pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2022年
11月10日
19:22

ふぃるめも244 霜月窓辺にアケルマン

 
 

 今回は、11月3日~4日の日本上映開始作と、シャンタル・アケルマン映画祭上映作などから13作品を扱います。(含短篇1作/再掲3作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第244弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
 
■11月3日公開作

『犯罪都市 THE ROUNDUP』

最強vs最狂。あの太っちょ刑事が帰ってきた。
結婚控えるマ・ドンソク、今度はベトナムへ殴り込み。
捜査権も組織支援もない中、ぐいぐい黒幕との距離詰めるマブリー剛腕安定。ラスボス役ソン・ソック新境地の極悪演技にも見入る。
ベトナム国内上映禁止の全編ハッスル。

"범죄도시2" "the Roundup" https://twitter.com/pherim/status/1587612717799870464

 『犯罪都市』https://twitter.com/pherim/status/990939088684441600
 
 


『ヒューマン・ボイス』
ティルダ・スウィントン主演 x ペドロ・アルモドバル監督 x ジャン・コクトー戯曲の短篇映画。
待ち続けた男からの電話で平静を装うが、突如の回線切れから制御不能の激情地獄へ。
初期ティルダを彷彿とさせる実験精神に溢れた表情演技&画作りが楽しい。あとわんこかわゆす。

"The Human Voice" https://twitter.com/pherim/status/1598317499040337922

『ヒューマン・ボイス』はティルダ・スウィントンの一人室内劇(+わんこ)だけど、序盤だけ現れる工具屋店主が実はペドロ・アルモドバルの弟アグスティン。
アルモドバル歴代作プロデューサーでもある彼とは結構前から相互フォローで、予期せぬご尊顔に和むなど。にしても原色の嵐。

※ティルダ・スウィントン連ツイの冒頭ツイにするかもー




『パラレル・マザーズ』
ともにシングルマザーとなる決意を固めた、39歳ジャニスと17歳アナの出逢いに始まる取り替え子物語。
ペドロ・アルモドバルが、十八番の母親物へフランコの暴虐を遠く響かせる。その重厚さに熱演で応えるペネロペ・クルス安定。新人ミレナ・スミットの透明な瞳がまた珠玉。

"Madres paralelas" "Parallel Mothers" https://twitter.com/pherim/status/1591287394707591169

 ペネロペ x アルモドバル前作『ペイン・アンド・グローリー』https://twitter.com/pherim/status/1273461676575043584
 取り替え子(チェンジリング)映画言及 https://twitter.com/pherim/status/865852737203822592





■11月4日公開作

『窓辺にて』

“妻の浮気に傷つかない自分に傷つく”男を演じる稲垣吾郎、『十三人の刺客』のサイコパス殿様に並ぶ低温狂気がハマりすぎ楽しすぎた。高校生作家役・玉城ティナとのズレた会話最高。
若葉竜也、もはや今泉力哉宇宙の定点という印象。『街の上で』再来感ある穂志もえかとの絡みに和む。

"" https://twitter.com/pherim/status/1587236575834157056

 『街の上で』https://twitter.com/pherim/status/1378335473408466948

ところで『窓辺にて』では稲垣吾郎 さんが道具を左手で使う場面が度々ある(↓)のだけど、特にチーズケーキをフォークで切る仕草に、あれ?と疑問を感じました。
もしかして元は右で使ってた派かなと。(矯正か否かはともかく)
実は大昔、彼の左手役のオファーを貰ったことがあり。(続

って吾郎さんコロナ罹患!今知ったhttps://contents.atarashiichizu.com/?p=19633
29日夜に不調を感じたそうだけど、まさにその夜同じ場にいました。稲垣吾郎 x 今泉力哉『窓辺にて』TIFF対談、滅茶面白。
https://twitter.com/pherim/status/1587435707261648896
てなわけで、十代の頃から一方的に薄っすい縁を感じるかたなのでした。お大事に~

『窓辺にて』第35回東京国際映画祭観客賞受賞。
今泉力哉監督受賞コメント、自作で大事にするミクロな視点から、稲垣吾郎 コロナ罹患への気遣いを経て世界情勢へ言及。
おめでとうございます〜
コメント動画https://twitter.com/pherim/status/1587728864683642881




■《シャンタル・アケルマン映画祭【デジタルリマスター版】》
 https://ttcg.jp/movie/0852100.html
 
にかこつけたアケルマン連続視聴。(含非映画祭上映作)

『私、あなた、彼、彼女』“Je, tu, il, elle”
服も着ず、あなたへの言葉に囚われ、
砂糖だけを食べるまでに切り詰められた日々が第1篇。
運転席の彼の性癖語りから彼女との交情へ、
各々の寝屋を眼差す3つの時間。
シャンタル・アケルマン監督長編デビュー&主演作。
不在のあなたを隣席へ感覚する。

"Je, tu, il, elle" https://twitter.com/pherim/status/1523864952679038976




“Jeanne Dielman, 23 quai du Commerce, 1080 Bruxelles” 1975
主婦の日常190分超描写。一見単調、でも一切のたるみなき構成の精密さ。午后の売春、解けゆく髪、鋏の不穏な登場etc.
性差別含み込む“未亡人”の孤立表現も鋭く今日的な、シャンタル・アケルマン24歳時の第2作。不意の亀裂が天才すぎる。

"Jeanne Dielman, 23 quai du Commerce, 1080 Bruxelles" https://twitter.com/pherim/status/1524952360308588568




“News from Home” 1977
母からの手紙を読むシャンタル・アケルマンの声に、
70年代NYの煙る車窓景、船上景が重なる。
21歳でNYへ移住した娘想う母の言葉の生々しさと、
薄青く遠い摩天楼との隔絶。
驚きの“偶然”を各所に宿す中でも、ツインタワーを一瞬映して終わる10th Ave.車窓パートに息を呑む。

"News from Home" https://twitter.com/pherim/status/1526431452963176448




『アンナの出会い』“Les rendez-vous d'Anna”
欧州を転々と移動する寡黙な女が、各地で共に過ごす相手はみな等しく孤独で、等しく充たされている。
ケルン、ブリュッセル、パリ。寝台上の停滞する時間と、くり返される鉄路&街路の水平移動が生む音無しの律動に五感が浸蝕される。アケルマン’78年作。

"Les rendez-vous d'Ann" https://twitter.com/pherim/status/1526909307526467584




『ゴールデン・エイティーズ』1986
パリの美容院&洋服店を主舞台に巻き起こる、
消費社会の騒擾と各々の恋模様。
マネキン調の人物群と舞台セットのような人工性。30年越しの恋や二股浮気の起こすドタバタ劇の奥向こうにホロコーストさえ覗かせる、アケルマンの巧緻際立つパステルカラー野心作。

"Golden Eighties" https://twitter.com/pherim/status/1653367077141635073

ちなゴールデン・エイティーズで、夫と働く店への元恋人登場で揺れる母ジャンヌは、ホロコースト生還者という設定。
この役を演じたDelphine Seyrigこそ、ジャンヌ・ディエルマン↓の母ジャンヌ役で、アケルマン実母はアウシュヴィッツ生還者。友人の指摘で知りました多謝。




『アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学』
夜、Williamsburg橋の下で語られる初期ユダヤ移民の無惨は、ユダヤ人俳優ら自身のものではない。
にも関わらず/だからこそ、湧きたつ固有のリアリティ、その儚くしなやかな感触に戦慄する。河/雨/水が仄めかすもの。

"Histoires d'Amerique: Food, Family and Philosophy" https://twitter.com/pherim/status/1601517059682504705

ニューヨークへ移民してきたユダヤ人たち個別のエピソードを、ユダヤ人俳優が各々演じる。フィクションにはなり切れてない画面の不思議な浮遊感が故郷喪失の語りへ重なり、ドキュメンタリー性の際を考えさせる。シャンタル・アケルマン監督1988年作。(初見時ツイ2019年)




『東から』"D'Est"
ソヴィエト崩壊後の都市を、すべるように水平移動する画面が捉える日常の青色世界。やがてカメラは暮らしの諸相を映しだす。その静謐。一切の言葉なくこれほどに多くを語る2時間を他に知らない。あとに訪れた余韻が帰宅電車の窓景を深化させていた。シャンタル・アケルマン監督1993年作。

https://vimeo.com/162586239
"D'Est" https://twitter.com/pherim/status/1152069449572216832




『囚われの女』
恋人の不貞を疑う青年こそが魂の牢獄へ囚われゆく。
アケルマンが心理スリラーを撮るとこうなるかと頷いてまう、謎も艶も静けく深まるプルースト“失われた時を求めて”第5篇の映画化作。
摩周湖級に透明なふたりの青い瞳に惹き込まれ、何度か物語にとり残される。

"La Captive" https://twitter.com/pherim/status/1674986012978876417

 『飼育』https://twitter.com/pherim/status/1153069860257030144




『オルメイヤーの阿房宮』
アケルマンが地獄の黙示録撮ったらこうなるんや、っていうコンラッド原作の静かな闇の奥世界。
全てが湿り澱み錆びゆくインドシナ時空に踊る破滅への道程。全てが麗しく水平移動するのです。アケルマンですので。叛逆の終盤は鋭さ流石。そしてカーツ大佐までも美しい。

"La folie Almayer"

『オルメイヤーの阿房宮』と『囚われの女』(↑前々ツイ)もそうだけど、原作物はアケルマンにとって車窓や船上景の代わりに既存の物語がうつりゆくようなもので、構造としては同じロードムービー調のマイペース進行なのかな疑惑。





 余談。

 更新遅れて溜まってるふぃるめも投稿、年内には解消したいなとか去年の今頃も考えてた気などしまする。すでに寝かせて2年物となり、熟成進んでるものさえありまする。やうやうかたづけたく候。





おしまい。
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