あけましておめでとうございます。
今回は、12月11日~1月2日の日本上映開始作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第203弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■12月11日公開作
『東洋の魔女』
映像の破茶滅茶なカッコ良さ。
東京五輪金メダル組インタビュー+当時の録画をベースに、『アタックNO.1』引用や敗戦~高度成長期日本の象徴景をリズミカルに重ねゆく監督が、仏国立スポーツ機関の映像アーカイヴ所属と知り納得。
今日許されざるスパルタの諸相に驚くほど魅了される。
"Les Sorcières de l’Orient" "The Witches of the Orient" https://twitter.com/pherim/status/1469531411338371074
今日ではあり得ない指導風景を含むにも関わらず前ツイで「魅了される」と感じたとき、無論ベルリン五輪を撮ったレニ・リーフェンシュタールが脳裡をかすめていて、選手のトレーニングと日紡/鉄鋼の工業機械を重ねる律動的な手際は往年のソ連映画をも想わせる。この意味では良質の二次創作にも近しい感覚あり。
『ジャネット』
幼女期のジャンヌ・ダルクが、おもむろに野原で裏返りエクソシスト歩きを始める宇宙。
そこでは尼僧2人がEXILE回転するわ幼女へ歌唱バトル仕掛けるわ。しかもフィリップ・ドゥクフレ振付という謎仕様。ややネジの外れた映画撮るイメージあったブリュノ・デュモン、ややじゃなかった。
"Jeannette, l'enfance de Jeanne d'Arc" "Jeannete, the Childhood of Joan of Arc" https://twitter.com/pherim/status/1468052744162672641
ブリュノ・デュモン『ユマニテ』 https://twitter.com/pherim/status/1246185856290795520
『ジャンヌ』
ジャンヌ・ダルク13歳時の召命と19歳時の落命を、2年差で同じ少女に演じさせるブリュノ・デュモン2部作。
アミアン大聖堂の共唱席で為される魔女裁判。演劇に対する映画の優位性を『ドッグヴィル』ばりに縛るその試みが、弾劾の空気引き裂くクリストフの歌声により天蓋を貫き昇華する。
"Jeanne" "Joan of Arc" https://twitter.com/pherim/status/1470759242588356610
■12月17日公開作
『BELUSHI ベルーシ』
不世出のコメディアン、ジョン・ベルーシ。
ブルース・ブラザース兄役、サタデー・ナイト・ライブ作&出演など極めた頂点の先で薬物死へ至った男の、ふと見せる素顔が物悲しい。
アルバニア系移民の出自から己への注目を希求し続け、絢爛と孤独に引き裂かれゆく相貌のリアル。
"Belushi" https://twitter.com/pherim/status/1471123629178232835
『夜空に星のあるように』
18歳ジョイの結婚相手トムは泥棒して投獄。
出産後、夫の仲間デイヴに惹かれ同棲を始めるがデイヴも逮捕投獄。
労働者階級目線を貫徹させるケン・ローチ第一作。のちパルムドールに2度輝く巨匠の荒削りな煌めきはひたすら眩しく、“デビュー作には全てが詰まる”の典型すぎて歓喜する。
"Poor Cow" https://twitter.com/pherim/status/1476039730848763906
『雨とあなたの物語』
12月31日に雨が降ったら会おう。
手紙を交わし続けた2000年代初頭、8年越しの恋物語。
病床の姉の代わりに返事を書き始めた古書店員♀と、会える機会を待つうち傘職人となった予備校生♂を軸とする配置で近過去からノスタルジーを引き出すあたり、さりげなくも滋味深い。
"비와 당신의 이야기" "Waiting For Rain/Endless Rain" https://twitter.com/pherim/status/1475802206754721794
■12月24日公開作
『ヴォイス・オブ・ラブ』
セリーヌ・ディオンの幼少期から50代までを、一人の女優が演じ切る伝記作。
監督/脚本/主演を軽妙にこなすヴァレリー・ルメルシエ、撮影時56歳で思春期少女を体現する前半の異様さこそ、地味に本作の達成なのだと気づかされる。『タイタニック』テーマの熱唱場面は見モノ。
"Aline" "Aline the VOICE of love" https://twitter.com/pherim/status/1477936577309716486
『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』
「パパは女性として生きる」と両親の離婚を告げられた、エマ11歳の動揺と葛藤の日々。
快活なサッカー少女の心が、父の変貌を受けとめきれず翳りゆく描写は引き込まれる。家族物語と、ノーマルの尺度を自ら選びとるに至る成長譚を両立させた構成が巧い。
"En helt almindelig familie" "A Perfectly Normal Family" https://twitter.com/pherim/status/1478204766107074566
■12月31日公開作
“I Still Believe”『君といた108日』
余命わずかの恋人と過ごす、奇跡のような時間の煌めき。実在歌手の実話ベースで、アメリカ独特の文脈をもつクリスチャン・フィルムの系譜にある作品。学園描写が瑞々しい。それにしても大晦日の日本公開に引っかけた邦題の、宗教文化をひと括りに軽く扱う姿勢はどん引く。
"I Still Believe"
■1月2日公開作
『帆花』
出産時の事故で、脳死に近い状態と宣告された少女と両親の日々。
混乱と苦悩の底から、唯一無二の意思疎通の回路が生まれ、温もりある関係性の網目が育ちゆく様に圧倒される。
帆花ちゃんの瞳と母親・理佐さんの手指へのクローズアップに、己の内なる差別感情の気配を凝視し続けていた。
"" https://twitter.com/pherim/status/1477589768083230721
ことしもよろしくおねがいします。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
01月04日
20:22
1: いなだ つつみ
東洋の魔女のやつを見て、NHKでやった大日本国防婦人会のテレビを連想しました。昔の女性は。「国」というものと関わる機会がなかったというものです。国防婦人会とのかかわりに夢中になった人と、日本や世界というものとかかわりを持ってしまった選手たちが重なります。時代はちょっとずれますが。
01月04日
20:49
2: pherim㌠
同時代の男にくらべ、国という象徴が機能しにくい精神機制をもっていたというのは理解できます。そもそも国家を構成する主体から弾かれたのが「女子供」でしたからね。
なんとなく、「東洋の魔女」の彼女たちには、今日の大谷選手がメディア取材時に醸す周囲とのズレに近しいものを感覚しました。とりわけ当初の目標であった世界選手権制覇のあと、目標を五輪へ切り換える流れなど、「国」とか「世界」とかほとんど眼中にない内輪の共同性で乗り切っている、ように見える。いわば大谷選手はひとりでこの内輪を構築していて、だから大リーグMVPでうかれる余地とかメディア陣と共有できない。みたいな。
01月04日
22:32
3: いなだ つつみ
ふむん やっぱり本編見ないでいうとだめですねえ
01月04日
23:20
4: asuteka
ベルーシ、もう公開されてるんですね。
この世の中になってから映画館に全く行けていないので
配信を待ちます。