今回は、特集企画
《A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT》(12/22~劇場 1/26~U-NEXT配信)上映全11作品を扱います。
A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT:
https://www.video.unext.jp/lp/a24-sirarezaru#theater
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第292弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■《A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT》 12/22~劇場 1/26~U-NEXT配信
https://www.video.unext.jp/lp/a24-sirarezaru#theater
『ショーイング・アップ』“Showing Up”
ケリー・ライカート&A24で魅せる、売れない彫刻家の屈託にまみれた暮らしへ差し込む仄かな光。
美大の教職で食いつなぐ主人公の作品はどうにも微妙で切なく、まったり人間模様が得もいわれず良い。
成功しつつある隣人の彫刻家役ホン・チャウによる快活演技も冴える。
"Showing Up" https://twitter.com/pherim/status/1736568980691890446
『リバー・オブ・グラス』https://twitter.com/pherim/status/1441027143895449610
ホン・チャウ出演近作
『ザ・ホエール』https://twitter.com/pherim/status/1641230003202588673
『ザ・メニュー』https://twitter.com/pherim/status/1711212323980091682
『ロー・タイド』“Low Tide”A24 2019
海辺の別荘群で盗みを働き、底辺=Low Tideを生きる地元少年グループの一人が、金貨の袋を見つけて始まるジュブナイル・スリラー。
Low Tide=干潮時の浅瀬をゆくボートに乗る少年たちの影姿は印象的で、“Stand by Me”版『ザリガニの鳴くところ』の趣き。余韻を引く終り方もいい。
"Low Tide" https://twitter.com/pherim/status/1736950598187323818
『ザリガニの鳴くところ』https://twitter.com/pherim/status/1691071248707813376
『サマー・オブ・84』https://twitter.com/pherim/status/1155672647293734913
『グーニーズ』https://twitter.com/pherim/status/1403316303453065217
『オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト』“All Dirt Roads Taste of Salt”
あなたは土よ。豊かで、雨が降ると歌ってくれる。
祖母から孫へ継がれる世界の温度。
バリー・ジェンキンス製作の“森奥の少女たち”版ムーンライト。映像詩の奔流に圧倒される97分で、詩人/写真家の33歳女性Raven Jackson監督の今後も楽しみ。
"All Dirt Roads Taste of Salt" https://twitter.com/pherim/status/1737390585638773243
『ムーンライト』https://twitter.com/pherim/status/847029413740871681
『ビール・ストリートの恋人たち』https://twitter.com/pherim/status/1097325990760464384
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』https://twitter.com/pherim/status/1319121235809202177
『ザリガニの鳴くところ』https://twitter.com/pherim/status/1691071248707813376
『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』“Val”
咽頭癌を抱えて復帰した“Top Gun: Maverick”も記憶に新しい、信念で駆け抜けた銀幕男の一代記。
20代時のケヴィン・ベーコンやショーン・ペンとの楽屋映像など見処大漁。
1人称ナレを担当した息子との交接も和める。
"Val" https://twitter.com/pherim/status/1737673108621066343
『トップガン マーヴェリック』https://twitter.com/pherim/status/1574600371343101952
『フォルス・ポジティブ』“False Positive”A24
不妊治療に成功しすぎて三つ子を孕み、母子安全のため男2か女1の堕胎を迫られる女性。
夫と名医への疑念高まりゆくマタニティホラーで、キャリア上でも妊娠をポリコレ的に活かす展開も面白い。 皆少しずつ狂ってる世界観好き。
"False Positive" https://twitter.com/pherim/status/1738140518276854215
『マザーズ』https://twitter.com/pherim/status/1499223885211844609
『あのこと』“L'événement”https://twitter.com/pherim/status/1597431406485196800
拙稿「最果ての彼女たち 『17歳の瞳に映る世界』『海辺の彼女たち』」
https://www.kirishin.com/2021/06/13/49370/
『ファニー・ページ』“Funny Pages”
漫画家志望の少年が家を飛び出て、謎の中年男性たちとシェア生活を始めるも七転八倒のビルドゥングス・コメディ。
16mm撮影のザラ目感が、バイト先のカートゥーンショップなど米国サブカル文化への哀愁を引き立てる。脇役も皆濃くて好き。
"Funny Pages" https://twitter.com/pherim/status/1739437701320052990
『アンダー・ザ・シルバーレイク』https://twitter.com/pherim/status/1050755560511918082
『メインストリーム』https://twitter.com/pherim/status/1458369770684780546
『エターナル・ドーター』“The Eternal Daughter”
霧深く隔絶したホテルで過ごす母娘の黄昏。
ティルダ・スウィントン1人2役で、神経質な娘と超然とした母の演じ分けはお見事。音への敏感さに『Memoria メモリア』も想起させる。A24xBBCxスコセッシ製作という強力布陣のジョアンナ・ホッグ監督作。
"The Eternal Daughter" https://twitter.com/pherim/status/1740729744617009272
『MEMORIA メモリア』https://twitter.com/pherim/status/1491968334459404289
『ヒューマン・ボイス』https://twitter.com/pherim/status/1594176906966204417
『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』https://twitter.com/pherim/status/831993758799388673
拙稿「【映画評】 明滅するリアル」https://www.kirishin.com/2022/03/04/53173/
『ザ・ヒューマンズ』“The Humans”A24
感謝祭の夜、和やかな一家団欒の端々に不穏さがむくりと顔を覗かせゆく。NYの古住宅建築が影の主役で、舞台劇を観たような充実感。
スティーヴン・ユァンxビーニー・フェルドスタインの夫婦演技は垂涎過ぎて、2年遅れの日本配給超GJ。
"The Humans" https://twitter.com/pherim/status/1741454682063814976
『バーニング 劇場版』https://twitter.com/pherim/status/1086468613412814848
『NOPE/ノープ』https://twitter.com/pherim/status/1589078673000648704
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』https://twitter.com/pherim/status/1292699235675041794
『レディ・バード』https://twitter.com/pherim/status/1001805966545858560
『アース・ママ』“Earth Mama”
養護施設にいる実子と暮らすため更生教育中の主人公が、お腹の子を里子に出すか悩む。
基調はMoonlight以降のA24味ながら、母として目醒めゆく点や映像の距離感、サンフランシスコの町景などカサブランカ舞台の“ソフィアの願い”も想起され。
"Earth Mama" https://twitter.com/pherim/status/1742497842554605868
『ソフィアの願い』https://twitter.com/pherim/status/1650698531798421505
『オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト』“All Dirt Roads Taste of Salt”
https://twitter.com/pherim/status/1737390585638773243
『ゴッズ・クリーチャー』“God's Creatures” A24
アイルランドの漁村で、義父の介護をしながら牡蠣工場で働く主人公の元へ、家出息子が帰還する。
エミリー・ワトソンが僻村の閉塞感や母の欲望入り混じる複雑な役柄を熱演。小さな嘘が雪ダルマ式に膨れる村八分スリラー。
"God's Creatures" https://twitter.com/pherim/status/1743778623004590438
『波高』https://twitter.com/pherim/status/1202430478160056320
『チェルノブイリ』HBO https://twitter.com/pherim/status/1179709852462960640
『スライス』“Slice” 2018
田舎町でピザ配達員が殺されて始まるホラー・コメディ。
BGM&キャストでストレンジャー・シングス味も出しつつ、基本はトロマ・エンタメ&ブラックスプロイテーションへのオマージュという、A24配給でB級ホラーを作り込む「敢えて」感が諸々楽しい。監督は相当のヲタクだなと。
"Slice" https://twitter.com/pherim/status/1744929780095742166
『悪魔の毒々モンスター』“The Toxic Avenger”https://twitter.com/pherim/status/1266219938886283266
『トロメオ&ジュリエット』https://twitter.com/pherim/status/1290180719331782656
B級ホラー色々 https://twitter.com/pherim/status/1382171398609588232
#A24の知られざる映画たち 特集上映作『スライス』Sliceの小話。
『オッペンハイマー』がゴールデングローブ賞で5冠を獲り注目されたけど、うち作曲賞のルドウィグ・ゴランソン/Ludwig Goranssonが、実は『スライス』で音楽担当。いま劇場鑑賞できちゃったりする奇遇。
“Oppenheimer” https://twitter.com/pherim/status/1703643112411893934
『オッペンハイマー』主演男優賞受賞スピーチ https://twitter.com/pherim/status/1744280557943652736
余談。『ロー・タイド』と『スライス』以外の9作は、すべて2021年以降の作品です。そうみるといずれもコロナ禍の時代感を纏う作品たちにも思えてくる。
もうひとつの観点は、昨今「A24」というだけで注目を浴びる製作配給会社の良作でさえ、日本ではかように一般上映されにくいことがよく可視化されたこと。観れない作品はそも宣伝さえされず、つまり日本語情報になる機会さえないためふだんは視界に入らない。でもたった一社の作品でさえ、これだけ日本では観られない状態が昔からずっとあるんですよ、という。
とはいえアメリカ映画ですからね、非英語圏映画となればそれはもう。言語の壁をAIが乗り越えても、この状態はなお残りつづける。それは一方で、未到来映画の探索という楽しみが残りつづける、ということでもあるのだけれど。人生有限ですからね、とんでもない映画にはやはりなるべく出逢っていきたいとは望みます。
なお今回扱った作品は、すべて2024年1⽉26⽇(⾦)よりU-NEXTにて配信も始まります。
U-NEXTは映画に関して、これまで邦画の強さでのしてきましたが、この1,2年で海外映画にもかなり強くなったのは嬉しい驚きでした。観るものすべてが海外プラットフォームというのも、心情的にはなかなか微妙でしたしね。
というわけで、2023年のふぃるめもは以上になります。
ことしもお世話になりました。みなさまよいお年を~!(/・ω・)/
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh