pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
08月21日
23:56

ふぃるめも147 きっと、また終焉

 
 

 今回は、8月15日~8月22日の日本上映開始作と、ル・ステュディオ(銀座メゾンエルメス)上映作など10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第147弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
 
 

■8月15日公開作

『この世の果て、数多の終焉』

仏領インドシナ、日本軍撤退から独立戦争勃発までの1年を舞台に迸る魂の彷徨。
密林の追跡行は『地獄の黙示録』前史の如き白昼の悪夢と化し、濃艶なラブロマンスとの対照が鮮烈。世界の混沌を凝視するギャスパー・ウリエルの瞳の静謐が、リアルの野卑を伐り立たせる。

"Les Confins du Monde" "To the Ends of the World" https://twitter.com/pherim/status/1294475621645471744




■8月21日公開作

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

ガリ勉女子コンビによる、誘われなかったパリピ同級生のパーティへ駆けつけようと七転八倒するスクールコメディ。
深夜の街ゆく爆笑ロードムービー展開のなか、陽キャたちを見下すことでバランスを保っていた心の歪みにケリをつけてゆく果敢さが瑞々しい。

"Booksmart" https://twitter.com/pherim/status/1292699235675041794

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』の良グルーヴを予感して戴きたく、『レディ・バード』の画像を並べてみる試み(➘図https://twitter.com/pherim/status/1294610588815863808)。これだけで観たくなる人きっといるはず。ちな両作でバディ役演じる彼女の名はビーニー・フェルドスタイン。今後の出演作もガチ楽しみ。

  『レディ・バード』:https://twitter.com/pherim/status/1001805966545858560

あす公開の『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は、女優オリヴィア・ワイルド初監督作。すでにマーベル新作の監督就任報道も。
『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督2作目がかの『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』。傑作潮流ここに。

  『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』:https://twitter.com/pherim/status/1287984569749131264




『きっと、またあえる』"छिछोरे"
受験のプレッシャーに潰れた子とその父母を励ますため、父母と若き日を供に過ごした学生寮の仲間達が、遠方から集う。
“負け犬”と呼ばれたあの七転八倒の日々こそ今の俺らを支えてくれる、だから君も恐れず進め。抱腹絶倒の果てに感動が待つ、インド娯楽映画の王道ゆく快作。

"Chhichhore" "छिछोरे" https://twitter.com/pherim/status/1294830687015456770

  ニテッシュ・ティワリ監督過去作『ダンガル きっと、つよくなる』:
  https://twitter.com/pherim/status/981333810804436992

  
『きっと、またあえる』の日本公開がコロナで延期されるなか、この6月に主演スシャント・シン・ラージプートの訃報が世界を駆け巡った。本作での勇躍を想うと、その自死は本当に残念でならない。追記予定。

  
  

『グッバイ、リチャード』
ジョニー・デップ主演新作は、余命宣告された文学部教授の日々をガチシリアスに演じ『いまを生きる』を更新しつつ、ロマンスに社会風刺にてんこ盛り。
のように見せかけ、台詞より仕草で全てをメタに笑い飛ばす懐深さに、非キャラ物演じる役者ジョニデの真価を久々にみる。

"The Professor" https://twitter.com/pherim/status/1295915502020091904




『海の上のピアニスト イタリア完全版』
この完全版は凄い。トルナトーレ監督の充溢は全編尽きることなく、モリコーネの音楽も中弛みが一切ない。
一番嬉しかったのは、眼福極まる客船機関部や貨物/船員室場面の充実。’99年の日本公開版より45分長く4K修復された鮮明170分作品、本当に短く感じた。

"La leggenda del pianista sull'oceano" "THE LEGEND OF 1900" https://twitter.com/pherim/status/1296642459825393666

『海の上のピアニスト』上映情報修正。
《4K修復版》121分 8/21~
《イタリア完全版》HDリマスター170分 9/4~
の2種(同一館での併映あり)との由。トランペット吹きの語り役プルイット・テイラー・ヴィンスの揺れる瞳の演技や、ヒロイン役メラニー・ティエリーの楚々とした立ち姿も印象的でしたね。

『海の上のピアニスト イタリア完全版』で、機関部や貨物室・船員室などバックヤードをこれでもかと映してくれたこと。この点は『タイタニック』初見時の感動を想起せずにいられなかった。
  
  十代バンコク『タイタニック』鑑賞ツイ:
   https://twitter.com/pherim/status/850674688971886594
   https://twitter.com/pherim/status/1028931000502431744


ちなみに淀川長治さんが生前、「『タイタニック』は機関部の場面がとにかく凄いんだ。せっかく本物の客船を造ってあそこまで再現したのに、ロマンスに時間幅を取られたのはもったいなくて仕方ない」と仰っていたのを聴き、そうなんだと安心した記憶。

  淀川長治講義の記憶:https://twitter.com/pherim/status/761752948279959552




■8月22日公開作

『僕は猟師になった』

兼業猟師・千松信也と家族の日々。組み伏されトドメ刺される間際の猪がこちらを見据える。仔鹿の断末魔が耳朶を襲う。
このリアルに曝された後だからこそ、その心臓をいたわるように味わう千松の、獣にアンフェアだと骨折手術を拒む哲学は一層響く。淡々と語る池松壮亮のナレーションも良い。

https://twitter.com/pherim/status/1296279964065529856




『シリアにて』
市街戦下のダマスカス、ある一室で生き延びる家族の物語。
戦闘や銃器を画面から一切排し、住居屋内と階下の駐車場のみを舞台として立て篭もる人々の内面を捉える、数多いシリア紛争映画中でも稀有な構成。一日限定の展開で、移ろいやすい戦争のリアルを再現する点も秀逸。

"Insyriated" https://twitter.com/pherim/status/1295555771380318210

ツイートはしないだろうけど、ここだけの私見として『シリアにて』という邦題は、これでどれだけ動員・公開規模が伸びるのか気になるところ。原題"Insyriated"の忠実な訳ではあるけれど、シリア主題というだけで数々の傑作映画に失意の業績をもたらしてきたのが日本の映画市場ゆえ、本作こそ文学的創意の練りどころだったはずなのだが。というわけで、封切りは文芸映画のメッカ岩波ホールだし、映画の質自体はかなり良いのにこの選択はもったいない気がするのです。




■日本公開中作品

『れいこいるか』
神戸、1995年の震災で幼い娘を失くし離婚した夫婦の、その後の絆。
立ち呑み屋と卓球場、歳月と半ケツの醸す哀愁。センスの塊で低予算の制約を貫いたような画作りは中毒性あり。ゲイママになった寝取られ相手との会話など赦しを超えた情緒そのもの、言葉にならない衝撃に眩暈する。

https://twitter.com/pherim/status/1295193776512614400

『れいこいるか』、テイストはまるで異なるけれど、《喪失》そのものを声高に嘆くより周囲をぐるぐると回りつづける感じが、同じ阪神・淡路大震災のその後を描く森山未來+佐藤江梨子主演の『その街のこども』を連想させた。
実はこの微温的な良さ、他国の映画にあまりみない。

  『その街のこども』連想ツイ: https://twitter.com/pherim/status/821679410797510658




『ダークナイト』 IMAXレーザーGT
ジョーカーの視界が、座席背後へ陥入してくる体感。
即ち異常/正常の境界が棄却された世界感覚自体の体験こそ、ノーランがIMAX70mm撮影に拘った成果と知る。物語の底を突き破り、象徴秩序から漏れ出る不気味なもの。怪物的他者の手触りが現出される、表現装置のこの極北。

"The Dark Knight" https://twitter.com/pherim/status/1303320431818993665

  『ダークナイト』鑑賞後記「バットマンの死」: https://tokinoma.pne.jp/diary/3913




■ル・ステュディオ(@銀座メゾンエルメス)企画上映作
 https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/studio/20...

『ムーンウォーク・ワン』
’69年のアポロ11号月面着陸を描く’71年公開作。NASA撮影箇所に2019年製作の70mmベース『アポロ11 完全版』との重複カットも散見されたが、より情緒的な演出。殊に発射場面は荘厳。宇宙服を縫うお針子のおばちゃん達の世間話や、帰還パレードなど新鮮。

"Moonwalk One" https://twitter.com/pherim/status/1290893912198930432

↑Youtube動画全編高精細公開中。銀座メゾンエルメスの映画上映イベントって、毎度いつも興味深いのだけど随分前に予約が埋まるので、実は一度も行けたことがなく。コロナ禍オンライン移行で初めて参加できた感。(若干お洒落気分にて候)

 『アポロ11 完全版』: https://twitter.com/pherim/status/1144807901615153154
 
 
 


 余談。
 
 9月公開のクリストファー・ノーラン新作『テネット』のプロローグ上映、『ダークナイト』IMAXレーザーGT回の前座で観たけれど、IMAX威力+ノーラン画角が完全に地続きで、本編の物語は予め知ってることも手伝って、体感としては一体化された拡張版を観た感覚が残りましたね。この点でも予期しないお得感あったというか。

 IMAXレーザーやDolby Cinemaについては、単に画質と音質がいいとか画面がでかい程度と思っている人こそ一度体験をお奨めします。とくにノーランのように、撮影段階からそれ前提の製作をするひとの作品は、通常の2K DCP上映と表現のジャンルが異なるというくらいに体験の中身は変わるので。
 
 さらに言えば、一生残り得る初体験は、せっかくなので可能な限り高機能設備のある劇場で。実は日本の郊外シネコン等のIMAXって、IMAXの世界標準から言うと限りなくニセモノに近いのです。賃料コストや各種規制がこの状況を招いたと推測されるけれど、結果として音バランス等かなり変なことになりやすい。実際にお金を払って何度も失敗している、実体験者の意見として。

 この連なりでは昨今下火感もある3D作品(の日本受容環境)についても思うところあり、そのうち書きまする。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh

コメント

2020年
08月24日
23:50

>『タイタニック』は機関部の場面がとにかく凄いんだ。せっかく本物の客船を造ってあそこまで再現したのに、ロマンスに時間幅を取られたのはもったいなくて仕方ない

これと全く同じ事を、「男達の大和」で思い、ドラマシーンを省いた動画を作りました。
タモリもタイタニック見る時は船のシーンだけ見てあとは飛ばすそうです。

2020年
09月03日
09:23

その大和動画はSNS需要高いのでは。

テレビ観なくなって久しいので、タモリ相変わらずタモリだなぁとw

(すっかりレス遅くなり失礼しました><;)

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