今回は、4月15日~29日の日本上映開始作を中心に、11作品を扱います。(含短編1作/再掲1作)
※4/28公開作『不思議の国の数学者』『アダマン号に乗って』『セールス・ガールの考現学』、および4/29公開作『私、オルガ・ヘプナロヴァー』4/29配信作『ブラザー・オブ・ザ・イヤー』については次回扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第264弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■4月15日公開作
『マリウポリ 7日間の記録』
監督が落命するまでの7日間。
廃墟化した街角で、避難先の教会で、淡々と今できることをして生き延びる人々を映像は捉え続ける。
将来を嘱望されたリトアニア人監督が早すぎる死と引き換えに残した、散乱する死体を脇目になお営まれる“日常”の強度と静けさに震撼する。
"Mariupolis 2" https://twitter.com/pherim/status/1646876706387668992
『アトランティス』https://twitter.com/pherim/status/1539440639892664321
『熱狂 ドンバス交響楽』https://twitter.com/pherim/status/1544227191004995584
『ドンバス』https://twitter.com/pherim/status/1525445955570388992
『マリウポリ 7日間の記録』『最高の花婿 ファイナル』をめぐって書きました。
戦下の日常、リトアニア人監督7日目の落命。
悲喜劇の舞台、心の拠り所としての教会堂が、
コミュニティの核として再浮上する非常時性。など。
【映画評】教会堂の閾 - キリスト新聞社HP
http://www.kirishin.com/2023/04/19/60048/
■4月20日配信作
『フェーンチャン ぼくの恋人』“แฟนฉัน”2003
少年時代の愛すべき仲間達と淡き恋心。
神作『蝶と花』をポップに更新する、
タイのA24ことGDHの前身GTH初期作。
『すれ違いのダイアリーズ』の二ティワットほか、共同監督6名&製作に隆盛極める現タイ映画ドラマ牽引者ズラり。JAIHOにて配信4/20~
"แฟนฉัน" https://twitter.com/pherim/status/1647070646470410241
『蝶と花』https://twitter.com/pherim/status/821009413704060928
『ハリームとファーン』https://twitter.com/pherim/status/1312246177581023234
■4月21日公開作
『高速道路家族』
サービスエリアでテント生活を送るホームレス家族と、ある中古家具屋の出逢いに始まる寄生物語。
日米にも取材した実話ベース展開はよく作り込まれ、是枝寄りの『パラサイト 半地下の家族』感。中古家具店での借りぐらし風ヴィジュアルも面白く、父の挙動が予想外で終始見入る。
"고속도로 가족" "Highway Family" https://twitter.com/pherim/status/1648527167310159885
『パラサイト 半地下の家族』https://twitter.com/pherim/status/1208610623967248386
『ベイビー・ブローカー』https://twitter.com/pherim/status/1533292692117295104
『レッド・ロケット』
イケメン元ポルノ男優の帰郷。
ドーナツ屋の17歳女子を見初め、恋愛関係になるも彼女をAV業界へ売り出し再起を夢見る。
麻薬売買に手を染め友人を見捨てるなどなどクズ展開の奔流なのにふしぎと明るく、田舎町へ降り注ぐスザンナ・サンの輝きが一層深める救いなき地獄感。
"Red Rocket" https://twitter.com/pherim/status/1649249499565658112
『べネシアフレニア』
観光客のおバカな若者たちが、次々と秘密結社の毒牙にかかる。
ヴェネツィアの路地裏や、屋敷半地下の水路門扉内などを見せてくれる建築萌え。ダリオ・アルジェントやルチオ・フルチら’70sジャッロ/Giallo映画オマージュとはいえ、演出の冗長さがやや惜しい。
"Veneciafrenia" https://twitter.com/pherim/status/1605397754141761537
■4月22日公開作
『独裁者たちのとき』“Сказка”
どこを切ってもソクーロフ飴の怪作きた。
ヒトラーやスターリン、チャーチルらが冥界の入口風な巨大扉を前に嗤い皮肉りあう地獄。
映画監督神にイジられ続けるムッソリーニのおトボケムーヴに笑う。イッセー尾形が昭和天皇演じる『太陽』の先に待ってた21世紀景。
"Сказка" "Skazka" "Fairytale" https://twitter.com/pherim/status/1652136053363605506
『精神の声』https://twitter.com/pherim/status/1022671291848040448
『中国女』“La Chinoise”1967
ゴダールが撮る、毛沢東語録を読み革命を志す子供たち。
アントワーヌの冒険(↓)してたジャン=ピエール・レオが哲学討論する姿こそユーモラスで、“演劇つまり現実を巡る省察”を体現する感。大飢饉の大量死を腐すなど言葉が案外毛へ辛辣。
"LA CHINOISE" https://twitter.com/pherim/status/1648815361041793024
『大人は判ってくれない』から《アントワーヌ・ドワネルの冒険》スレ
https://twitter.com/pherim/status/1538131556216508416
『中国女』の赤については色々言われてるのだろうけど、思想的な“赤”が薄く朱へ脱色されポップ化して、他の暖色系ギミックを地となり支えてるよね。
あと、ジュリエット・ベルトのどんより目まとうムードがとても“Juliet dans Paris”だなと思ったら、同じ1967年制作でした。
“Juliet dans Paris”https://twitter.com/pherim/status/1643601949575749633
『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』USA 1971
パリ5月革命を受け、ゴダールが米国で撮る “1AM”企画。
1968年NYで撮影されるも編集過程でゴダールが放棄、のち『NYの中国女』↓監督が完成させた“存在しない映画のメイキング”。
構想語るゴダール、摩天楼見下ろす建設作業員の現代批判など見応え諸処。
"1PM" https://twitter.com/pherim/status/1655187105285558272
ゴダール連ツイ『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』発 https://twitter.com/pherim/status/1513786913844473859
■4月29日公開作
『ニューヨークの中国女』“Two American Audiences”USA 1968
ゴダールがNYの学生らと『中国女』(’67)を巡り討議する。若者の熱い好奇心と反骨心にへ鷹揚に応える沈着ぶりが趣深い。
日本で監督を囲んでもこうは白熱しない不思議さを、B. Hammer “Audience”(↓RT)同様に感覚。
"Two American Audiences" https://twitter.com/pherim/status/1653044673622188035
バーバラ・ハマー“Audience”1982 https://twitter.com/pherim/status/1638361566771830785
■特集上映《「ハリウッドのルル」刊行記念 宿命の女 ルイズ・ブルックス》 シネマヴェーラ渋谷
http://www.cinemavera.com/programs.html#id7
『ミス・ヨーロッパ』“Prix de beauté”1930
ルイーズ・ブルックスの瞳がふと見せる、
孤独の翳りに心貫かれる23歳時主演作。
平凡な主婦生活を一旦は選んだ女の悔恨、
捨てられた男の怨恨。
音響による尖った心理演出に、トーキー移行期ゆえの実験精神が聴きとれルネ・クレール脚本を引き立てる。
"Prix de beauté" "Beauty Prize" https://twitter.com/pherim/status/1646788472039182337
F・W・ムルナウ『サンライズ』1927 https://twitter.com/pherim/status/827547296216649729
■国内過去公開作(含映画祭上映作)
『すれ違いのダイアリーズ』2014
水上学校へ赴任した都会青年が、悪戦苦闘のなか前任女性教師が残した日記に心洗われ、仄かな恋心さえ抱く。
香取慎吾キャラも効くめっちゃ爽快映画なんだけど、湖はダム湖で少数民族の教育&地方格差を忍ばせたり、流石のGTH映画でしたね。
"คิดถึงวิทยา" https://twitter.com/pherim/status/1650479869946654720
監督第一作(共同監督作) 『フェーンチャン ぼくの恋人』“แฟนฉัน”2003 https://twitter.com/pherim/status/1647070646470410241
2014年バンコク初見時ツイ: https://twitter.com/pherim/status/456457425244012545
余談。『すれ違いのダイアリーズ』2014年バンコク鑑賞時ツイ2投目のコメント「本作が、初めてタイの映画館で観たタイ映画になります。めでタイ。」
めでタイとか言えちゃう初々しさに、移住1年目感ありこそばゆすぎし春の夜。
おしまい。
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