今回は3月22日~3月30日の日本上映開始作と、
バンコク・スクリーニングルームにて開催の
“Fem Film Festival 2019”上映作から十作品を扱います。
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第108弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■3月22日公開作
『バンブルビー』
トランスフォーマー実写新作は、黄色いビートルに変形する主人公バンブルビーが全編かわいい。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』監督トラヴィス・ナイトの、金属生命体と人間の交流に生命力と躍動感を吹き込む演出は見事で、マイケル・ベイ実写連作へのオマージュも嬉しい。ユーモア溢れる快作。
"Bumblebee" https://twitter.com/pherim/status/1107475239682768896
きのう公開の
『バンブルビー』、さっそくマイケル・ベイ連作との比較など映画TLが賑わってますね。個人的には、当初のドンパチ重視から謎のまったりロボ団欒時空へ超進化を遂げたマイケル・ベイ5作とは別の、《かわゆすトランスフォーマー》路線への転調こそ本作の肝だろうと。
『バンブルビー』、日本公開は2019年3月22日。かわゆいビートルの大活劇はきっと子供に受けるし、
『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』などスター・ウォーズのアンソロジー・シリーズ好きにも超お奨め。バンコクIMAX(Paragon)にて鑑賞。タイは木曜日が新作封切り日のため、米国本土よりも1日早いパターン。(※2018年12月20/21日)
『ビリーブ 未来への大逆転』
今年86歳となる現役の米国最高裁判事女史ルース・ギンズバーグを描く伝記物。'50年代の男尊女卑が根強い風潮ゆえに、法科大学院を主席卒業しながら弁護士の夢を諦め教授職を選んだ彼女が、性差別を巡る違憲判決を勝ち取るまでの半生。その道行きはどこまでも気高く熱い。
"On The Basis of Sex" https://twitter.com/pherim/status/1107266823228022784
先週公開『ビリーブ 未来への大逆転』の主人公である米国最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ。今月86歳となった彼女の今と来し方を描くドキュメンタリー
『RBG 最強の85才』も5月に日本公開予定。トランプ政権下で判事構成が右傾化する中、絶対死なんと筋トレに励むお婆ちゃんマジカッコヨス。
たまたま同日公開の
『バンブルビー』ツイートでフェリシティ・ジョーンズ主演の
『ローグ・ワン』に触れたけれど、
『ビリーブ 未来への大逆転』で彼女が見せるパフォーマンスは、アクションこそないながらSWばりに巨大な敵(米国司法)と戦う勇壮な眼差しは
『ローグ・ワン』のそれが想起されました。
ルース・ギンズバーグのハーバード在学時、法大学院には女性トイレすらなかった。など本作での女性差別の描写は、私事ながら母に聞いた昔日の東大法学部の様子に瓜二つだった。トイレがないのはむしろ「当然」のレベルで、教官から「お前が合格したことで未来ある男の進路が一人閉ざされたのだ」と言われたのも映画と同じ。さらに外交官志望だった母は国家公務員I種に合格していたが、当時霞が関で女性が採用試験を通過し活躍し得るのは労働省婦人少年局くらいだったので諦めた。など、後日連ツイ予定。
■3月23日公開作
『セメントの記憶』
建設ラッシュに沸くベイルートの、鉄骨とセメントに囲まれた地下暗部で息するシリアの難民労働者たち。戦場の凄惨から遠く隔てられなお響き合う、存在の孤独の痛切。押し黙る彼らの足下でセメントは歌い上げる。また壊されるため、造られるのか。アラブの詩性充溢する、厳かなる一編。
"Taste of Cement" https://twitter.com/pherim/status/1108160352909324288
■3月29日公開作
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』
ウッディ・ハレルソン&ジェームズ・マースデン主演新作は、ブッシュJr政権による対イラク開戦の虚構に迫る記者の物語。マイナー紙が米軍作戦“衝撃と畏怖”の矛先を転倒させる風刺性。上司に扮するロブ・ライナー監督、伝説的記者演じるトミー・リー・ジョーンズも見どころ。
"Shock and Awe" https://twitter.com/pherim/status/1108525532906348544
■3月30日公開作
『リヴァプール 最後の恋』
ハリウッド黄金期の大女優グロリア・グレアムの晩年を描く。駆け出し演劇青年とのロンドンでの馴れ初めは、「老いらくの恋」の語ではとても表せない瑞々しさ。主演アネット・ベニングの華麗かつ可憐な演技は驚異的で、脇役も各々魅力的なキャスティングの妙が光る一作。
"Film Stars Don't Die in Liverpool" https://twitter.com/pherim/status/1109657805324087296
『ワイルドツアー』
十代の誰にも訪れる心の冒険。三宅唱監督前作
『きみの鳥はうたえる』に充ちる幸福感は、佐藤泰志原作よりも監督の資質によるのだなと。YCAMなど芸術施設がこうして人生の舞台となることへの朗らかな気づきと、まったりワークショップ映画とでもいうべき一つの流れに身を委ねる恍惚。
※動画見当たらず。公式HP:https://special.ycam.jp/wildtour/
"Wild Tour" https://twitter.com/pherim/status/1096368625366138880
『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督新作
『ワイルドツアー』、3月30日よりユーロスペースほか全国公開。また現在開催中の恵比寿映像祭11thでも上映&監督登壇企画あり。恵比寿では同監督による映像インスタレーション《ワールドツアー》も展示中です。(at日仏会館,入場無料,~2/24)
三宅唱《ワールドツアー》:
https://twitter.com/pherim/status/1097499262185746432
■Fem Film Festival 2019 at Bangkok Screening Room, during 5-10 March
https://bkksr.com/fem-film-festival-2019
"I Am Not a Witch"
ザンビア映画。のどかすぎる魔女狩り裁判をへて村八分に遭う少女の彷徨。ふしぎな魔女の生活共同体と、裁く立場への変容。供物となる羊の道か、利用される魔女の道か。遊ぶ子供の声を遠くから聴き続ける場面は痛切で、詩情豊かな映像の奔流に圧倒される。寡黙な真理と虚構の饒舌。
"I Am Not a Witch" https://twitter.com/pherim/status/1105784373956116481
"I Am Not a Witch"で、お前は魔女かとの問いに、少女はただ押し黙る。否定も肯定もしない在り方が、ここでは受容されず排斥される。魔女達は、白布製の鎖を誰ひとり自ら断ち切りはしない。他の生き方を知らず、今ある呪縛にしがみつく。世界はただ美しい。これはそのようにして、私達自身を映す物語。
"The Miseducation of Cameron Post"
同性愛に目覚めた少女が矯正施設へ送り込まれるクロエ・グレース・モレッツ主演新作。敬虔なキリスト教者を自認し「クィアーな性癖の治療」を試みる大人たちこそクィアーに映る円環地獄。周囲の沸騰をよそに醒めた目線を保つクロエの質実演技にただただ見惚れる。
"The Miseducation of Cameron Post" https://twitter.com/pherim/status/1107794915323305985
※『ある少年の告白』(日本公開4/19)との絡みで後日追記予定。
『ザ・クラフト』"The Craft"
女子高生4人組が魔法少女集団と化し、男どもと世界を見返すオカルト'96年作。フェミ映画文脈でバンコクにて鑑賞したのも手伝い、見慣れた光景ゆえの再発見とでもいうべき新鮮な体感。番長役フェアルザ・バルク(Fairuza Balk)、ヒロインのロビン・タニーを食う快活な演技がとても好み。
"The Craft" https://twitter.com/pherim/status/1109262006387773440
『ザ・クラフト』リブート進行中の模様。これは楽しみ。
しかもジェイソン・ブラム製作。B級ホラー量産プロデューサーのイメージから近年
『セッション』『スプリット』など深化してる感もあり期待大。(
『ハロウィン』4/12公開)
‘The Craft’ Reboot In The Works At Blumhouse :
https://fullcirclecinema.com/2019/03/25/the-craft-reboot-...
"Matangi/Maya/M.I.A."
タミル出身の歌手M.I.A.を追うドキュメンタリー。マドンナと出演したスーパーボウルの舞台を、NFLから16.9億ドルもの損害賠償で訴えられたり、タミル・イーラム解放のトラに所属する父が常にM.I.A批判に利用されるなど、難民として英国へ移る幼少期からの映像が挟み込まれつつアメリカン・ポップカルチャーそのものが鋭く抉られる秀作。
"Matangi/Maya/M.I.A." https://twitter.com/pherim/status/1115814330404966401
余談。
"Fem Film Festival 2019"はバンコクのミニシアター Bangkok Screening Roomにて開催。ここは東京でいうと移転前のユーロスペースやアップリンクのような規模&雰囲気で、大手シネコン系列とは異なるラインナップで新旧問わず良作を上映し続けている。
"Fem Film Festival 2019"は3月8日の国際女性デーに併せ開催されたもので、シューズブランドのConverseが共催。劇場ロビー部がカフェになっており、スタッフの一人が客に声をかけアンケートをとっていた。靴型のメッセージカードが小洒落おり。
おしまい。
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