今回は7月12日~7月27日の日本上映開始作から10作品+αを扱います。
(含再掲1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第117弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■7月12日公開作
『さらば愛しきアウトロー』
老いた紳士強盗を描く実話ベースのロバート・レッドフォード主演新作&引退作。13歳の少年院脱走からの全脱獄歴再現に
『ア・ゴースト・ストーリー』のデヴィッド・ロウリー監督新作ならではの時間感覚があり、暴力行使を伴わない銀行強盗やカーチェイス場面には優雅さすら。
"The Old Man & the Gun" https://twitter.com/pherim/status/1148064615122665472
2018年ベスト映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』:
https://twitter.com/pherim/status/1073117521572581377
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』
フランスおじさん名優そろい踏みの秀作コメディ。
『フル・モンティ』に匹敵する実話ベース成功譚で、
『ウォーターボーイズ』の純粋さが中年クライシスの濁りに代わる切なみは果てしない。腹の出た親父達がクライマックスで魅せる演技に思わず感涙。
"Le grand bain" "Sink or Swim" https://twitter.com/pherim/status/1149512075372142592
『ハッピー・デス・デイ 2U』
学園ラブコメ版
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。パラノーマル系脚本家が監督した先月公開作
『ハッピー・デス・デイ』続編で、キャストに量子物理専攻トリオが加わる構成。ド文系の主人公が暗記→自殺の輪廻に入り数式完成を目指す展開の支離滅裂な明るさが良い。
"Happy Death Day 2U" https://twitter.com/pherim/status/1103497214066810880
今春バンコクにて初見時連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1103497214066810880
『ハッピー・デス・デイ 2U』で主人公は前作同様、死ぬたび男友達の部屋で起きるが周囲の関係性が毎回微妙に変化する。日本ではホラー枠で同時公開されそうだが、本作では変化を求め自ら様々な死を選び、死の恐怖は序盤で超越される。謎の殺人犯と模倣犯が等価な点も併せ、東浩紀のゲーム的リアリズムを想起。
■7月19日公開作
『工作 黒金星と呼ばれた男』
韓国の対北スパイ=パク・ソギョンを主人公とする、実話ベースの現代史サスペンス秀作。KCIAを継ぐ“安企部”の内幕や北側上層部内の対立を劇的に描く巧さに脱帽。また奥の陣に控える金正日が饒舌に欲望を曝け出す様はよく映画化できたなと感心。これぞ韓流ど直球のラストにズルいくらい感動させられる。
"공작" "The Spy Gone North" https://twitter.com/pherim/status/1150243246230007808
『1987、ある闘いの真実』: https://twitter.com/pherim/status/1037866854830620672
『タクシー運転手 約束は海を越えて』: https://twitter.com/pherim/status/965029881430994944
『将軍様、あなたのために映画を撮ります』: https://twitter.com/pherim/status/778067607215759360
この数年、韓国現代史物の水準が突き抜けていて、これは何だなにごとだと思うにですね。もちろん『シュリ』以来の南北朝鮮統一をめぐる緊張感の反映や、大統領周辺の相変わらずな腐敗もあるけれど、一つにはアメリカ文化にも通じる、(相対的な)歴史劇の不在も大きいのではと。(要追考メモとして)
『アポロ11 完全版』
神作品。ただ息を呑む新感覚体験。NASA発掘の70mmフィルムをベースとする本作、1969年を生きる人々の表情や息遣いの鮮明さにまず圧倒され、発射から月面着陸、地球帰還へ至る超現実的な映像に陶酔のあげく、魂震える終幕演出により崇高へ。比類なき傑作。
"Apollo 11" https://twitter.com/pherim/status/1144807901615153154
『アポロ11 完全版』、日本での劇場公開は7月19日。MGMが手を引いた後もNASAが単独で撮影を続行させ、存在は知られていながら鑑賞不可能だった映像を、アメリカ公文書記録管理局とNASAが発掘。誰もが知る、69年7月の月面着陸時には存在しないある人物が、人類と宇宙の夢を語りだす終盤演出も鳥肌級。
きのう公開の
『アポロ11 完全版』、映像の力をあらためて思い知る機会として一押しです。無意識レベルで身体に問答無用の衝撃を与える、時代を超越した70mmからのデジタル精細映像。ドキュメンタリーで『ファースト・マン』4Kレーザーを超越してくる、ガチにヤバい稀少体験。
『ファースト・マン』(ふぃるめも106):
https://twitter.com/pherim/status/1098055208276393984
先週末公開の『アポロ11 完全版』に関連して。
1969年7月20日に月面着陸を果たしたアポロ11号の行動ログを、きっかり50年ズラせて報じる@sp50jbot、時折TLに紛れ込む様子が楽しくお奨めです。今は月の裏側から戻った母船の通信復帰、地球への帰還軌道へ入ったところ。がんが!
@sp50jbot: https://twitter.com/sp50jbot/status/1152784348606803968
■7月20日公開作
『存在のない子供たち』
レバノン、自分を生んだ罪で両親を訴える12歳の少年。そこへと至る道のりで少年は怒り絶望し、遁走し無慈悲を知り諦観する。癒えない困窮、難民や不法移民の逼塞、児童婚の実態、映像は流転する。母としてアラブ人としての誇りを賭した監督ナディーン・ラバキーの咆哮を聞け。
"Capharnaüm" "Capharnaum" "Capernaum" https://twitter.com/pherim/status/1150969625154244608
『存在のない子供たち』をめぐり書きました。製作背景のほか、カンヌ式典の場でアラブ特有の祝声を挙げ覚悟を示すナディーン・ラバキー監督の逸話、あまりにも感動的なため予定外に字数を割くなど。
【映画評】 混沌とした修羅場と化す今日世界の縮図 | キリスト新聞社HP:
http://www.kirishin.com/2019/07/17/26949/
■7月26日公開作
『よこがお』
艶やかすぎる筒井真理子が、寄木細工のように緻密な脚本をどす黒いぬめりへ浸す深田晃司監督新作。市川実日子と池松壮亮の不穏が反響し合い、罪の表裏映す『淵に立つ』からさらなる極北へ突き抜ける様に戦慄、訪れる静謐にただ震える。研ぎ澄まされた構成に目眩いし終幕後は魂抜け状態。
"A Girl Missing" https://twitter.com/pherim/status/1154351634492747781
『淵に立つ』: https://twitter.com/pherim/status/781071911669215232
筒井真理子さんについて驚かされるのは、昔舞台で幾度か観ていた彼女を忘れるほど今のほうがエロく瑞々しくなっていることで、必ずしも意図してできることばかりでもない気もして、本物の女優が放つ佇まいの凄味に気圧されるといいますか。いやもう。嗚呼ん。
■7月27日公開作
『パラダイス・ネクスト』
これだけ素材を揃えておきながら、ここまで歪なまま終わる映画を久々に観た。稚拙と言い換えても良いのだが、試写は満席だったしFilMarksも意外に高得点で、これを面白く楽しめた層がいたのか、仕事上の義理やお気に入り俳優への献上点ゆえか、という疑問が生じた意味でも新鮮な体験。(とするしかない)
"Paradise Next"
『ブレス あの波の向こうへ』
サーフィンと出逢ってしまった少年ふたりの物語。やんちゃ坊主と内気少年が荒波に挑むなか成長しゆく様は瑞々しく、波の描き分けが新しい。
『メンタリスト』のサイモン・ベイカー、物語の基調低音を倍音化するような監脚+出演の獅子奮迅ぶりで、豪州スターの面目躍如。
"Breath" https://twitter.com/pherim/status/1152887172183105537
『ブレス あの波の向こうへ』原作、このシリーズ、気合感じる重厚作揃いなので読みたいのです。夏に読みたい。でも時間なさそう。嗚呼。あと前ツイ画像、サイモン・ベイカーについて書きながら「あ、この人か」と顔でわかる写真を選ばないミス犯したので補足のアー写。(後日投稿)
『隣の影』
アイスランド映画。庭の木の手入れをめぐる隣家同士の反目に始まり、諍いの普遍を描く。レイキャビク郊外が舞台のブラックコメディという物珍しさを楽しんでいると、スリラー、ホラーへと不条理な展開遂げゆく意外性。苔の接写や荘厳たる長回し(に潜む諧謔)に、北欧映画の息吹をみる。
"Undir trénu" "Under the Tree" https://twitter.com/pherim/status/1153139419408261120
『北の果ての小さな村で』
グリーンランドの最辺境へ、志願し赴任したデンマーク人青年教師のイヌイット村での日々。根は純朴で誠実な彼に村人たちがみる傲慢さは帝国主義の残滓そのもので趣深く、狩人の祖父に憧れる不登校児を伴う狩猟遠征を撮る映像は底抜けに美しい。衝突と宥和を巡る不思議快作。
"Une année polaire" "A Polar Year" https://twitter.com/pherim/status/1152446278304800770
余談。
今回は11作品を扱っていますが冒頭「10作品+α」としたのは、7/27公開『パラダイス・ネクスト』についてはツイートしない予定のため。これまでも、劇場/試写室で観た映画すべてをツイートしてきたわけでは、実はなかったりします。どんなにつまらない映画でも見どころは必ずある、とは思うのだけれど、そういう「面白い⇔つまらない」の軸ではなく扱う気になれない作品というものが稀にあり。
といって長い目で考えたとき、ただ無言を貫くだけというのも少し違う気がしますので、今回は個人的な試行として。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
コメント
07月24日
08:01
1: asuteka
よこがお、猛烈に気になります。
筒井真理子さん、第三舞台当時はこんなにもハリウッドスマイルの似合う女優が日本にいるのか!と驚きました。今の彼女の芝居を観るのが楽しみですね。
07月24日
10:37
2: pherim㌠
『淵に立つ』: https://twitter.com/pherim/status/781071911669215232
の、町工場の奥さま演じる筒井真理子さんも素晴らしいですね。もしまだご覧になってなければ、ぜひ。ネトフリアマプラ等々広く観られるようです。
https://www.netflix.com/title/80115108