今回は、2月末~3月初旬の日本公開作を中心に11作品を扱います。
(含短編1+再掲1作)
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第83弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■2月23日公開作
『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』
むしろソフィア・コッポラがめざめた感。従来のガーリッシュ風味だけでも観るに値したけれど、本作は
『ロスト・イン・トランスレーション』以来の更新感あり良い意味で裏切られた。衣装美術のこだわりに加え、屋敷の全貌映さないなど演出全般に老練さすら。
『ビッグ・シック』
シカゴで暮らすパキスタン系移民2世のコメディアンが、白人の恋人とムスリム家庭の因習とに挟まれ苦悶する内、恋人が難病に冒される。実話ベースで本人が脚本を書いて演じた異色作。Uberなどギミックも興味深く、すぐにテロリスト扱いされる風潮を戯画化する術も巧みな愉快痛快作。
"The Big Sick"のヒロイン女優、あまり見覚えがなく地味目だけれど不思議と光るものを感じるなと検索したら、ゾーイ・カザン(Zoe Kazan)という名で、なんとエリア・カザンの孫娘でした。マッカーシズムの暴風に苦しんだ巨匠を祖父にもつと知ると、この役柄への気概を一層看取したりも。
それでエリア・カザンのwikipedia出生地項に、トルコ国旗の赤字に白月星を見かけて「おっ」と。オスマン帝国下のイスタンブール生まれだったんですね。(ギリシャ系ゆえ本人的にはコンスタンティノープルかもだけど) ユダヤ文脈で語られがちな米映画産業の経路多様性とか。
先週日本公開の『ビッグ・シック』("The Big Sick")、主演女優ゾーイ・カザン(Zoe Kazan)と祖父エリア・カザンをめぐる連ツイを紐づけておきます。昨秋バンコクにて本作鑑賞後のもので、ゾーイにまつわる興味深いリプも頂いてます。ご興味あればご笑覧くださいませ。
→https://twitter.com/pherim/status/935330625430552576
■2月24日公開作
『ザ・シークレットマン』
ウォーターゲート事件の鍵を握った内部告発者"ディープスロート"=FBI副長官を主人公とするサスペンス大作。近年はB級アクション主演も続いたリーアム・ニーソン、正直期待値低めだったけど久々に全編シビれた。大統領すらFBIを恐れる理由の説明描写にも感心。
『ナチュラルウーマン』
チリ発LGBT映画。恋人の突然死により予期せぬ差別や偏見に直面する主人公を、自身トランスジェンダーの歌姫ダニエラ・ベガが熱演。耐えに耐えたあと訪れるクライマックスでの感情爆発に、演技を超えた言絶の凄味を覚え心中のけぞる。マジックリアリズム的画作りの冴える一作。
■3月1日公開作
『シェイプ・オブ・ウォーター』
人魚男と声を失った女性との恋を描く、ギレルモ・デル・トロ新作に圧倒される。核競争の恐怖に支配された1960年代の風潮を背景に、ゲイや障害者など強い抑圧下に置かれた人物群を配する物語の秀逸さ、レトロフューチャー極める美術の巧緻、水の質感表現など全てに陶酔。
『シェイプ・オブ・ウォーター』は、前世紀末ネオクラシック劇場建築の枯色や、研究所配管類のむき出しの重量感やガラスモザイク壁の鈍い照り返しなど、本当にありがとうという言葉しかない。デル・トロが本作の為
『パシフィック・リム 2』監督を降板したとのエピソードも深く頷ける眼福愉悦の珠玉作。
『ブラックパンサー』
マルコムX~黒人ポップカルチャーに仮託する出だしの社会派っぽさは
『パニッシャー』を想わせ、実社会中低層との接続を巡るマーベル流の基本路線を踏襲。超先進国ワカンダのヴィジュアルや肉弾主体の格闘など作り込みが良く、仇敵キャラの造形や黒人有名俳優揃い踏みの様も圧巻。
『15時17分、パリ行き』
クリント・イーストウッド監督新作は、映画におけるリアリティー探求の極北。高速列車で爆弾テロ犯と居合わせた若者3人の行動を、出演者に本人達を起用し再現。3人の来し方へと紐づけることで、格闘場面がより生々しく血肉化。英雄は凡庸な各人の内に潜在するという熱い一作。
『15時17分、パリ行き』、事前の周辺情報取得を避ける習慣から、実は事件当事者の演技と知らずに試写を観た。けれど《演技できていなさ》が生むずっしりとした存在感が不思議だった。エンドロールでその可能性に気づき、事後的にこれは傑作なのではと思う。という珍しい体験だった。
■3月3日公開作
『ハッピーエンド』
英仏海峡の港町カレーを舞台とするミヒャエル・ハネケ新作は、家族の不条理と社会の歪さをシームレスに接続させる。今日の欧州社会を揺るがす難民問題の介入により、富裕家族の世代間ギャップを対象化してみせる巧さとか。気づけば老人と少女の絆以外の全てが明るい闇と化す怪作。
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
カナダの港町に暮らした絵描きおばあさんの伝記映画。過去に傷つく不器用で偏屈な二人。互いにかけがえのない存在となっていく夫婦の道のりを、これほど質実に描く映画をあまり記憶しない。サリー・ホーキンス&イーサン・ホークの夫婦演技は憑依級。
■企画上映作:『わたしたちの家』清原惟監督作特別上映@ユーロスペース
http://eurospace.eurolive.jp/works/detail.php?w_id=000235
『ひとつのバガテル』
これは良い団地映画。
『わたしたちの家』の屹立感にはこの前段があったかと納得の、音の触感も鋭い清原惟監督作。室内のひび割れそうな空気感や人物退場時の音無感は強烈に黒沢清を想わせる、けれど藝大院進学前の一作。隣室の暗闇が通じる世界は一様ではないという真実の。
→画像&tweet: https://twitter.com/pherim/status/953956923283456000
『波』
砂浜、岩場、女は駆ける。無音。男は追う。空と海が余白をうずめる。清原惟はこの短編を、役者2人と屋久島へ着いてから、スタッフは使わずひとりで構想を練り撮ったという。(たぶん)平成生まれの監督による、昭和の作品と言われたらそう見えてしまう素朴さと大らかさ。風と波。音の簒奪。
→画像&tweet: https://twitter.com/pherim/status/962100434537209856
余談。
実は今回、国移動時に草稿ファイルを移しそびれ、一部書き直したため更新が遅れました。映画関連以外も移しそびれたため、時間的精神的ロスも大きく。おもう通りに物事は進まないものですね。
おしまい。
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