― 明日の長さは?
― 永遠と一日。
R.I.P. Bruno Ganz
今回は2月後半(2/15~22)の日本上映開始作を中心に、国際交流基金他企画
《ラララ 東南アジア[クラシックス]》上映作など計11作を扱います。(含1テレビ番組)
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第105弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■2月15日公開作
『女王陛下のお気に入り』
新旧の女官がアン女王の寵愛を奪い合う、圧巻の百合物語。私情本位の対決が議会の権謀や国際情勢へ直結する光景の、トランプ的現代への鋭い風刺。レイチェル・ワイズとオリビア・コールマンの老獪演技に震撼し、常在戦場を地でいくエマ・ストーンの気炎にシビれ通しの120分。
"The Favourite" https://twitter.com/pherim/status/1094075924293865472
きのう公開の
『女王陛下のお気に入り』で描かれる通り、アン女王は生んだ子供を次々と17人失い(エマ・ストーン戯れる17匹の兎の挿話)、ステュアート朝最後の君主となる。このステュアート朝同君連合の起点となった女王二人を描くのが
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(日本公開3/15):
https://twitter.com/pherim/status/1096700663013097473
ちなみにレイチェル・ワイズが演じるサラ・ジェニングス[1660-1744]の夫は初代マールバラ公ジョン・チャーチル。そう、あのウィンストン・チャーチルの、そしてかの麗しき王太子妃ダイアナの直系の先祖に当たります。
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』:
https://twitter.com/pherim/status/979540539090485248
『盆唄』
盆踊り歌を鍵とする人間賛歌。江戸期の富山からの移民と、明治期のハワイ王国への移民を“歌の道”によって架橋する手際は見事。声高に訴えるのでも痛切に叫ぶのでもなく福島双葉の今日を描きだす。
『ナビィの恋』の中江裕司監督、歌が風景に溶け込む様を捉える映像は流石だなと。
https://twitter.com/pherim/status/1093871458604863488
『半世界』
元同級生3人が描く軌道の別離と衝突。炭焼く炎を映す稲垣吾郎の瞳の翳り、紛争地の惨劇で硬直した心を宿す長谷川博己の寂しい背中、渋川清彦の醸す不器用な温もり、池脇千鶴の泥臭い感情爆発。国際化と故郷という逆向きの世界軸に引き裂かれる孤独を、颯然と演じ切る面々に喝采の119分。
https://twitter.com/pherim/status/1094526964944097281
『半世界』での稲垣吾郎の役柄は炭焼き職人だけれど、窯へ向かう立ち姿はむしろ芸術家的。それで昔彼がananの『エゴン・シーレ 死と乙女』映画評で「白紙から生み出せる人にはなれない」と語ってたのを思いだした。まぁ『十三人の刺客』のシリアルサイコパス殿様は別格として。
“稲垣吾郎、俳優として自らを分析 今後は「需要のある俳優になりたい」”:
https://www.crank-in.net/interview/62454
実は大昔、稲垣吾郎が画家を演じるドラマで「素描する左利きの腕から先」という出演オファーを貰ったことがある。要は手タレである。題名忘れたけれどフジテレビかな、まだ藝大入学前で十代の頃のこと。お肌もぴちっぴちでしたのよ。(今もぴちぴち)
“稲垣吾郎が19世紀末の画家・クリムトの魅力を発信!”:
https://gunosy.com/articles/RdwPE
きょう公開の
『半世界』、流れで稲垣吾郎についてばかり触れましたが、元自衛官に扮する長谷川博己も秀逸でした。
『シン・ゴジラ』や
『散歩する侵略者』にはない寡黙さは社会の歪みを直に背負うもので、この点アモス・ギタイも昨今の日本映画では稀少と珍しく褒めていました。
アモス・ギタイ with アミール・ナデ at TIFF:
https://twitter.com/pherim/status/1094609839144108034
■2月22日公開作
『サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所』
NYブロンクス舞台の秀作LGBT映画。幾重もの構造的差別に苦しむ黒人ゲイ・コミュニティの依り処として、守旧的価値観の牙城たる教会が断罪ではなく包摂し、生き場を見失った少年の覚醒をむしろ促す。トランスジェンダーの役者達が各々人間味に溢れ魅力的。
"Saturday Church" https://twitter.com/pherim/status/1097860033834962945
『あなたはまだ帰ってこない』
大戦下ナチスに囚われた夫の帰りを待つ、マルグリット・デュラスの自伝的映画。原作「苦悩」の時系列は整理しつつセリフは忠実な構成に感心、さらには空襲警報時の闇と光の転換を心理描写の暗転に活かしたり、夫の描写を省く思い切り、生理に寄り添う音響など演出の冴えが際立つ一作。
"La Douleur" "Memoir of Pain" https://twitter.com/pherim/status/1095887022852427777
あす公開『あなたはまだ帰ってこない』を踏まえ、年末に原作マルグリット・デュラス「苦悩」を地元図書館で借りると、今は存在しない行政市時代の貸出票が付いてきた。昭和60年11月刊行の本書が、初め順調に借り出されるも昭和末から11年書庫に眠っていたのがわかる。河出書房新社より先月新装版発刊。
(画像→https://twitter.com/pherim/status/1098576186098122752)
マルグリット・デュラス「苦悩」(よみめも49): https://tokinoma.pne.jp/diary/3215
『ビール・ストリートの恋人たち』
抑圧下で貧しいながらも誇り高くあろうとする人々へ寄り添う視線の、力強い静けさが臓腑に沁み入る。バリー・ジェンキンス監督前作『ムーンライト』ではやや過剰さも目立った色調補正が緩和され、代わりに美術の造作が繊細となって映像の全体が質実さを増した秀作。
"If Beale Street Could Talk" https://twitter.com/pherim/status/1097325990760464384
『ムーンライト』: https://twitter.com/pherim/status/847029413740871681
■日本公開中作品
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
プリンセス・アベンジャーズの場面、楽しすぎて息を忘れる。ネット視覚化の情報量多すぎな面白さといい、ゲームキャラが人間の経済活動へ軽々と侵犯する物語の巧さといい、喜んでハマってしまうディズニー・アディクトへの一本道な罠快作。余韻の作り方まで感服。
"Ralph Breaks the Internet" https://twitter.com/pherim/status/1090865476924657665
※
『インサイド・ヘッド』『レディ・プレイヤー1』との絡みで後日追記するかも。
『レディ・プレイヤー1』: https://twitter.com/pherim/status/1003488046526840832
■日本公開終了作品
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
最果タヒの同題詩集を秀逸な脚色により映画化。池松壮亮他の台詞回しが不自然と受けとられるリスクを冒しても原詩を活かす演出姿勢に拍手。’17年作だが、石橋静河主演で続く’18年作『きみの鳥はうたえる』『生きてるだけで、愛。』とも響き合う日本映画の粋脈ここにあり。
"The Tokyo Night Sky Is Always the Densest Shade of Blue" https://twitter.com/pherim/status/1095514810458955776
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、昨春アップリンクにて観賞。
『きみの鳥はうたえる』三宅 唱監督新作
『ワイルドツアー』を観て未ツイートなのを思いだした。こういう未ツイ案件は他にもあって、忘れていくならいいけどずっと覚えている気配、陽性腫瘍的な。精神衛生を鑑み今後整理いたす所存。
■ラララ 東南アジア[クラシックス]@アテネ・フランセ文化センター
https://jfac.jp/culture/events/e-crosscut-asia-05-athenee...
『プアンとペーン』
ある農家へ引き取られた孤児が、共に育った美人姉妹の間で揺れる悲恋物語。話の毒々しさも作りの甘さも、ゆるい部分をすべて妹役の底抜けに明るいバイタリティがカバーし名作水準へ押し上げてる。稲刈り歌やナンヤイ(伝統的牛皮影絵)も登場し飽きさせないまま茫然の衝撃ラストへ。
"เพื่อนแพง" "Puen-Paeng" https://twitter.com/pherim/status/1094957662150639617
『プアンとペーン』原題"เพื่อนแพง"(プアンペーン/Puen-Paeng)では姉妹の名が助詞接続詞なく並び、かつ「プアン(เพื่อน)」=「友達」、「ペーン(แพง)」=「(価格/価値が)高い」で物語の根幹へ関わる掛詞になってる。稲刈り歌の場面は『あまねき旋律』を彷彿とさせる大パノラマ。
『あまねき旋律』: https://twitter.com/pherim/status/1048080687822123008
『プアンとペーン』は1983年作。文化保存の対象となる前の熱いナンヤイ上演場面も貴重。物語映画に紛れ込む風俗描写の価値を最近よく考える。70-80sはタイ映画黄金期らしく、たぶん周辺国が次々共産化or独裁化していく緊張感とも関係があり、未見の傑作は多いのだろうなとも。
ポタラム(โพธาราม)滞在記: https://twitter.com/i/moments/1092254802136854528
■日本劇場非公開作品
『ROMA/ローマ』
メキシコのある中流家庭と、住み込み家政婦の日常。そこに覗ける断絶の深淵を当人たちは自覚し得ない。乱反射する水と光がモノクローム画へと封じ込められた本作の核をなすのは、アルフォンソ・キュアロンの前作『ゼロ・グラビティ』から意外にも直結する、存在の全体に対する深い愛だ。
"ROMA" https://twitter.com/pherim/status/1079685378871717890
『ROMA/ローマ』、バンコクでの劇場鑑賞の模様をRT先連ツイにて。帰国日の関係から東京国際映画祭での上映を逃がし、Netflixでの12/14配信開始を心待ちにするうちバンコクでの映画館上映を知り、実際に足を運んで色々思うなど。関連の考察を後日追記します。
→ https://twitter.com/pherim/status/1079631984622596101
□おまけ
ETV特集「宮沢賢治 銀河への旅~慟哭の愛と祈り~」
神番組。寮友 保阪嘉内との親交を軸に、岩手の自然を舞台として賢治の作品世界がもつ法華経的世界観を読み解く。テレビマンユニオンの今野勉制作&NHK教育放映というガチセットによる純粋BLの極み。深すぎる想いに胸熱。
NHKオンデマンド番組HP: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019094849SC000/?capid...
日本の地上波TVは年に数時間しか観なくなって久しいけれど、このETV特集はその数時間を割くに相応しい内容だった。全編に張り詰めた静謐が、星野道夫特集の神的企画
「アラスカ 星のような物語」を彷彿とさせる。色々あるだろうけど、良番組は必ず残る時代。応援してますよ。
「ETV特集部署 解体危機に懸念」: https://news.yahoo.co.jp/pickup/6313910
おしまい。
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