pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2017年
07月02日
16:23

ふぃるめも66 裁きの愛

  


 今回は6月末~7月上旬の日本公開作を中心に。



 タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第66弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)




■6月24日公開作

『ハイヒール こだわりが生んだおとぎ話』

菊地凛子主演短編。一見した奇抜さと細部の充溢が同居する衣装に感心、鑑賞後シャネル特別協力と知る。冒頭アニメや美術の素晴らしい耽美系小品。アンドロイド化した人間に欲望復活のバグ発生、という物語自体が美の下僕と化す世界。玄理他3色娘の冷温美。





『ありがとう、トニ・エルドマン』
お騒がせな父親に翻弄されるキャリアウーマンの娘、という構図がだらだら続くのを眺めるうちに、お?、おおお、お~、となって着地する素敵コメディ。《だらだら》が意図された抑制だと気づく時、現代人の日常への諷刺の鋭さに震撼する。本物の心優しさと不器用さ。

"Toni Erdmann" https://x.com/pherim/status/867640917800370176

『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』https://twitter.com/pherim/status/1481614277283020801
『ミュンヘン: 戦火燃ゆる前に』https://x.com/pherim/status/1554802372236681218





『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』
父王を毒殺され、自身は旧対馬藩主の宗伯爵家に嫁がされた皇女の生涯。大戦後なお動乱相次ぐ本国から忘れ去られ、かの松沢病院の閉鎖病棟に捨て置かれて16年を生きた事実が凄まじい。李朝下のエリート軍人役パク・ヘイルと侍女役ラ・ミランの熱演見事。





『ハクソー・リッジ』
戦争映画の極北がまた一つ。メル・ギブソンが太平洋戦争を撮ればこうなるという期待値を完璧に充たす本作は、凄惨な戦渦のただなかで信仰を貫く男の姿影を描く。過去のあらゆる傑作戦争映画からの援用を盛り込み、『パッション』を超える血と肉の騒擾がひたすら舞う。


  試写メモ27 「煉獄の召命」: http://tokinoma.pne.jp/diary/2264




■7月1日公開作

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』

東インド会社ギミックや、海賊島トルトゥーガ描写も地味に嬉しかった海洋冒険連作。その第5弾も敵役にハビエル・バルデムを迎え期待裏切らず。帆船・海戦クラスタにもお奨め、スペイン正規海軍船vs若きジャック・スパロウ操る海賊船の岩礁戦あるよ。





『しあわせな人生の選択』
末期癌に冒されたマドリードに暮らす主人公を見舞うため、カナダから訪れた親友と過ごす4日間。親友の助けを借りて家族関係、愛犬の里親探し、自らの葬儀とこつこつ課題を片づけてゆく描写の、余命物にありがちな湿っぽさとは対極の渇いた軽さと、老犬の瞳が物言う快作





■7月8日公開作

『裁き』

ムンバイの老いた民謡歌手が、反社会的な歌詞により下水清掃夫の自殺を煽ったと告訴される。裕福な人権派弁護士、生真面目な検事、理性的な判事の誰の悪意も介在せず構造的に働くカースト差別の異様。因習が近代制度に憑依する。黒澤明『生きる』初見時のような粘着性の質実さを感じる名作。





『ライフ』
真田広之&ジェイク・ギレンホール堪能の宇宙ホラー。『エイリアン』風の対異星生物アクションを『ゼロ・グラビティ』のリアル無重力テイストで描く閉鎖空間物。娯楽大作の3D表現は、既にVR体験型実装の準備段階に入っていることを実感。そうなれば本作の描く恐怖は半端なくなるとも。


 開幕10分動画: ttps://




■日本・香港インディペンデント映画祭2017@新宿(ふぃるめも61)・追記
  https://jphkindie.wixsite.com/2017

『下衆の愛』
舞台裏の人間たちがゲスいのはフレームに切りとられた現実以外に関心がないからで、互いに関心がない者同士の集うそこではクズ手こそ上策という世界に溢れる愛、それを映画愛というのです、という物語。主演の渋川清彦、岡野真也から端役まで各々に見せ場がある、俳優愛にも充ちた一作。





■日本公開未定作

『陽の当たる町』

グルジアの炭鉱都市チアトゥラ。閉鎖間近の炭鉱では小規模の掘削が淡々と続き、少数の住民が廃墟化した町になお暮らす。これらの総体がソ連の遺構であり、迫る忘却の予感も色濃い枯れた町並みを、冷戦時の国家支援を失い困窮した女子選手が走り抜ける。その光景の不思議な静けさ。







 余談。『陽の当たる町』のYoutube予告動画(↑)、とても良いです。台詞もなくシンプルだけれど、本編の醸す静謐の内に張りつめる幽かな緊張をよく伝えています。『陽の当たる町』監督へのインタビュー動画も発見。

 『陽の当たる町』監督小話: (英語)

 三年半のグルジア滞在における日々の偶発性を重視した等々。
 文化人類学者のフィールドワークのようなスタンスで映画を撮る。
 良いスタイルだなぁと憧れます。






おしまい。
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