今回は5月3日~17日の日本上映開始作、
《クリス・マルケル特集》上映作など11作品を扱います。(含短編1作)
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第112弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■5月3日公開作
『ドント・ウォーリー』
ホアキン・フェニックス恢復物という良ジャンル。アル中+車椅子の漫画家を主人公とする本作で、悲惨の内にも柔らかな光が降りそそぐガス・ヴァン・サント監督作の特質を体現するルーニー・マーラが、天使すぎてもはや眩しい。どん底のさらに底ゆく心との交感が宿す仄かな温度。
"Don't Worry, He Won't Get Far On Foot" https://twitter.com/pherim/status/1123558735710867457
■5月10日公開作
『RBG 最強の85才』
現代アメリカのファッションアイコンにまでなった現役最高裁判事を描く。法服でもネックレスを使い分ける洒落っ気と、無自覚の差別意識に囚われる男達を「幼稚園児を見守る」構えで捌く知性の奥ゆかしさ。騒ぎ立てる運動家型でなく、実力でのしてきたのが人気の秘密と納得の98分。
"RBG" https://twitter.com/pherim/status/1126306118957797376
『ビリーブ 未来への大逆転』公開時RBG関連tweets:
https://twitter.com/pherim/status/1107266823228022784
『ビリーブ 未来への大逆転』の主人公である米国最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ。今月86歳となった彼女の今と来し方を描くドキュメンタリー
『RBG 最強の85才』も5月に日本公開予定。トランプ政権下で判事構成が右傾化する中、絶対死なんと筋トレに励むお婆ちゃんマジカッコヨス。
『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』
ルドルフ・ヌレエフの亡命へ至る半生を描く、レイフ・ファインズ監督新作。男性ダンサーが引き立て役だった時代のレニングラードで窒息寸前の天才を襲う孤独と自由への希求。空港亡命劇は今日性充分で、同僚ダンサーに扮するセルゲイ・ポルーニンの跳躍も見もの。
"The White Crow" https://twitter.com/pherim/status/1125950422529728514
■5月17日公開作
『リトル・フォレスト 春夏秋冬』
五十嵐大介マンガを原作とする韓国映画。自然を活かす土着の料理が続々登場、伝統家屋の醸す陰翳やわんこの活躍など全編眼福。首都と田舎の対立が若者心理へ影差す現代普遍の構図を、五十嵐原作のマジカル風味に置換させるあたりはいかにも当世韓国エンタメ仕草。
"리틀 포레스트" https://twitter.com/pherim/status/1128484008151535617
『僕たちは希望という名の列車に乗った』
禁止されていた西側のラジオからハンガリー動乱を知り、自発的に黙祷を捧げた学生達が迫られる運命の選択。ベルリンの壁建設前の50年代東ドイツを描く点が貴重な本作、生徒の決断や校長の葛藤、両親の覚悟や高官の圧力など実話ベースの再現描写と演技の逐一に震撼させられる。
"Das schweigende Klassenzimmer" "The Silent Revolution"
『コレット』
仏作家コレットを描くキーラ・ナイトレイ主演新作。夫のゴーストライターに甘んじる鬱屈から、舞踊や同性愛経験をつうじて解放へと至る一代記が、作中人物クローディーヌを巡る官能描写と並走展開する妙趣。パントマイムやベッドシーンほか、場面ごと変わるベル・エポック衣装群は逐一眼福。
"Colette" https://twitter.com/pherim/status/1127767498084929539
■クリス・マルケル特集 4/6-19@渋谷ユーロスペース, 5/3-9@アップリンク吉祥寺
http://www.pan-dora.co.jp/ChrisMarker/
『イヴ・モンタン~ある長距離歌手の孤独』
チリのパルチザンへ共感を寄せ、フィッツジェラルドを引用し実存の価値を説く稀代の歌手。リハから本番へ、舞台上の動きを追う映像が熱を帯びてゆく様に、己の歌を介し世界と渡り合ったこの男の矜持が映り込む。編集の巧みさ光るクリス・マルケル1974年作。
"La Solitude du chanteur de fond" "The Loneliness of the Long Distance Singer" https://twitter.com/pherim/status/1124518441107378178
『シベリアからの手紙』
クリス・マルケル1958年作。「遠い国から手紙を書いています」というトルストイほかシベリア便りのクリシェに始まり、風刺調の語りを伴い流れる風景は不思議と明るい。辺境をもフランスの鏡像とみる愚直さと軽快アニメとのギャップに、早すぎるポストモダン&ポップが露出する。
"Lettre de Sibérie" https://twitter.com/pherim/status/1115096984954658819
『北京の日曜日』
仏中友好使節団参加によるクリス・マルケル訪中録1956年作。夢みた土地を巡る彩度の高い映像は良くも悪くもエキゾチシズム全開で、裏返ったパリを北京に幻視する素朴さと煌めく諧謔とのギャップに萌える。中国アドバイザー=アニエス・ヴァルダ(今年3月末没)の表記がいとせつな。
"Dimanche à Pékin" "Sunday in Peking" https://twitter.com/pherim/status/1123739828376485889
《クリス・マルケル特集2019~永遠の記憶~》、渋谷ユーロスペースでの上映は終了済みながら、アップリンク吉祥寺@uplink_joji にてあす5月3日(金)より1週間限定上映の模様です。
→https://joji.uplink.co.jp/tag/chrismarker2019
http://www.pan-dora.co.jp/ChrisMarker/
『北京の日曜日』、本場中国のビリビリ動画に全編あげられていて、付いてるコメントが微笑ましいです。→
https://www.bilibili.com/video/av4865543/
『サン・ソレイユ』
’80年代初頭の東京を切りとる映像自体が今日では貴重かつ、後半のギニア・ビサウ&カーポ・ヴェルデ編との対置が更なる感興誘うクリス・マルケル1982年作。思い出は忘却の裏側。山谷、アーケードゲーム、阿波踊り。僕たちは思い出すのでなく、歴史を書き直すように記憶を書き直す。
"Sans soleil" https://twitter.com/pherim/status/1126679349292224512
■日本公開中作品
『アベンジャーズ エンドゲーム』
タイムリープ物としての複雑な構築性こそ圧巻の巨編終結。3時間緩みなく構成し切る膂力が凄まじい。ド派手CGとは逆張り気味に、名優たちによるセリフ無しの表情演技を密にしたことが、錯綜するドラマへの没入度が高め維持された秘訣かなと。魂の孤絶と継承の物語。
"Avengers: Endgame" https://twitter.com/pherim/status/1128121470842880000
余談。
『アベンジャーズ エンドゲーム』、10年物の大河完結とあって色々と規格外の事態が起きてますね。終結、と見せかけつつ次作以降もきっちり期待させる憎い一幕もありましたが。
実は公開2日目のIMAXレーザー3Dを狙い、公開前の週のある夜0:00の発売開始数分後にサイトへアクセスしたところ、すでに500人処理待ちの表示が。(ある事情から望む席での鑑賞はできました)
で数日前、Dolby Cinema 3Dにて再度鑑賞しました。公開から半月、平日とはいえ夕刻回なのに館内ガラガラで驚きました。
ただただ圧倒された初見時(IMAXレーザー)に対し、二度目で物語へより没入できたのはDolby Cinemaの効果も大きかったかもしれず。この点をめぐっては以前
『スパイダーマン:スパイダーバース』(ふぃるめも107)の連ツイで「VR的というより、世界文学的」と述べたけれど、省略しすぎなのでいずれ説明を試みようと思います。
Dolby Cinemaは映像や音だけでなく、一般席が全て独立型(隣席の振動と完全無縁)なのが素晴らしい。これ、劇場の比較サイトなどでもあまり注目されてないのだけれど、理想の作品環境を考える上では極めて重要。この点を省いたDolby Atmosでも十分に驚きの体感があったけれど、大きく超えてきましたね。ちなみにIMAXレーザー3DでもDXシートの特別料金さえ払えば同様の座席環境が得られはします。でも通常料金で全席独立型は凄い。
東京圏ではIMAXレーザー3Dは川崎、Dolby Cinemaはさいたま新都心が私的に常用劇場となりそうです。どちらも都外ながら、現在では山手線主要全駅から1本で行ける立地は、なかなか考えられています。とはいえ認知度はまだまだ低いですね。
日本でもまだ数箇所しかないDolby Cinemaが、現状は日本滞在時の拠点である実家からそう遠くない場所に早期オープンしてくれたのは、ひとまず僥倖だなぁと感じ入ります。
おしまい。
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