今回は、5月31日~6月7日の日本上映開始作、
ジョスリーン・サアブ追悼企画上映作など10作品を扱います。(含短編2作)
タイ移住後に劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第114弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■5月31日公開作
『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』
《ザ・スミス》スティーブン・モリッシーのくすぶる若き日々。華やかさや栄光から遠く、ライヴハウスの壁際でノートにメモをとり続ける根暗青年が鬱屈を溜め溜める様を
『ダンケルク』のジャック・ロウデンが好演。昨今の派手な音楽伝記物のどれとも異なる渋味が良い。
"England is Mine" https://twitter.com/pherim/status/1132126642367688705
『長いお別れ』
認知症で日々記憶を失くしていく父と、母と娘たちが支え見送る家族物語。山﨑努、蒼井優、竹内結子、松原智恵子らが各世代の喜怒哀楽を演じきっていて、中野量太監督前作
『湯を沸かすほどの熱い愛』の炸裂エネルギーを内に閉じ込めたような抑制の利きは半端なく、この全編たぎるような感動は一体なんだろう。
https://twitter.com/pherim/status/1132496653766647808
『氷上の王、ジョン・カリー』
その芸術性によりフィギュア男子種目の流れ全体を変えた革新者という物語軸と、ゲイに対する抑圧下での五輪金メダル獲得とその後の時間軸を共に活写するドキュメンタリー良作。「男らしくないバレエはダメだが、スケートはスポーツだから良し」とした父の逸話が象徴的。
"The Ice King" https://twitter.com/pherim/status/1136461300924424192
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
嵐に噴火に稲光青光入り乱れ、ボストン・ワシントンほか壊しまくりの大怪獣プロレス大会わいわい。唯一ゴジラに味方する雲南生まれのモスラかわゆす。チャン・ツィイーの双子扱い、あとでモスラの双子オマージュで中国縛りと気づく。音響演出とても良かった。
"Godzilla: King of the Monsters" https://twitter.com/pherim/status/1137563778738819073
※Dolby Cinemaにて鑑賞。(Dolby Cinemaについては前回・ふぃるめも113にて)
■6月1日公開作
『誰もがそれを知っている』
ワイン農園を舞台に、ハビエル・バルデム&ペネロペ・クルス夫妻が昔の恋人同士に扮するサスペンス秀作。田舎の伝統的習俗を贅沢に見せつける前半から一転、真相へ近づくにつれスペイン語文化圏独特の広がりと深さが面をもたげる構成に名匠アスガー・ファルハディの冴え一閃。
"Everybody Knows" https://twitter.com/pherim/status/1135378251222700033
■6月7日公開作
『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』
貧しい育ちのインド人青年が、家具屋の商品に隠れて眠るところから始まる幻想的世界旅行。“突然踊りだすよ~”な展開満載の笑える娯楽作ながら、南北格差から難民問題まで含み込む秀逸構成。タンカーに拾われ迷い入るリビアでの贈与劇は殊に感動的。
"The Extraordinary Journey of the Fakir" https://twitter.com/pherim/status/1135737634016284673
『The Crossing ザ・クロッシング Part I』
ジョン・ウー新作は、国共内戦期の大陸中国と台湾島の両岸が舞台。「戦争がなければ、どんな人生だったか」の一語が、金城武、長澤まさみ、チャン・ツィイーら扮する当時の人々の苦悩を象徴する。租界消滅後の上海外灘や、動乱期台湾のCG再現描写は圧巻。
"The Crossing 1" "太平輪 乱世浮生" https://twitter.com/pherim/status/1136965632769966081
試写メモ58「ここではない、どこかへ」:https://tokinoma.pne.jp/diary/3343
■《追悼、ジョスリーン・サアブ》@アテネ・フランセ文化センター
http://www.athenee.net/culturalcenter/program/saa/saab201...
『戦争の子供たち』
ジョスリーン・サアブ1976年作。東ベイルートでキリスト教徒がムスリム難民を襲った《テルザアタルの虐殺》の現場で遊ぶ子供たちの光景。銃殺から絞殺まで、目撃した殺人の手法を真似し子供らは笑う。手にする玩具銃のシームレスな自動小銃への移行を予感させる情景の長閑な凄絶。
vimeo動画:https://vimeo.com/328411272
"Les enfants de la guerre" "The Children of War"
ゴダール
『イメージの本』にて映像引用あり。
→https://twitter.com/pherim/status/1121260363889037312
『わが町、ベイルート』
ジョスリーン・サアブ監督本人が、爆撃を受けた築150年の生家の瓦礫に立ち記憶を語る。空が覗く廃墟の場面に始まる本作は、「もう失うものはない」と言う諦念に裏付けられた映像作家の信仰告白にも映る。幕中に付されるムーディーなJAZZと現場に響く銃撃音との落差が印象的。
※動画見当たらず
"Bayrouth, Ma Ville" "Bayrut, My City" https://twitter.com/pherim/status/1142286867917754368
『ドゥニヤ』
カイロを舞台にダンサーを目指す女性を通して、女子割礼など残る伝統と近代的価値観との交接を描くジョスリーン・サアブ監督2005年作。因習からの解放を謳う全編の朗らかなトーンと、スーフィズムの抽象性を想わせる舞踏稽古シーンの禁欲的な画面構成とのコントラストは眩しいほど。
"Dunia (Kiss Me Not On The Eyes)" https://twitter.com/pherim/status/1137243969115512832
※より鮮明な予告動画:https://vimeo.com/10539485
余談。
『ドゥニヤ』はアテネ・フランセでのジョスリーン・サアブ追悼企画にて鑑賞。四方田犬彦さんのトークは感極まった口調で始まり彼女の作品履歴を語り倒す、なかなかの神回でした。
女子割礼を否定的に描く内容から当局に拘束、殺人予告にも遭った監督本人による回想など。↓
過去のジョスリーン・サアーブ連ツイ(『昔々、ベイルートで』):
https://twitter.com/pherim/status/832866129504657411
↑の過去ツイ、初めに「ジョスリリーン」とcopyしたまま、気づかずにpasteし続けた結果、けっこう恥ずかしいツイートになっている。こういう文字レベルのミスって、その時点で見つけるの至難なんですよね。こういうのもスコトーマっていうのかな。
短編は基本0.5本扱いでカウントしているため、今回は実質9本。
前回までちょうど10本の進行が継続していたので、次回以降で調整します。とメモ。
おしまい。
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