pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2019年
06月30日
00:42

ふぃるめも116 蜘蛛かける少女

 


 今回は、6月21日~7月6日の日本上映開始作から11作品を扱います。


 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第116弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■6月21日公開作

『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』

イタリア家族の朗らかなドタバタ劇、と思いきやみるみる各所で対立激化し嵐も到来、船欠航。秘密の暴露が別の暴露を誘爆し、一触即発の殺戮空気みなぎる逃げ場なき島宇宙の今日性。万人の万人に対する逆ギレ状況下、窮した婦人が般若心経詠みだす面白カオス。

"A Casa Tutti Bene" https://twitter.com/pherim/status/1140811889930199042




『パピヨン』
仏領ギアナ“悪魔島”からの脱獄描く史実ベースの名作リメイク。グアンタナモを閉鎖できない今日社会への鋭い風刺と、旧作や原作の社会派要素を排しスペクタクルに特化する潔さ。スティーブ・マックイーン&ダスティン・ホフマンの熱演を、チャーリー・ハナム&ラミ・マレックが見事に更新。

"Papillon" https://twitter.com/pherim/status/1140100005224574976

  試写メモ58「ここではない、どこかへ」:https://tokinoma.pne.jp/diary/3343

※とはいえトータルで言えば、スティーブ・マックィーン&ダスティン・ホフマンの1973年版『パピヨン』が凄すぎたという結論にブレはありません。理由は上記試写メモにて。




『X-MEN ダーク・フェニックス』
キャプテン・マーベルを超えてきた“強き女”への覚醒譚。能力獲得シーンの壮大さ、マイノリティの苦汁に根下ろすストーリーラインの巧さ。それにもましてこの超豪華X-MEN出演陣を大向こうに張るジェシカ・チャステインの放つ、極低温ビューティーの凄絶さは言絶の域。

"X-MEN: Dark Phoenix" https://twitter.com/pherim/status/1140455044677951488




■6月22日公開作

『アマンダと僕』

大切な人を突然失う体験がもたらす心の揺れを、5才のアマンダと叔父にあたる青年を通して描く。パリを自転車でゆく朗らかな昼と寒々しい夜の透き通った情景描写を、事件前と後の対照的な心理描写へ重ねる巧さ。アマンダの意外な呟きから始まるラストの物語昇華は胸に深く突き刺さる。

"Amanda" https://twitter.com/pherim/status/1141178573690028034




■6月28日公開作

『神と共に 第二章:因と縁』

新たに怪力座敷神マ・ドンソクが降臨し、千年前の史劇要素も加わる第二章、前作同様の高水準CGが見応え充分。「四十九日」が物語の重要な下地となり、登場する宗教ギミックが日本とは少しずつ異なるのも面白い。チュ・ジフン、もうじき長谷川博己のように化けそうな予感。

"신과함께-인과 연" "Along with the Gods: The Last 49 Days" https://twitter.com/pherim/status/1142726187912851456

  『神と共に 第一章:罪と罰』(ふぃるめも113):
   https://twitter.com/pherim/status/1129583783550672896


オ・ダルスの降板残念。映像は撮りきってた模様。




『COLD WAR あの歌、2つの心』
大戦直後のポーランドで恋に落ちたピアニストの男と歌手の女。西側へ亡命した彼と東に残った彼女との逢瀬の舞台となる'50年代ユーゴやパリの再現描写が興味深い。『イーダ』のパヴリコフスキ監督が両親へ捧げた、時代や国家に翻弄された者の心の距離を描く静かな秀作。

"Zimna wojna" "Cold War" https://twitter.com/pherim/status/1141898951676665856

  『イーダ』: https://twitter.com/pherim/status/585399163258449920

パヴリコフスキ監督前作『イーダ』公開時のツイート紐づけ。'60年代の共産化進むポーランドで少女イーダは修道女への道を選ぶが、中盤で「あなたの実親は迫害されたユダヤ人」と明かす叔母と、『COLD WAR あの歌、2つの心』の女主人公ズーラとは人物造形において共鳴し合う。

  試写メモ59「ここではない、どこかへ」:https://tokinoma.pne.jp/diary/3343




『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
エンドゲームの後をこう魅せるかと感心しきり。メジャー観光地ブレイク巡回みたいなアクションは楽しいし、ジェイク・ギレンホール登板もその稀有な二面性が活かされ満喫。“この現実”という幻想を支える真の現実、という虚構の多重性を引き受ける成長“物語”。

"Spider-man:Far From Home"




■7月5日公開作

『Girl/ガール』

バレリーナを夢みる15歳の少女の、トランスジェンダーゆえの葛藤。残酷なイジメ、厳格なレッスンを耐え抜く日常の崩壊と再生。ゲイではない少年への配役が欧州で議論を呼んだが、背筋で語る熱演がその成否を物語る。台詞に頼らず光彩&音響で情感までもを描き切る、激しくも静謐な一作。

"Girl" https://twitter.com/pherim/status/1144078570777542657




『ワイルドライフ』
親から見守られる存在であるはずの少年が、家族の崩壊を最も冷静に見つめていく。無力だが目線を逸らせはしない少年の瞳の幽かな揺れに、本作が初監督作となる怪優ポール・ダノの深い眼差しが憑依する。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』にみた人間の小ささとあり難さが連想された。

"Wildlife" https://twitter.com/pherim/status/1143343030755188736




■7月6日公開作

『田園の守り人たち』

第一次大戦下フランスの農村。男も馬も戦争にとられ、残る女たちが肉体労働すべてをこなす日々。血を守りたい老婆、情熱に焦がれる未亡人、根を張りたい雇われ農婦など、個々の人生を賭けた静かな対峙が、稀代の撮影監督シャンプティエにより截然と伐り出される。質実の映像美。

"The Guardians" "Les Gardiennes" https://twitter.com/pherim/status/1144440873465159681




『サマーフィーリング』
突如の喪失から再生へ、恋人の死に始まる3年の歳月をベルリン、パリ、NYと舞台を移し3つの夏を描く。本作監督ミカエル・アースの次作『アマンダと僕』(↑)における情感表現の濃密さとは対照的な光の薄さと柔らかさ、あえて速度を抑えたかのように淡々と移りゆく情景描写が印象的。

"Ce sentiment de l'été" "This Summer Feeling"

ところで『サマーフィーリング』、冒頭で亡くなる恋人の勤めるシルクスクリーンの工房が、藝大絵画棟の版画研究室と余りにも似て目が奪われた。道具や空間配置が同じなのはもとより、通路や収納と人とのサイズ感覚や、白壁のアトリエに差す午後の陽光の柔和さまで。『アマンダと僕』に通じるリアル描写の繊細感覚。

  『アマンダと僕』: 上述

それから『サマーフィーリング』主演アンデルシュ・ダニエルセン・リーの醸す、フラジャイルで底無しな孤独の相にそれでも宿るほのかな温もりが、ノルウェーの惨劇描く『7月22日』(Netflixのほう)で演じた無差別テロ実行犯の放つ硬質な冷たさとあまりにも対極で驚かされる。

  ノルウェーの惨劇描く『ウトヤ島、7月22日』『7月22日』
  https://twitter.com/pherim/status/1101360399956402176 (ふぃるめも107)






 余談。

 蜘蛛がですね、トラックの荷台に巣を張るのです。そして二台の荷台に張った巣のあいだに貨車が嵌まりこんで、レールから脱線してしまうのです。大事故。という夢をみたのです。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を観に行く数時間前の出来事でした。楽しみにしすぎだろう、俺。
 
 それはそうと、きのう都心某所で字幕初号試写を観たばかりの興奮も冷めやらない『アポロ11 完全版』。勢いあまって公開順を飛ばし作品ツイートしてしまいました。添付してある予告編動画↓が滅茶カッコよいですよ。

  『アポロ11 完全版』: https://twitter.com/pherim/status/1144807901615153154

 地味に先週から、面白かった場合にかぎり試写直後ツイートを試みています。敢えて作品名は書かなかったり、従来のツイートからは遠く離れて(Far From!)、まぁ色々試みていく所存です。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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