今回は3月1日の日本上映開始作と、恵比寿映像祭上映作を中心に13作品を扱います。(含短編4作)
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第106弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■3月1日公開作
『天国でまた会おう』
第一次大戦の傷痍軍人が味わった辛酸を下地とするバディ物語。傷負う二人に寄りそう少女の天使感がまぶしい。戦間期ダダ&モダンの視覚化など、質感表現に繊細なフランス映画の伝統を継ぎ、原作で仏最高峰ゴンクール賞受賞のピエール・ルメートル脚本参加でエスプリ深化した一作。
"Au Revoir La-Haut" https://twitter.com/pherim/status/1098416121487618048
『移動都市 モータル・エンジン』
開幕まさに
ハウルの動く城実写版!からの空賊登場で
天空の城ラピュタ実写版!!さらにペジテのガンシップ急降下ドッグファイト!!!もう楽しすぎて終末SF感吹っ飛ぶし、都市が都市喰うストーリーよりも、次に何が登場してどんな動き見せてくれるかニヤニヤ止まらずの刑でした。
"Mortal Engines" https://twitter.com/pherim/status/1080768262323851264
あす公開の
『移動都市 モータル・エンジン』、幸運にも年初のリプが
『この世界の片隅に』の片渕須直監督のお目に止まり、会話の一部だけRTされだすなど。いやしかし、人類の視覚的想像力へ日本アニメが与えた影響の発現が本格するのはむしろ、きっとこれからなのでしょうね。
→https://twitter.com/pherim/status/1080785345959014400
『アンフレンデッド:ダークウェブ』
全編PC画面モノ秀作
『search/サーチ』『アンフレンデッド』の制作ティムール・ベクマンベトフによる本作は、新要素として闇サイトが加わり恐怖の方向性がさらに拡張。盗品PCが入り口となる粗さも後半への伏線となるなど、制約ゆえの工夫で魅せる趣向がコワ楽しい。
"Unfriended: Dark Web" https://twitter.com/pherim/status/1098779336797151232
『岬の兄妹』
自閉症の妹に売春させ日銭を稼ぐ兄。足に障碍を負い不安と焦燥に苛まれる兄の鬱屈と、閉塞状況を意に介さず笑い転げる妹の明るさとの対照は鮮烈で、粗さの底に巧さを感じさせる映像が今後にも期待させる。イ・チャンドン
『オアシス』に通じる和田光沙&松浦祐也の体当たり演技は殊に凄絶。
https://twitter.com/pherim/status/1099214692705136640
『グリーンブック』
粗暴なイタリア男と、インテリの黒人天才音楽家による痛快無比のバディ物ロードムービー。傲慢と高慢がぶつかる序盤から、人種差別の根深い南部をゆく喜怒哀楽をへて互いの距離がどんどん縮まり、二人ともぐんぐん魅力を増す展開は素敵すぎて何から褒めていいかわからない。最高。
"Green Book" https://twitter.com/pherim/status/1100377298035855361
■第11回恵比寿映像祭 at 東京都写真美術館 2019年2月8日~24日
https://www.yebizo.com/jp/ ※シアター上映作のみ
『ワイルドツアー』
十代の誰にも訪れる心の冒険。三宅唱監督前作『きみの鳥はうたえる』に充ちる幸福感は、佐藤泰志原作よりも監督の資質によるのだなと。YCAMなど芸術施設がこうして人生の舞台となることへの朗らかな気づきと、まったりワークショップ映画とでもいうべき一つの流れに身を委ねる恍惚。
[画像] https://twitter.com/pherim/status/1096368625366138880
『きみの鳥はうたえる』: https://twitter.com/pherim/status/1034633021956087808
『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督新作
『ワイルドツアー』、3月30日よりユーロスペースほか全国公開。また現在開催中の恵比寿映像祭11thでも上映&監督登壇企画あり。恵比寿では同監督による映像インスタレーション
《ワールドツアー》も展示中です。(at日仏会館,入場無料)
ファブリジオ・テラノヴァ 『ダナ・ハラウェイ―生き延びるための物語り』
"人新世"ではなく"クトゥルー新世(Chthulucene)"を説くこの科学史家の語りの不思議な熱量にただひるみ、不意に背後へ入り込むもう一人のハラウェイにただたじろく。日常をくるむ非知の死角を見通すための秘訣は案外、この突き抜けた遊び心にあるのかな。
"Donna Haraway : Story Telling for Earthly Survival" https://twitter.com/pherim/status/1095319675536211968
『ダナ・ハラウェイ―生き延びるための物語り』は、現在開催中の恵比寿映像祭にて鑑賞。字幕担当:高橋さきのさん@sakinotk による上映後トーク、ウッズホール海洋生物学研究所に始まるハラウェイの歩みと、公民権運動やフェミニズム運動の段階的整理とを絡めたお話が個人的な最近の関心事に響き示唆的。
ニカ・オウトア『ニューズリール63 影の列車』
リュミエール初上映の分析に始まり、鉄道や移民を巡る考察を交え大量のフィルムを渉猟する偽史的語りに、客車の車輪部へ潜りセルビアからスロベニアへ逃れる難民が撮る生々しい映像が突如貫入する。米国を追放されたチャップリンからの引用が今日を嘲笑う。
[画像] https://twitter.com/pherim/status/1101078168285282305
Nika Autor "Newsreel 63 - The Train of Shadows" 2017 https://twitter.com/pherim/status/1101078168285282305
ラザン・アルサラー『お父さんはナクバと同じ100歳で生まれた』@Raz4M
イスラエル建国によりハイファを追われたパレスチナの血をひく女性が、ヘブライ語の地名に塗り替えられた父の生家周辺をグーグル・ストリートビューで巡る。小綺麗な道路の一角を指し「ここに深い井戸があった」と語る声の擦れと奥行き。
Razan ALSALAH "Your father was born a 100 years old and so was the Nakba" 2017
本作からは、《紛争地域から生まれた演劇9》の『朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)』公演で来日したパレスチナ人演出家ガンナーム・ガンナームによる、師匠ガッサーン・カナファーニーやハイファにおけるアラブ人追放を巡る自身の経験を交えた熱い語りが想起された。
《朝のライラック(ダーイシュ時代の死について)》:
https://twitter.com/pherim/status/945259828766679040
また『お父さんはナクバと同じ100歳で生まれた』のナレーションがもつ訴えるような声音の悲愴さ痛切さに、ベイルートのシリア系難民労働者を撮る『セメントの記憶』(来週末公開)や『シリア・モナムール』が想起された。アラビア語モノローグが自ずと具える詩性の由来を想う。
『シリア・モナムール』: https://twitter.com/pherim/status/765155235899645955
ジェシー・マクリーン『あなたが行くところどこにでも』
宛先不明のメールが読み上げられるが、映り出るポストカードも影響し訥々とした語り口に夢野久作「瓶詰地獄」が想起された。「越境についての四編」中で最もウェルメイドだが、聖書引用の色彩纏うタイトルの含意を解する日本の観客はたぶん稀。
[Vimeo動画] https://vimeo.com/220097708
Jesse McLean "Wherever You Go, There We Are" https://twitter.com/pherim/status/1101078573668958211
リリー・レイノー=ドゥヴァール『歯、歯茎、機械、未来、社会』
オブジェに座る女性がハラウェイ「サイボーグ宣言」を読み上げる。その周りで歯型を嵌めた人々が近未来SF的世間話に興じている。
『ダナ・ハラウェイ―生き延びるための物語り』(↑)のタコ介入に被るゴミの介入、生真面目なアート系パフォーマンスの懐かしさ。
Lili Reynaud-Dewar "Teeth Gums Machines Future Society" 2016
※↑作家インタビューを交えた作品紹介動画
■日本公開中作品
『アリータ:バトル・エンジェル』
心脳問題、超絶格差社会など終末SFギミックてんこ盛り。自己の身体破壊を前提とする殺陣の追求、セラミック感あるロボットデザインの優美さに新鮮味。観始めてすぐ主人公のギョロ目に馴染み、“~の実写化”の意味変容など想う。原作『銃夢』ファンも納得の出来かと。
"Alita: Battle Angel" https://twitter.com/pherim/status/1099948588077965312
ラスボスに憑依されるたび疲れ果てる悪役マハーシャラ・アリの演技が、『グリーンブック』の孤高ぶりと対極すぎて和む。
『ファースト・マン』
宇宙の無音とアームストロング船長の伝説的寡黙さを、音に秀でたデイミアン・チャゼル監督が際立たせる。統御を失い重力に見放される極限下を淡々と切り抜ける冒頭部から五感が圧倒され通し。一部70mm撮影と知りIMAX4Kレーザー&12chサウンド環境へ遠出するも、大満足の全身体感。
"First Man" https://twitter.com/pherim/status/1098055208276393984
出国前で色々たて込んでいるのに(ので)、県境を2つ越え映画を観に来た始末。
→https://twitter.com/pherim/status/1097832490838896640
IMAX4Kレーザーとふつうの劇場との比較ツイート、後日。(サイズや鮮明度だけでなく、通常の劇場では映らない部分が看過できないレベルで広いことが、遠出の動機になっています)
余談。恵比寿映像祭のシアター上映部門以外の作品ツイートは↓
第11回恵比寿映像祭連ツイ:
https://twitter.com/pherim/status/1095319675536211968
はじめはすべて転載しようと思ったけれど、いくらなんでも長すぎるので。
クリス・マルケルなどは「映像作品」というより「映画」そのものとして観ていたけれど。
(もう20年前のこと、あはは~)
おしまい。
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