今回は、8月2日~8月10日の日本上映開始作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第119弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■8月2日公開作
『世界の涯ての鼓動』
ヴィム・ヴェンダース新作。混迷極まる死地で原理主義の暴力に対峙する男と、光届かぬ超深海での理論探求を志す女との邂逅は、それ自体が世界の神秘への隘路を予感させ刹那的で幻想詩的。ジェームス・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルが、交錯しつつ混じり合わない魂の孤独を凄演する。
"Submergence" https://twitter.com/pherim/status/1154990468775567361
試写メモ63「世界の涯ての鼓動」:
https://tokinoma.pne.jp/diary/3425
ちなみにヴェンダースの現時点における最新作は、教皇フランシスコを扱う
“Pope Francis: A Man of His Word”(2018/日本公開未定)だ。バチカン側からの依頼に応じて撮られ、クローズアップにより教皇本人がカメラを見据えて語る点で、他監督による過去の類似作品群とは一線を画すものとなっている。なおヴェンダース自身は、カトリックの家に育ち、近年プロテスタントへ転向したことが明かされている。
アリシア・ヴィキャンデル扮する「アタランテ号」、かのアタラント号へのオマージュでしょうね。
『アタラント号』:https://twitter.com/pherim/status/1077178900348719107
『風をつかまえた少年』
アフリカ内陸国マラウイを襲う飢饉のさなか、貧困から通学を断念した少年が図書室で独学、風車式ポンプを完成させ村を救う実話物。黄土に映える原色の衣装他、BBC製作の質実さが良い。
『それでも夜は明ける』などの名優キウェテル・イジョフォー初監督作で、父役の演技も出色。
"The Boy Who Harnecced the Wind" https://twitter.com/pherim/status/1155364540705492992
試写メモ64「ひびきあう風車の自然」:
https://tokinoma.pne.jp/diary/3431
『あなたの名前を呼べたなら』
カーストを超える恋物語。ムンバイの高級マンションを主舞台として、農村の因習背負うメイドと都市の新興セレブとの対比により、現代インド社会の諸相を鮮やかに描きだす。服飾デザイナーを密かに夢見る主人公ラトナの見せる内気な笑顔や一見地味な衣装、家庭料理がとても眼福。
"Sir" https://twitter.com/pherim/status/1156034743537766401
来年2月日本公開予定の香港映画、オリバー・チャン監督作
“Still Human”との比較が興味深いので、近日行います。
■8月3日公開作
『サマー・オブ・84』
隣家の警官を連続殺人犯と疑う少年たちの冒険。1980年代リスペクトな音楽から近所のお姉さんへの憧れまで、
『スタンド・バイ・ミー』スリラー版な立ち上がり。けれど従来のジュブナイル物では“やってはいけない”領域へ次第に踏み込み、諸々タガの外れた21世紀今日感ある一作。
"Summer of 84" https://twitter.com/pherim/status/1155672647293734913
見た目のテイストは
『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』から
『ストレンジャー・シングス』へ至るジュブナイル物。けれどビデオゲームやアメコミ、サブカルに取り囲まれた空気のなかで、取り憑かれたように自身の陰謀論的真実を探求しだす結果、意外なリアルが顔を覗かせてくる展開はむしろ
『アンダー・ザ・シルバーレイク』を想わせるpost truth的世界観。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』: https://twitter.com/pherim/status/1050755560511918082
『東京裁判』
瞬く間もない277分作品4Kリマスター。天皇責任の追求志すウェッブ裁判長と、マッカーサーの密命帯びる主席検事キーナンによる、東條英機らへの水面下工作を伴う熾烈な対決など見どころ無数。編集による偏向を懸念したが小林正樹監督他、50万フィート超の記録を丁寧によくぞと感服。
"International Military Tribunal for the Far East" https://twitter.com/pherim/status/1156398221905686528
■8月9日公開作
『カーライル ニューヨークが恋したホテル』
J.F.ケネディが「第二の執務室」と惚れ込み、綺羅星の如きセレブに愛しぬかれた老舗高級ホテルの矜持。いぶし銀のホテルマン&ウーマンたちが慎み深く語り尽くすドキュメンタリーの粋。なかでもバーを映す一幕はバーテンから壁絵、回想される挿話のすべてが垂涎物。
"Always at the Carlyle" https://twitter.com/pherim/status/1157120414226583553
ダイアナ妃とジョブズとマイケル・ジャクソンがエレベーターに居合わせてとか、どういう銀河系軍団の停泊地かよと。+アラン・カミング挿話をめぐり後日追記
『ピータールー マンチェスターの悲劇』
ナポレオン戦争による困窮改善を訴える民衆デモに対し、政府騎兵隊が殺戮に及んだピータールーの虐殺を描く。民衆個々の動きへ焦点化した映像は、レンブラント等の名作絵画が意識され面白い。香港100万デモ直後に鑑賞、今日の日本社会にも通じ考えさせられる。
"Peterloo" https://twitter.com/pherim/status/1156761845723648000
『シークレット・スーパースター』
歌手になる夢を動画投稿で叶えゆく14歳の少女と、DV父から娘を守るため覚醒を遂げゆく母。そしてこのシリアス情湿展開を、抱腹絶倒のパフォーマンスで跳ね返す“脇役”アーミル・カーンの圧倒的存在感。独りでインド映画の新境地を切り拓いてゆくこの男の製作力に乾杯。
"Secret Superstar" https://twitter.com/pherim/status/1157520889073688577
■8月10日公開作
『マイ・エンジェル』
マリオン・コティヤールが、新人ヴァネッサ・フィロの脚本に惚れ込みその初監督作へ出演志願。演じるのは酒と男に溺れ育児放棄する母親役で、心を抉る役柄を選び続ける姿勢に敬服。彼女に拮抗する佇まいの強さもつ8歳の子役による、ネグレクトを跳ね返すクライマックスは感動的。
"Gueule d'ange" "Angel Face" https://twitter.com/pherim/status/1157861642366935040
『カーマイン・ストリート・ギター』
一流のギタリスト達に愛される専門店の穏やかな日々。NYの建築廃材を、残る傷をも活かしギターのボディとする趣向が素晴らしい。古風な頑固店主の唯一の弟子がパンキッシュなピアス女子で、客に時折ナメられつつも師匠一途な姿が愛らしい。マッタリ幸福なる80分。
"Carmine Street Guitars" https://twitter.com/pherim/status/1160039030085435392
おしまい。
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