今回は、9月末~10月前半の日本公開作を中心に。
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第73弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
※なお、《ふぃるめも》記事のみ[Web全体に公開]にしています。コメント書き込みの際はご注意くださいませ~。(“いいね”は外から見えません)
■9月29日公開作
『ドリーム』
NASAの成否がアメリカの国運を左右し、電算より手計算が信用された時代を駆け抜ける3人の黒人女性。毎朝ポンコツのアメ車で一緒に通勤する彼女達が、人種差別と女性蔑視の根強い職場で各々孤軍奮闘し自分を認めさせていく果てに打ち上がるロケットの爽快。手に汗握らせる良娯楽作。
『ドリーム』、脇道的に少し面白かったのは、ジェンダーが主要テーマのこの作品でも「男としてカッコいい」シーンは全部持ってくケビン・コスナー節の安定ぶり。有能すぎ男前すぎな彼とのバランスをとるべく、直属の部下男性を過度に無能なヒールとせざるを得ない可笑しさに、壮年ケビンの切なみすら。
■9月30日公開作
『ブルーム・オブ・イエスタディ』
ホロコーストの被害者と加害者の孫が惹かれ合う、ナチス物には珍しく未来を向いたラヴコメディ。すべてを受け入れ爆進する主人公ザジの力強さが、過去の呪縛から今を解き放つ。南ドイツからウィーンをへてラトビアへ向かう後半のロードムービー展開も爽やかな快作。
『ブルーム・オブ・イエスタディ』はきょう9月30日公開。ユダヤ人の女子大学院生ザジを演じるアデル・エネル、ダルデンヌ兄弟の近作
『午後8時の訪問者』での冷静沈着で職務に忠実な女医役とは真逆の、情熱的で無鉄砲な役柄を好演しています。
『午後8時の訪問者』: https://twitter.com/pherim/status/849871264109830145
『ソウル・ステーション/パンデミック』
『新感染 ファイナル・エクスプレス』監督ヨン・サンホによる同作の前日譚。元来アニメで腕を磨いてきた監督の本領発揮作。ゾンビを扱いながらも、軍政の記憶や格差社会化など現代韓国の諸問題を背景に置く社会派シリアス展開。孤立感際立つ終盤描写の妙。
『ソウル・ステーション/パンデミック』の日本公開から一ヶ月を待たず、ヨン・サンホ監督によるアニメ怪作
『我は神なり』も公開。この両作品を観ると、同監督作『新感染 ファイナル・エクスプレス』の次に来る作品へのダークな期待も一層高まります。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』: https://twitter.com/pherim/status/786341594966351872
『エタニティ 永遠の花たちへ』
19世紀末に始まる、フランス上流階級を生きる女三代の生涯。幼少期ベトナムからパリへ逃れたトラン・アン・ユンの撮りたい「フランス」が凝縮され、連環する人生のゆりかごとなった眼福作。名優達の競演は拮抗して個々の物語が後景へと退き、色彩が前景へ踊りだす。
『エタニティ 永遠の花たちへ』は、9月30日公開。並みいる名女優達の演出への不満も話題となりましたが、主役は時間なのですね。本作のトラン・アン・ユンにとって役者は光景の色彩をなす要素であり、完璧な造形こそ至上となる。観ればわかります。
(女優達の不満→ https://movie.smt.docomo.ne.jp/article/1083073/ )
■10月7日
『愛を綴る女』
マリオン・コティヤール生涯代表作の一(確信。これほど肉感豊かな女優だったかと刮目の演技は反面痛切で狂おしく、薄明かり続く中盤から急展開をへて差し込む光の温もり描写は秀逸。彼女の主演のため5年待った監督ニコール・ガルシア執念の映像は、全編が艶やかで妖しい甘美の氾濫。
■10月14日公開作
『立ち去った女』
フィリピン怪作。物言わぬ怒りの貫徹、貧者の誇り。228分の長尺にまったき必然を感じてやまない破格のラヴ・ディアス監督作。これこそが観客席の暗がりで浸りたかった時間の表現、味わいたかった律動なのだと知る体験。モノクロームの鮮烈が、人の抱える二面性を一層際立たせる。
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
アイリーン・グレイ設計の邸宅《E.1027》をめぐりコルビュジエの起こした醜聞「壁画事件」を描く。コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」の直線性と、彼が見せた愛憎の毒々しさとの鋭い対照に慄く。二人の家具も多く登場しファンには垂涎の一作。
ル・コルビュジエ関連の映画だと、
『笑う故郷』(ふぃるめも72)の監督タッグによる前作
『ル・コルビュジエの家』も良作です。こちらは南米唯一のコルビュジエ住宅を舞台としたコメディで、抽象性の研ぎ澄まされた現代建築と生活のリアルとの衝突が終始笑えます。
(『ル・コルビュジエの家』は現在Netflixで鑑賞可能です)
『笑う故郷』: https://twitter.com/pherim/status/907435460741390336
『あなた、そこにいてくれますか』
韓流タイムスリップ物ラヴロマンス。ヒロイン役チェ・ソジンの瑞々しさが素晴らしく、主役キム・ユンソク&ピョン・ヨハン安定、三枚目脇役キム・サンホ&アン・セハいぶし銀。「あの時ああしておけば」をうまく娯楽作に仕上げた、韓流が苦手な人にもお奨めの一作。
■日本公開未定作
『スナップ』
タイ映画。同級生の結婚式で、カメラマンとなった初恋相手の青年と再会し、婚約者がいながら動揺する女性プン。卒業校や水族館が舞台となり、青年と寡黙な父が交錯したりとベタさも目立つが野暮さはなく、穏やかに切なく余韻も深い。色や光の淡さがやがてひと筋の流れを生む恋愛物良作。
日本国内でも映画祭上映は幾度かされています。とても良い作品ですが、一般ロードショーの予定はないようですね。
■フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在@アンスティチュ・フランセ東京
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinem...
『私は黒人』
植民地末期のアビジャンで暮らす若者たちをいきいきと切りとる、ジャン・ルーシュ1958年作。恋にダンスに熱中する彼らの日常活写と、アフレコによる青年のナレーションとの絶妙な呼応が全編を躍動させる。語られる光景の奥底より溢れ来る生の瀑布に眩暈する。熱狂と境界の相互還流。
余談。
国連UNHCR難民映画祭2017、きょうから東京、札幌、名古屋、大阪、福岡、広島にて開催されます。
国連UNHCR難民映画祭2017公式HP: http://unhcr.refugeefilm.org/2017/
ぼくは全作鑑賞予定です。随時ツイートし、次回ふぃるめもにてまとめます。あときょうは午後、上映作のひとつアキ・カウリスマキ新作『希望のかなた』の主演俳優で、シリア出身のシェルワン・ハジへの取材も行って来ます。こちらも後日、試写メモ記事を挙げる予定です。
上映作の幾つかは、今後の全国ロードショー予定もすでにあるようです。
大阪、福岡、広島については一般申し込みもまだ行っているので、ご興味を惹かれたかたはぜひ。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
10月01日
02:14
1: asuteka
ドリーム、気になってます!
10月01日
22:15
2: pherim㌠
夢だけど夢じゃなかった!!
10月01日
23:18
3: biniyaminit
ブルーム・オブ・イエスタデイ見ました。あるある感がひしひしと。あえてニュートラルにしたい時に英語使うシチュエーションとかも。元気出ました。
10月02日
03:37
4: pherim㌠
元気が一番なのよ~! Hustle free よ~!