今回は、5月12日~5月19日の日本上映開始作を中心に10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第266弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■5月12日公開作
『フリークスアウト』
第2次大戦下イタリアで、
異能凸凹集団がナチスに立ち向かう。
道化師の怪力男や磁石男、感電少女らサーカス団がフェリーニの郷愁をも誘う巧さは、さすが『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』監督新作。
ドイツ人団長の邪悪さへ憎みきれない弱さ覗けるイタリア版Fantastic Four堪能。
"Freaks Out" https://twitter.com/pherim/status/1657365648224448512
※ドイツ側敵ボス役フランツ・ロゴフスキめぐり追記予定
フランツ・ロゴフスキ主演傑作『希望の灯り』https://twitter.com/pherim/status/1112225278086897665
フランツ・ロゴフスキ出演傑作『名もなき生涯』https://twitter.com/pherim/status/1230430112287354881
フランツ・ロゴフスキ出演秀作『水を抱く女』https://twitter.com/pherim/status/1381082356879032322
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』
個人の犯罪係数がAI管理される超監視社会化した日本で、外務省の離反特殊部隊と厚生省公安局とが鍔迫り合う。
超絶IT化した長崎出島スラムの祭列から鳥型垂直離着機、機械化択捉島の無機的静謐まで、押井守『イノセンス』オマージュ充溢も楽しい。
"" https://twitter.com/pherim/status/1657175090797371392
『MEMORY メモリー』
リーアム・ニーソン翁、老いて益々盛ん。
アルツハイマー発症の殺し屋が、最後の仕事を引き受けるも仁義から反抗する。情事も艶やか。
音楽がマーティン・キャンベル監督前作“マーベラス”同様Rupert Parkes @photekで妙趣。刑事ガイ・ピアース&黒幕モニカ・ベルッチの好配置。
"Memory" https://twitter.com/pherim/status/1656936275784654848
『マーベラス』photek言及ツイ https://twitter.com/pherim/status/1542856101687103489
『TÁR/ター』
ケイト・ブランシェットが、ベルリン・フィル首席指揮者の孤立しゆく魂を凄演する。
最高峰楽団を率いる革新者の君臨する、恋人のコンマス始め同性愛伴う身内贔屓疑惑をまとめてはね返す帝国の描写圧巻。
中盤から響く崩壊序曲も鋭く、煉獄物語と一体化したこの音響体験は新しい。
"TÁR" https://twitter.com/pherim/status/1656305607694221312
『TAR/ター』のLGBT表現。
“心惹かれる相手が同性であることと、同性愛者だという自覚とは、心の働きかたが違う”
『キャロル』を巡る7年前の若書きです。同性愛が社会的に孕み得る倫理的傾斜をなんら前提しない『TAR』の描写全体が示す姿勢には、時流の変化を感覚しました。
note「彼女の瞳の内なる怯え」映画『キャロル』をめぐって
https://note.com/pherim/n/n2f97dbc271fe
『TAR/ター』では、ノエミ・メルランも滅法利いてましたね。寡黙な意志の固さをみせる役柄は『燃ゆる女の肖像』の強い眼差しや、『パリ13区』でのしなやかさを想わせます。
あとを劇場を選ぶなら、音響優先をお奨め。演奏場面だけでなく音作りが先鋭的な作品になってます。
『燃ゆる女の肖像』https://twitter.com/pherim/status/1332916626879094784
『パリ13区』https://twitter.com/pherim/status/1518903392667848704
『ファイブ・デビルズ』https://twitter.com/pherim/status/1593437556762255362
『彼が愛したケーキ職人』https://twitter.com/pherim/status/1066850817888538624
『聖なる復讐者』
知的障害をもつ双子の弟を殺した犯人への復讐を誓う兄。
少年院舞台の犯人探しは思いのほか肉弾展開。1人2役のジニョン、兄の復讐心に同情的な看守役キム・ヨンミンに加え、弟の友人演じる『不思議の国の数学者』少年役キム・ドンフィの、鬱屈を抱えたいじめられっ子演技も印象的。
"크리스마스 캐럴" "christmas carol" https://twitter.com/pherim/status/1656088189201969157
『不思議の国の数学者』https://twitter.com/pherim/status/1650117052592705537
『デスパレート・ラン』
ナオミ・ワッツ主演新作は、息子の学校で銃乱射事件発生、森をランニング中の母がスマホで息子を救おうと試みるフィリップ・ノイス監督作。
通話越しに進む事件顛末に想像力が刺激され、車内からスマホで状況操る類似近作群に加え、校内描くエレファント等↓も強く想起され。
"Lakewood" "The Desperate Hour" https://twitter.com/pherim/status/1656593121961185280
『エレファント』『静かなる叫び』https://twitter.com/pherim/status/832460964398133250
■5月13日公開作
『同じ下着を着るふたりの女』
母娘の激情的すれ違い。
“母性”に負わされた宿痾を描くキム・セイン監督作。“はちどり”キム・ボラの一回り下92生まれ、女性監督新潮流の台頭鮮烈。
発作的に娘を轢いてしまう母の毒親ぶりは、香港の秀作短編『32+4』を想起させる。同世代監督ゆえの共時性はありそう。
"같은 속옷을 입는 두 여자" "The Apartment with Two Women" https://twitter.com/pherim/status/1657944805740249088
『はちどり』https://twitter.com/pherim/status/1358781785048547330
『32+4』https://twitter.com/pherim/status/1633377542517428226
『Next Sohee』https://twitter.com/pherim/status/1587813449605976064
■5月19日公開作
『ソフト/クワイエット』
有色人種を毛嫌いする白人至上主義の女6人が、
暴力の悪循環へと自らを駆り立てる。
あのブラムハウスが全編ワンカット潮流を激烈に更新。
6人に終始つきまとう視点は緊迫感を持続させ、身近な「いいひと」の内にこそ潜む邪悪さから、観客が目を背けることを許さない。
"Soft & Quiet" https://twitter.com/pherim/status/1657647035917664256
『ソフト/クワイエット』ツイ追加。「男性性の暴力性」がクローズアップされる昨今の反動として、日本では「弱者男性」の存在が強調されがちだけど、米国では「白人女性による暴力」を描くスリラー映画が現れる。監督は華僑とブラジル系の血を引くカリフォルニア大学バークレー校出の才媛です。
ブラムハウス作品スレ: https://twitter.com/pherim/status/1347439125205381127
『炎の少女チャーリー』https://twitter.com/pherim/status/1529072889097756672
『フォーエバー・パージ』https://twitter.com/pherim/status/1627518719055499264
全編ワンカット近作:
『ヴィクトリア』https://twitter.com/pherim/status/726642101534887937
『土曜の午後に』“শনিবার বিকেল” https://twitter.com/pherim/status/1545753826573316096
『ウトヤ島、7月22日』https://twitter.com/pherim/status/1101327030509957120
『ボイリング・ポイント/沸騰』https://twitter.com/pherim/status/1547191489905577984
『ナイトライド 時間は嗤う』https://twitter.com/pherim/status/1593212050926604288
■《シャンタル・アケルマン映画祭【デジタルリマスター版】》
https://ttcg.jp/movie/0852100.html
『ゴールデン・エイティーズ』1986
パリの美容院&洋服店を主舞台に巻き起こる、
消費社会の騒擾と各々の恋模様。
マネキン調の人物群と舞台セットのような人工性。30年越しの恋や二股浮気の起こすドタバタ劇の奥向こうにホロコーストさえ覗かせる、アケルマンの巧緻際立つパステルカラー野心作。
"Golden Eighties" https://twitter.com/pherim/status/1653367077141635073
ちなゴールデン・エイティーズで、夫と働く店への元恋人登場で揺れる母ジャンヌは、ホロコースト生還者という設定。
この役を演じたDelphine Seyrigこそ、ジャンヌ・ディエルマン↓の母ジャンヌ役で、アケルマン実母はアウシュヴィッツ生還者。友人の指摘で知りました多謝。
シャンタル・アケルマン映画祭上映8作(ふぃるめも244)
https://tokinoma.pne.jp/diary/4698
■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)
『キル・ボクスン』
全編ド派手な大立ち回りを、名優チョン・ドヨン&ソル・ギョングのW主演で魅せまくる。
端役も逐一豪華で、神傑作シークレット・サンシャイン&ペパーミント・キャンディーの昔日は想像もしなかったこの量産体制に、Netflix+韓流が時代を映すターンの持続力を思わずにいられない。
"길복순" "Kill Boksoon"
『カーター』Netflix+韓流 https://twitter.com/pherim/status/1650840152376479744
『JUNG_E ジョンイ』Netflix+韓流 https://twitter.com/pherim/status/1617019881828020228
余談。
2023年4月映画ランキング my best10
https://twitter.com/pherim/status/1652274426594099201
TAR/ター
ミス・ヨーロッパ
マリウポリ 7日間の記録
聖地には蜘蛛が巣を張る
私、オルガ・ヘプナロヴァー
aftersun/アフターサン
マネーボーイズ 金錢男孩
幻滅
最高の花婿 ファイナル
高速道路家族
次点:不思議の国の数学者
番外:中国女
なんのかんのでターおすすめです。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh