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　今回は、第38回東京国際映画祭(2025年10月27日～11月5日開催) コンペティション部門、アジアの未来部門およびオープニング上映作から10作品を扱います。(再掲1作)
　　
　※再掲作分の調整は10－12月ふぃるめもの配信ドラマ/アニメ扱いにて。

　タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめです。強烈オススメは緑、超絶オススメは青で太字強調しています。（2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。）


　
■コンペティション
　https://2025.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...

『マザー』Mother
マザー・テレサをノオミ・ラパスが烈演する。
“神の愛の宣教者会”の教皇庁認可を受け、コルカタでの活動を軌道に乗せるまでの葛藤と超克の歩み。
指先まで張り詰めた仕草、信仰と懐疑と狂気の縁でギリギリ己を保つ表情に慄える。白と青のサリー修道服が誕生する瞬間は感動的。

"Mother" https://x.com/pherim/status/1983723289584549928

マザー・テレサに会いに行きました+黒い噂をめぐって: https://x.com/pherim/status/1155618811317387266
『タゴール・ソングス』https://x.com/pherim/status/1247356672273575937
拙稿「ベンガルの大地は歌う　『タゴール・ソングス』」https://www.kirishin.com/2020/07/09/44017/
※↑コルカタ・マザーテレサの活動に触れています。




『アトロピア』Atropia
米軍派兵先の環境を再現した架空都市で、住民を演じる移民歴ある役者と訓練する新兵、訪れるハリウッド俳優ら。
各々の真剣さが総体として醸す滑稽ぶりと、Warfareなど映画撮影もされるその実在こそ批評的な秀作ブラックコメディ。
チャニング・テイタムが底抜けに笑える。

"Atropia"

『ウォーフェア 戦地最前線』Warfare A24 https://x.com/pherim/status/1984778475044258075
『DAU. ナターシャ』https://x.com/pherim/status/1374932601790603267




『パレスチナ36』Palestine 36
1936年のパレスチナでユダヤ人の大量入植を受け、互いに宥和的であった人々の心情から民族的アイデンティティが芽生えだす。
TIFFグランプリも納得の、緻密にして明解な秀逸構成。秀作“No Other Land”↓への、ナクバを超え現代史全体へ射程を拡げた応答作とも。

"Palestine 36" https://x.com/pherim/status/1990993633890189701

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』https://x.com/pherim/status/1890228872748363963
『エドワード・サイード OUT OF PLACE』4K https://x.com/pherim/status/1792752395958751243
イスラーム映画祭9全作スレッド https://x.com/pherim/status/1767929673651212573




『雌鶏』Kota
養鶏場生まれの雌鶏が、檻から逃れて始まる大冒険。
鶏なりのロマンス多角関係から、EU移民問題まで予想外の要素を続々巻き込む展開は意外性あり飽きさせない。
その一方、実写による動物目線の映画が成立しにくい感性変容の潮流にも気づかされる。

"Hen" "Kota" https://x.com/pherim/status/1991855884616777854

『ファイナル・カット』https://x.com/pherim/status/1275014930618445824

『白い馬 4K』https://x.com/pherim/status/1988952704660775055
『GUNDA グンダ』https://x.com/pherim/status/1467478395663847425
『ガザを飛ぶブタ』 2010 https://x.com/pherim/status/1649636343277035520
『ペペ』“Pepe” https://x.com/pherim/status/1858009586470629596
『牛』https://x.com/pherim/status/1454791119078715393
『乳牛たちのインティファーダ』https://x.com/pherim/status/1112908220522065920




『虚空の説教』Boşluğa Xütbə
沙漠と密林、光と真実。
ヒラル・バイダロフ、その動じなさに今年も眩暈する。
鳥の希求と魚象る預言者を経て、溶岩流放つ無量の煌めきが映ね返す。藝術は自由にする。愛こそわが教師、他は全て教え子。この森で存在が私する。ただそれだけ。

"Boşluğa Xütbə／ Sermon to the Void" https://x.com/pherim/status/1989320147325395073

『鳥たちへの説教』“Quşlara Xütbə” https://x.com/pherim/status/1813782243602829780
『クレーン・ランタン』https://x.com/pherim/status/1607210503297970184
『死ぬ間際』“In Between Dying” https://x.com/pherim/status/1343369674998759424

ゴダール『イメージの本』https://x.com/pherim/status/1121260363889037312
レオス・カラックス『It’s Not Me イッツ・ノット・ミー』C’est pas Moi https://x.com/pherim/status/1915395960051769568




『死のキッチン』ครัวสาว Morte Cucina
タイ料理場面の旨さ度MAX、食を通じ男へ復讐するペンエーグ・ラッタナルアーン監督作たのしい。
浅野忠信＆撮影クリストファー・ドイルら常連化や、ハンガー脚本家参加嬉しす。タイ食文化の鍵である温寒分類の解説などお見事。

"ครัวสาว" "Morte Cucina" https://x.com/pherim/status/1985140421249622036

『ハンガー：飽くなき食への道』“คนหิว เกมกระหาย” https://x.com/pherim/status/1677156218396348416
『愛のスープ』(รักนะ ซุปซุป) https://x.com/pherim/status/1493594909739487236
『時の解剖学』(เวลา/Anatomy of Time) https://x.com/pherim/status/1459498957151686656
『Motel Mist』https://x.com/pherim/status/814292708793552896




■アジアの未来
　https://2025.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
　
『佐藤忠男、映画の旅』
稀代のアジア映画紹介者にして、日本映画大学初代学長の評論家と、その妻/佐藤久子の遥かな旅路。
アジアフォーカス福岡国際映画祭の伝説的な影響力の広がりにも見入る。ハリウッド映画とかとは全く違う、他で観る機会なき映画達を観せてくれる謎の老紳士、でした。二十歳前後の私にとって。

"Journey Into SATO TADAO" https://x.com/pherim/status/1981934075909992675

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』https://x.com/pherim/status/1748174722851098704




『老人と車』老破車
カナダの不仲な息子宅へ身を寄せるため、誇りにしてきたベンツの売却を決めるが。
80年代から活躍し、エリック・クー長編第1作ミーポック・マン↓にも出演するLim Kay Tong/林祺堂を主演に迎え、躊躇や惑いの生む回想が街の歩みと自然に重なる質実作。

"老破車／The Old Man and His Car" https://x.com/pherim/status/1990660160470343877

『ミーポック・マン』https://x.com/pherim/status/1147378114315444224
『セブンレターズ』https://x.com/pherim/status/902680572866183168
『家族のレシピ』https://x.com/pherim/status/1102046949702696960




『光輪』Halo
若年ワーキングプアー描く、韓流宅配青年残酷物語。
Amazon式に収奪される時間感覚、剥ぎ取られる生活実感。不意に抱かれる夢さえ直ちに社会へ絡め取られ、搾取の新たな糧となる。“あしたの少女”の怒りに震えるペ・ドゥナのいないその酷薄と迫真の強度。

"후광" "Halo" https://x.com/pherim/status/1983369117857173855

『あしたの少女』“Next Sohee” https://x.com/pherim/status/1695049698334376024
『私の少女』A Girl at My Door 2014 https://x.com/pherim/status/1876458922070155446

『家族を想うとき』https://x.com/pherim/status/1219996184581816320
『わたしは、ダニエル・ブレイク』https://x.com/pherim/status/841910293903081472




■オープニング作品
　https://2025.tiff-jp.net/ja/lineup/film/38000TOC01
　
『てっぺんの向こうにあなたがいる』
1975年に女性初のエベレスト登頂を記録した田部井淳子をモデルとする、阪本順治監督新作。
吉永小百合+佐藤浩市のガンと闘う夫婦演技を、天海祐希/和田光沙/木村文乃らが支える。
のん/若葉竜也/円井わんら若手演技派参加も嬉しい。

"Climbing for Life" https://x.com/pherim/status/1982431716620038223

『半世界』https://x.com/pherim/status/1094526964944097281
『ジョーのあした－辰吉丈一郎との20年－』https://x.com/pherim/status/699015017501368320

『イーディ、83歳　はじめての山登り』https://x.com/pherim/status/1219842125568692224
『帰れない山』“Le otto montagne” https://x.com/pherim/status/1654022239753478146
『ある一生』https://x.com/pherim/status/1926611293978394974
『神々の山嶺』https://x.com/pherim/status/1544500445519171584
“Blutch” https://x.com/pherim/status/1477135171363217414
『雪解けのあと』https://x.com/pherim/status/1933499792560460121
“Constans”https://x.com/pherim/status/1827903957483827349
『エベレスト3D』https://x.com/pherim/status/657057426110181376

ヒマラヤ馬旅ツイ https://x.com/pherim/status/1043474120095059969



　

　余談。第38回東京国際映画祭2025、極私ベスト10です。

　トンネル：暗闇の中の太陽
　She Has No Name
　虚空への説教
　Mishima: A Life in Four Chapters
　ハムネット
　木々の隙間
　ハッピー・バースデイ
　マザー
　死のキッチン
　パレスチナ36

　次点:佐藤さんと佐藤さん/April/マスターマインド/雌鶏
　(34作+α鑑賞)


　今年のTIFFグランプリは『パレスチナ36』へ。政治性のなさは「国際」がつく日本の芸術祭企画の恒例でTIFFも例に漏れずだけれど、今回はどうなんだろう。良作揃いとはいえ小粒感も否めず、消去法的に残った偶然もあり得るなと。とはいえ最優秀監督賞『裏か表か？』＆『春の木』観れず。今年は主に描画事情から鑑賞本数を激減させたため、どちらも迷ったやつ。まぁ仕方なし。





おしまい。
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