pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2019年
04月24日
23:30

ふぃるめも111 接吻のねじれた丘

 


 今回は、4月後半(4/19~27)の日本上映開始作と、特集《ソヴィエト映画の世界》から12作品を扱います。(含短編2作)


 タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第111弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■4月19日公開作

『僕たちのラストステージ』

ローレル&ハーディの伝記映画。サイレント時代にチャップリンやキートンと並び称されるも、トーキー移行の時代から取り残された二人のその後。売れなくなっても地道な活動をやめない二人に扮するスティーヴ・クーガン&ジョン・C・ライリーの憑依ぶりは見もの。

"Stan&Ollie" https://twitter.com/pherim/status/1119066577003933696




『幸福なラザロ』
小作制度の廃止を隠し村人を働かせ続けた侯爵夫人の実話を元とする本作が放つ、芳醇たる映像感覚と濃厚な寓話性に圧倒される。一人の愛の告白を皆が分かち祝福するイタリア近世の農村風景から現代都市の殺伐への一気の滑落を、不可視の狼が静かに見守る。深い宗教的余韻に充ちた秀作。

"Lazzaro Felice" "Happy as Lazzaro" https://twitter.com/pherim/status/1117991307211751424

  試写メモ55 「ラザロとは誰か」: https://tokinoma.pne.jp/diary/3287




『アガサ・クリスティー ねじれた家』
インテリアや調度品が眼福の屋敷物ミステリー。みんながねじれて見える中、一人ひとりがさらにねじれゆく困惑のひとときを経て暴かれる奇怪な真実。機知やハッタリで窮地を乗り切る、ズル賢くてタフなお婆ちゃんを演じたらグレン・クローズはやっぱり当代随一ね。

"Crooked House" https://twitter.com/pherim/status/1118513611276554240




『ある少年の告白』
同性愛者の“矯正”施設へ入れられた少年の苦悩と格闘、入れてしまった両親の抱える葛藤。子への愛情と牧師の責務との間で揺れる心を、硬直した背中の幽かな震えで表現するラッセル・クロウが殊に素晴らしい。父権神話の崩壊から母の覚醒、そして救いへと連なる脚本の巧みさに脱帽。

"Boy Erased" https://twitter.com/pherim/status/1118700357712924672

  "The Miseducation of Cameron Post"↓との絡みで後日追記予定:
  https://twitter.com/pherim/status/1107794915323305985 (ふぃるめも108)





『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
未だ禍根を残すナチスの美術略奪。「退廃芸術」として美術傑作群を排斥する裏側でヒトラーとゲーリングがその蒐集を競い合い、驚異的技術で彼らを騙し抜く贋作家が暗躍し、美術史を一新し得る不明作群の行方が暗示される、美術的冒険ドキュメンタリー秀作。

"Hitler contro Picasso e gli altri" https://twitter.com/pherim/status/1117640625279647745




■4月20日公開作

『イメージの本』

映像と音のコラージュが延々連なるにも関わらず、全く飽きないことに怯えすら覚えるゴダール新作。考えるという選択肢の在りかを忘れ、イメージが考えるのを眺める体験。水平移動し続ける『映画史』から垂直の突貫運動へ転回した感があり、“希望の領地”なる到達点への着地は逆に新鮮。

"Le livre d'image" "The Image Book" https://twitter.com/pherim/status/1121260363889037312




■4月27日公開作
 
『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』

稀代のジャズ・ピアニストを巡る、音楽家たちの証言がまとう愛惜と流れる演奏録音が余韻を引く伝記作。夢を共にした仲間の事故死や、恋人と兄の自死を経て薬に耽溺した後半生がもつ、音楽の美に全霊を捧げた歳月が同時に緩やかな自殺であったという両極性。

"Time Remembered:Life & Music of Bill Evans" https://twitter.com/pherim/status/1120516441730686976




『救いの接吻』
女優を妻にもつ映画監督が、新作の主演を別の女優に決めたことから始まる夫婦間映画論争と愛のもつれ。フィリップ・ガレル監督が監督役で主演し、妻ブリジット・シィや子ルイから父モーリスまで肉親本人が演じるややこし映画。この精巧な寄せ木細工を専ら会話のみで組み上げる巧みさの異様。

"Les Baisers de Secours" "Emergency Kisses" https://twitter.com/pherim/status/1120886118558261248

  フィリップ・ガレル『パリ、恋人たちの影』(ふぃるめも52):
  https://twitter.com/pherim/status/822233867926970368





『リアム16歳、はじめての学校』
北米独自のホームスクール文化が醸す奇妙さを、ユーモアへ転化させた学園物&ホームコメディ。世間から遊離しゆく子の焦りと、親離れの予兆にひるむ母の焦りとの衝突が放つ光の奥向こうに、カナダ出身カイル・ライドアウト監督の宿す寓話的深淵がむくりと顔を覗かせる。

"Adventures in Public School"

  試写メモ56「母なる宇宙と16歳の冒険誌」: https://tokinoma.pne.jp/diary/3302




■ソヴィエト映画の世界 2019/3/30~4/19 @シネマヴェーラ渋谷
 http://www.cinemavera.com/programs.php

『チェス狂』"Шахматная горячка"
婚約者のチェス道楽に怒り心頭して家を飛び出せば、街の男たちも神父さえもチェスのことしか考えてないし、世界は影で仔猫たちに占領されてるし、でも色々あってまいっかとなるサイレント期コメディ定番の流れをロシア風味で楽しめるプドフキン&シピコフスキー監督短編1925年作。なごむ。

"Шахматная горячка" 1925 https://twitter.com/pherim/status/1121038009778860033
※鑑賞時サウンド・トラックなし




『殺し屋』"Убийцы"
アンドレイ・タルコフスキー全ソ国立映画大学3年生時の1956年共同監督作。全編に横溢する閉塞感の内に息づく気骨の萌芽が勇ましい。ヘミングウェイ原作で、後半出演するタルコフスキーが口笛でジャズ定番“バードランドの子守唄”を奏でるなど、ソ連映画この年代のゆえの大らかさは印象的。

"Убийцы" "The Killers" 1956




『処刑の丘』"Восхождение"
第二次大戦下ベラルーシの雪林でドイツ軍から逃亡するパルチザンを映す冒頭部から、タイトルが示す終幕まで全編ガチシリアスな女性監督ラリーサ・シェピチコ1976年作。絶望と聖性の同居する顔面のクローズアップが反復するうち、一つの様式として力を持ち出す様に圧倒される。

"Восхождение" 1976





 余談。

 作品ツイートのほかに、映画館/試写室訪問時のツイートをちょくちょくするようになっています。タイではたまにしていましたが、これまで日本ではあまりしてこなかったのは、単純に外国人旅行者向けのネットSIMを常用していたからだったりします。

 こちらのツイートに関しては、ふぃるめもでまとめることは基本しませんが、流れ次第で映画の内容にも言及しますので、よろしければhttps://twitter.com/pherim もご笑覧くださいませ。さいきんはこのアカウント、半ば映画垢モードに入ってます。


 


おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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