pherim

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pherimさんの日記

(Web全体に公開)

2023年
12月29日
18:25

ふぃるめも291 囚われの神と狂騒時代

 
 

 今回は、12月22日~29日の日本上映開始作など、10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第291弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)

 

■12月22日公開作

『PERFECT DAYS』

いい映画を観た満足感しか。
ヴィム・ヴェンダース新作は、時間と音楽の濃厚な豊醇作。役所広司演じる公衆トイレ清掃人が、市井の哲人と化し東京の今を質実に映しだす。
田中泯の端役はベルリン天使だし、夜の首都高で“パリ、テキサス”&“東京画”を更新する衰えなき膂力に震撼。

"PERFECT DAYS" https://twitter.com/pherim/status/1716408130580648080

『世界の涯ての鼓動』https://twitter.com/pherim/status/1154990468775567361
拙稿「【映画評】ヴェンダース『世界の涯ての鼓動」http://www.kirishin.com/2019/07/30/27641/

拙稿「【映画評】 ヴェンダースの冒険 『PERFECT DAYS』『アンゼルム』」
https://www.kirishin.com/2023/12/22/63913/





『ファースト・カウ』
西部開拓時代のオレゴンで、一攫千金を夢みる料理人と中国系移民が意気投合、当地では稀少な牛から乳を盗み絞って菓子商いに挑戦する。
ケリー・ライカートが西部劇を撮るとこうなるんだ、って嬉しくなるやつ。至宝の甘さと友情と資本主義の簒奪性。

"First Cow" https://twitter.com/pherim/status/1737626666216956214

『リバー・オブ・グラス』https://twitter.com/pherim/status/1441027143895449610
『ショーイング・アップ』https://twitter.com/pherim/status/1736568980691890446
『カラミティ』 “Calamity”https://twitter.com/pherim/status/1438332715376406529
『ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険』https://twitter.com/pherim/status/1529433480110964736





『阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人』
シベリアの民間人抑留者を描く日本+カザフスタン合作。
舞台のステップ草原や大戦時再現セットが見応えあり。カザフ側俳優陣の出色演技に対し、非専業役者を揃える日本側の座組はひたすら惜しい。残留邦人に樺太出身者が多い史実はもっと知られて良いですね。

"" https://twitter.com/pherim/status/1738446689269416348

『イエローキャット』https://twitter.com/pherim/status/1338690945903075333
“I Won’t Come Back” https://twitter.com/pherim/status/1252435075779575808
『オルジャスの白い馬』https://twitter.com/pherim/status/1216621427131998208





『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』
樺太で虜囚となりカザフスタンへ移送された少年の道行き。
「サムライ!」と少年を呼ぶ好々爺演じるキルギスの名優アクタン・アリム・クバト(馬を放つ/父は憶えている)、奔放に演技を楽しんでいる様が大変好ましく、観る甲斐あった。

"" https://twitter.com/pherim/status/1740908284738224602

『馬を放つ』https://twitter.com/pherim/status/974567944469454849
『父は憶えている』“Эсимде” https://twitter.com/pherim/status/1728639795164049866

拙稿「【映画評】草原で十字を書き入れること」https://www.kirishin.com/2018/03/31/11839/





『神の道化師、フランチェスコ』1950デジタル・リマスター版
ロベルト・ロッセリーニ監督&フェデリコ・フェリーニ脚本で描かれる、踏みつけられても明るく歩みつづけるアッシジの聖人フランチェスコとその弟子達。
中盤の異様な煉獄行のあと訪れる一瞬の煌めきに『ローマで夜だった』も想起され。

"Francesco, giullare di Dio" "The Flowers of St. Francis" https://twitter.com/pherim/status/1737959162724946087

『自由は何処に』 1952 https://twitter.com/pherim/status/1463340812075356171
『ローマで夜だった』1960 https://twitter.com/pherim/status/1464563277267042311
『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』https://twitter.com/pherim/status/1336137147112325120





■12月29日公開作

『アンブッシュ』“The Ambush”

イエメン紛争下、峡谷でゲリラの待ち伏せに遭い孤立した同胞を救い出すべく奮闘するアラブ首長国連邦軍の兵士達。
『96時間』のP.モレル監督作で、ブラックホークダウンのUAE版焼き直しプロパガンダながら、映像の迫力と敵味方ともムスリム兵である新機軸は評価できる。地雷もRPGも耐える最新鋭装甲車の頑丈さに驚愕。

"Al Kameen" "The Ambush" https://twitter.com/pherim/status/1739480976722710938

『ブラックホークダウン』と正義 https://twitter.com/pherim/status/14956308159
『ローン・サバイバー』https://twitter.com/pherim/status/430998360737058816
『モガディシュ 脱出までの14日間』https://twitter.com/pherim/status/1541029970817888256





『NOCEBO/ノセボ』
脚光を浴びるファッションデザイナーが、巨大ダニに寄生された病犬に襲われる幻から始まるスリラー。
妖しげな民間療法により主人公を癒やすフィリピン人家政婦の下地に、現代資本主義の搾取構造を敷く仕立ての妙。北欧ホラー特有の昏さを醸す、瀟洒なダブリン私邸の意匠も良い。

"Nocebo" https://twitter.com/pherim/status/1740573428149797321

『グリード ファストファッション帝国の真実』https://twitter.com/pherim/status/1405367449613004805
『コンビニエンスストア』https://twitter.com/pherim/status/1604477165432541186





『ラ・メゾン 小説家と娼婦』“La maison”
作家としての好奇心と野心から娼婦の世界へ入り、地獄を知りボロボロになりながら見いだすリアル。プライドもつ同僚たちの描写が良い。
娼婦やAV女優から作家へなるパターンとは逆の、周囲の心配もよそに目的を貫徹する実話ベースである点が多くを考えさせる。

"La maison/The House" https://twitter.com/pherim/status/1740190919281049806

『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』https://twitter.com/pherim/status/920662015055618049
『ラブ・ストーリー・ノット』https://twitter.com/pherim/status/962491929576456194
『彼女の生きる道』“Une Femme du Monde” https://twitter.com/pherim/status/1560100933014818816





『ブルーバック あの海を見ていた』
海洋生物学者アビーが、老母を世話するため海辺の町へ帰郷する。
この海を守るために下す少女の決断。幼馴染らと過ごす穏やかな時間が、巨大魚“Blueback”との悲しい記憶を蘇らせる。
エリック・バナが地元漁師を演じるなど、豪州映画の厚みを感じさせる一作。

"BLUEBACK" https://twitter.com/pherim/status/1740527529776345222

『シー・イズ・オーシャン』https://twitter.com/pherim/status/1431960521083789323
『モアナと伝説の海』ポリネシア航法 https://twitter.com/pherim/status/805399342878101504
有明海洋上、群れ待ちの凪 https://twitter.com/pherim/status/1525632589909807104




 
■日本公開中作品

『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』

“違い”とは特別であること。
誰もがフリーク。 美は至るところにある。
ゴルチエ企画演出“Fashion Freak Show”の舞台制作を背景に、本人が来し方を語る。
ドヌーヴ/マドンナ/マリオン・コティヤールら豪華出演陣と奇抜な衣装群がひたすら眩しい。

"Jean Paul Gaultier: Freak and Chic" https://twitter.com/pherim/status/1740190919281049806

ゴルチエ出演『マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ”』https://twitter.com/pherim/status/1436902233497497605
『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』https://twitter.com/pherim/status/955965016447963136
『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』https://twitter.com/pherim/status/1076680088538628096
『マックイーン:モードの反逆児』https://twitter.com/pherim/status/1111205751467331584
『メットガラ』https://twitter.com/pherim/status/851666862895022080

『オートクチュール』https://twitter.com/pherim/status/1506241261744771077
『サイゴン・クチュール』https://twitter.com/pherim/status/1207127440419479553






 余談。『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』は2018年作。前回扱った『王国(あるいはその家について)』も2018年作。どちらも2023年後半にようやく一般劇場公開へ漕ぎ着けたけど、数年単位で公開が遅れた多くの映画がそうであるようなコロナ禍主因《でない》点が共通する。前者はその後頻発した映画業界パワハラ騒動の走りがそれであり、後者は端的に作品が物凄すぎて配給会社が物怖じした(んだとおもう)から。

 いずれにせよ、配給権を買った側の事情でお蔵入りとか最悪だし、『王国』みたいに本当に良い作品が国内で広く観られる機会さえ奪われてきた事態に極小レベルとはいえ区切りがついたのはまぁ良かった。フランスじゃぁ『王国』を国立機関が無料配信してたんだから。映画について言えばもうとっくにね、日本はかように心底貧しかったのですいつからか。





おしまい。
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