今回は6月下旬(6/22~29)の日本公開作と、爆音映画祭2018タイ|イサーン映画特集、日本公開未定作など10作品を扱います。
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第90弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■6月22日公開作
『オンリー・ザ・ブレイブ』
米アリゾナ州で起きた巨大森林火災に立ち向かう消防士達を描く実録物英雄譚。肉体を襲う火焔描写に隔世の感、かつ実話ベースの物語が『バックドラフト』より格段に深い。職務と個の幸福との葛藤、残される者の痛切、炎という魔物への畏敬。主演二人の演技は生涯代表作クラス。
"Only the Brave"
バンコク上映時tweet: https://twitter.com/pherim/status/929939150752460801
良火焔映画"Only the Brave"、調べてみるとDolby Atmos環境による配給あり。しかしバンコク都心では同音響設備のある2シアター(パラゴン6、CWSF10)とも同日公開作『マイティ・ソー バトルロイヤル』に占有され観られず。かつ占有だけして非Atmos上映回有りという。日本でもままある残念事象ですね。
『天命の城』
厳寒、孤立、飢餓。1636年、清の大軍に囲まれた南漢山城内で、李氏朝鮮の帰趨を賭け重臣二人が対立する。竜虎の激突かの如き論戦の気魄にひたすら痺れる。厳しく抑制を利かせた坂本龍一音楽が、籠城を巡る密使、伏兵、調略の詳細描写が生む陰翳を一層引き立てる。衣装軍装も逐一眼福。
"남한산성"
■6月23日公開作
『死の谷間』
登場人物3人だけ、というか辺境世界に3人だけ残された核汚染後の終末SF版『羅生門』。三者出ずっぱり演技の醸す緊張感が素晴らしく、地球最後の男女でも三角関係になっちゃう切なみ奥深い。ヒロイン役マーゴット・ロビーは本作と『アイ,トーニャ』で見事演技派女優に脱皮したなり。
"Z for Zachariah"
『祝福~オラとニコデムの家~』
自閉症の弟を初聖体式に送りだす過程を通じて、14歳の少女オラは家族の絆をとり戻そうと奮闘する。旧共産圏崩壊後のポーランドにおける家族とカトリック信仰の現在を、少女の眼を通し鮮明に映しだすドキュメンタリー良作。冒頭部と呼応する幕切れの静謐が殊に秀逸。
"Komunia"
試写メモ40.1 「物語としての信仰と、家族というフィクションと。」:
http://tokinoma.pne.jp/diary/2899
試写メモ40.2 アンナ・ザメツカ監督インタビュー: 近日更新予定
『女と男の観覧車』
ウディ・アレン新作は、ケイト・ウィンスレットの情感厚いベテラン演技で、『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットと対を成す観。回転木馬と観覧車に照らされたアラフォー乙女が、汗と埃と欲まみれの底辺生活からついに降りるとき、思いがけなく反転する現実と夢の輪舞曲。
"Wonder Wheel"
■6月29日公開作
『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』
チューバッカとの泥まみれな出会いに始まる若きハン・ソロ立志伝。ミレニアム・ファルコンがこれでもかと大活躍し、予想外のウッディ・ハレルソン&エミリア・クラーク出ずっぱりも楽しめた。『ローグ・ワン』といい、アンソロジー・シリーズのコンパクトな作りはかなり好きだな。
"Solo: A Star Wars Story"
■企画上映:《爆音映画祭2018 特集タイ|イサーン VOL.2》@Shibuya WWW
『バー21の天使』
タイ発ミュージカル映画。観るたび驚かされてきたユッタナー・ムクダーサニット監督作、本作も例に洩れずキャラ造形も鮮明で、"突然歌い出すよ"感では『ラ・ラ・ランド』始め欧米の名作を遥かに凌ぐ奇抜作。同監督の豊かな色彩感が遺憾なく炸裂し、1978年のバンコク情景は目に楽しい。
"เทพธิดาบาร์ 21"
『田舎の教師』
純情一直線の青年教師がのんびりだらりとした田舎の小学校に赴任するも、たぎる情熱ほとばしらせて生徒に他教師に感化させまくり充実した日々を過ごすがヤクザ者達の違法伐採の事実を知り無謀にも単身不正に挑むシリアス展開。とはいえ見どころはやはり70年代の田舎風景。冒頭で爆走するソンテオ(乗合自動車)の廃車感通り越したハウルの動く城感すごい。
"ครูบ้านนอก"
『タクシードライバー』
タイ東北部イサーンからバンコクへ出稼ぎに来た青年が、自前のタクシーを盗難されてさあ大変。無闇に散らかさない抑制ある着地が秀逸。スラム住居からも追い出された彼が、道端で遭遇した流しのケーン奏者が放つ響きに感応し奮起する場面は圧巻。
"ทองพูน โคกโพ ราษฎรเต็มขั้น"
■日本公開未定作
"All I See Is You"
バンコクで視力回復手術を受ける女性が主人公のサイコサスペンス。医療ツーリズムの現場描写は興味深く、カタルーニャへと舞台転換し過去と向き合う後半との対照も鮮やか。回復した視覚が触れる色彩に対する感動、音楽/聴覚との連環、性差によるすれ違いなど諸々構成の見事な秀作。
"All I See Is You"で主人公は、視覚が回復した後“色を楽しみたい”と言い、夫はバンコク近郊の水上マーケットへ連れていく。このとき通る摩天楼やチャオプラヤ川の大橋が、見慣れた自分にも新鮮に映った不思議。あと再度視覚を失いかける際の血流ヴィジョンが、自身過去に体験したものと同じで驚いた。
なお本作主演ブレイク・ライブリー(Blake Lively)のVOGUE誌他でのインタビュー。映画界発端で昨今紛糾するセクシュアリティ議論に対しても実践で語れる彼女の凄味が。一方名前検索では「本作で初ヌード披露」などの文字が並ぶ相変わらずの世情とか。
http://screenonline.jp/_ct/17126531
https://www.vogue.co.jp/celebrity/interview/2017-10-blake...
余談。
《爆音映画祭2018 特集タイ|イサーン VOL.2》は、今年2月のイベントです。この半年ふぃるめも記事シリーズの更新自体が遅れ遅れになっているため、これまで入れる機会を逃していました。
"All I See Is You"については、国内一般上映が今秋に決まったような旨も通知いただいてます。とはいえ半年先の話は経験上変更可能性が高く、邦題も未定のようなので、とりあえず公開未定扱いにて。
ついに当《ふぃるめも》のナンバリングも90代。遠くまで来たものです。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh