第三国出身メイドに支えられた社会構造の瓦解に根ざし、その源は農園主家庭の黒人奴隷にさかのぼる。この意味で「生活のつらさ」描写は本人主観で共感できても、「出稼ぎのため母が子を育てることすら叶わないメイド派遣層の経済上昇」がその一因である点など諸々考えさせられる。

タイでもメイド(アヤ)ならずとも、幼児を地元の両親に託して首都で働く若い母親というのは低賃金労働になればなるほどいまだに一般的だし、その先にはカンボジア・ラオス・ミャンマーといった周辺国を草刈り場とする近未来図も描けるから遠い国の話とは感じないし今後の日本はどちらかなど考える。




『民衆のミス・ベネズエラ』
1944年カラカスで行われたミスコン選挙は、ベネズエラ人が初体験する「普通選挙」となった。ベースボール選手権プロモ企画の人気投票が、時の政治状況と連環し下層出身の活発娘と上流令嬢との一騎打ちへと収斂する展開は飽きさせず、日本の野球文化との相違も興味深い。

以上、《ラテンシネクラブ 第一回上映会&トーク》上映作でした。http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/events/events_z0109_0009...
会場後部ほぼ満席。祝休日の映画企画が団塊↑の客で埋まるのは恒例としても、日本語字幕なしでこの入りは凄いなと。そこかしこで日本人同士がスペイン語で話してたし、外はお天気雨だしの不思議時空でした。




■日本公開未定作品

"Only the Brave"

米アリゾナ州で起きた巨大森林火災に立ち向かう消防士達の格闘を描く実録物英雄譚。身体を襲う火焔描写に隔世の感、かつ『バックドラフト』より実話ベースの物語が格段に深い。個の幸福と職務との葛藤、残される者の痛切、炎という魔物への畏敬。主演二人の演技は生涯代表作レベル。

良火焔映画"Only the Brave"、調べてみるとDolby Atmos環境による配給あり。しかしバンコク都心では同音響設備のある2シアター(パラゴン6、CWSF10)とも同日公開作『マイティ・ソー バトルロイヤル』に占有され観られず。かつ占有だけして非Atmos上映回有りという。日本でもままある残念事象ですね。




"Operation Avalanche"
1967年、ソ連のスパイ摘発のため、NASAにCIAのエージェント2名が潜入。2人はNASAに月面着陸の技術がないことを突き止めるが、国上層部は隠蔽に走り、月面着陸の映像捏造も始まって2人は危機に陥る、というシリアスコメディ。手持ちカメラ主体の淡々とした映像展開に静かな迫力。

"Operation Avalanche"は昨年バンコクで観た。モキュメンタリーとしての出来も良く、いつも事前情報なしに観るため実は中盤まで実録物かフィクションかわからず観ていた。宇宙開発物だし日本公開来るだろと思う内『アバランチ作戦』の邦題でNetflix公開→公開終了したらしい。




"Song To Song"
テレンス・マリック監督&エマニュエル・ルベツキ撮影による『聖杯たちの騎士』『トゥ・ザ・ワンダー 』の系統継ぐ映像詩作。今回の舞台は音楽業界。例に洩れず超絶豪華な出演陣の中、逆に引き立つルーニー・マーラの弱気目線。クリストファー・ドイル的疾走へ出るルベツキを楽しめた。

"Song To Song"、イギー・ポップ、パティ・スミス、レッチリ、リッキ・リー(画像順)らが神的出演。またルベツキ撮影作としては過去作を更新する眼福ぶりだったが、テレンス・マリック作品としては『聖杯たちの騎士』が現状この系列の頂点。バンコクで観たのは半年以上前で、日本公開は無い感じかも。

  『聖杯たちの騎士』&『天路歴程』ツイート:
  https://twitter.com/pherim/status/809972238262947841







 余談。
 
 今年4回目の一時帰国いたしました。帰国早々、自分のなかでは上記エマニュエル・ルベツキやクリストファー・ドイルに並ぶ某神的カメラマンへの音声インタビューが決まりそうで、現在モチモチwktkしております。





おしまい。
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