pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2019年
08月30日
09:18

ふぃるめも120 時のはじまり

 
 

 今回は8月16日~8月30日の日本上映開始作から10作品を扱います。


 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第120弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■8月16日公開作

『イソップの思うツボ』

カメ・うさ・わんこを象る3人娘が中央にどでんと座し、哀愁の親父どもが衛星のように周縁をうごめく21世紀日本の寓話。3監督の1人が『カメラを止めるな!』の上田慎一郎で、予想通りに予想の斜め上ゆく驚かしあり。石川瑠華、紅甘、井桁弘恵各々鮮やか。抱腹安定の川瀬陽太。

https://twitter.com/pherim/status/1161116616970473472



■8月17日公開作

『アートのお値段』

第一級のコレクター&ギャラリスト達が、アート市場の騒擾を明け透けに語る小気味良さに加え、クーンズやリヒターが柔和に振る舞う姿だけでも凡百の美術ドキュメンタリーとは一線画す。抽象表現主義作家翁のリバイバル過程、自作の競売を眺めるナイジェリア女性作家の苦笑など各々妙趣。

"The Price of Everything" https://twitter.com/pherim/status/1160412345505472512

プロデューサーにグッゲンハイム財団の元会長が名を連ねるだけあって、現代美術市場を知るうえで類稀な一作となっている。後日追記。




『鉄道運転士の花束』
誰かを轢くまで一人前ではないという通念の前で、無事故であることに苦悩する青年と、暖かく見守る養父たち。ユーゴ映画とでも呼びたくなる、鮮やかにリバイバルした古典名作を観るような趣き。不思議な死生観をベースに描かれる世界のズレかたに、バルカン映画固有の薫香あり。

"Dnevnik masinovodje" "Train Driver's Diary" https://twitter.com/pherim/status/1160757929261195265




『熱帶魚』
ゆるゆるも突き抜けると凄味になる。少年の恋心から誘拐へ至るドタバタ展開に台湾の南国性、情緒性、食の豊かさのすべてが詰め込まれた万華鏡的世界観。台北の受験戦争や地方格差など’90年代台湾の社会背景が描かれつつ、潜水艦の孤独から都市の空舞う熱帯魚へと夢遊する奔放さは懐かしい。

"熱帶魚" "Tropical Fish" https://twitter.com/pherim/status/1161849705837371392




■8月23日公開作

『ロケットマン』

若きエルトン・ジョンが女神ミューズに魅入られ突き抜けゆく瞬間、ライヴシーンの一体感ほか、『ボヘミアン・ラプソディ』の衝撃波をストレートに踏襲&更新する意欲作。『キングスマン』主演タロン・エジャトン(エガートン)の、表の絢爛と裏の孤独を包摂する憑依ぶりに圧倒され通し。

"Rocketman" https://twitter.com/pherim/status/1165158076606869504


  試写直後ツイートへのリプ by 佐賀さん(CC市民) へのリプ:
  https://twitter.com/pherim/status/1144243512545644544


前の席のご老人連れが『ロケットマン』試写後、「『ボヘミアン・ラプソディ』よりよく出来てた」と仰っていたのが耳に入りましたが、映画として実際より良くまとまっていたし、『ボヘラプ』の反省を明示的にも活かすつくりになっていました。




■8月24日公開作

『聖なる泉の少女』

泉を守る一家の父は衰え、泉の水は枯れ始める。ジョージアの寒村にて、神の化身たる白魚棲まう泉へ象徵される土着の精神と、聖職者や科学者となった息子らが体現する現代との狭間で、少女は静かに懊悩する。人も自然も神さえも等しく内包されるその泉で、少女はやがて全てになる。

"Namme" https://twitter.com/pherim/status/1164007544169230336

  試写メモ67「水の輪郭、少女の夢」: 近日更新
  



『ディリリとパリの時間旅行』
ベル・エポックの絢爛たるパリを、配達用の三輪車で疾駆する少年と籠に乗る少女。太平洋ニューカレドニアからやって来た褐色の少女ディリリと、当代随一の文化人たちとの邂逅が逐一楽しい。さらにはアール・ヌーヴォーに彩られた街に古い下水道とカタコンベの地下世界と、全編かわゆすな眼福作。

"Dilili a Paris" "Dilili in Paris" https://twitter.com/pherim/status/1162922199503630337




■8月30日公開作

『トールキン 旅のはじまり』

寄宿舎学校からオックスフォードを経て戦場へ。内装や衣装の作り込みが、妻となる孤児との出逢いや、言語学教授との変人的師弟関係など人間味溢れる挿話群を引き立てる。幻想と魔術の指輪物語世界の底に息づく、親友たちとの戦争による離散がもたらした創作への堅い決心。

"Tolkien" https://twitter.com/pherim/status/1165500001033707520

  試写メモ66「トールキン 終わりが始まり」:
  https://tokinoma.pne.jp/diary/3463





『ブラインドスポッティング』
ずっと一緒に育ってきた親友同士なのに、少しずつ何かがズレていく。見えているのに見えていない、微細で複雑に折り重なる意識格差のレイヤーがある瞬間に突如差別という形をとる恐さ。現代の黒人差別を描く米国映画が近年豊作続きだが、本作はテンポの良さで他に秀でる。

"Blindspotting" https://twitter.com/pherim/status/1167267673350103040




『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
タランティーノによる、シャロン・テート殺害事件への全力追悼作。ディカプリオ&ブラッド・ピットの応酬が超絶面白い。
1969年8月のハリウッドをほぼCGなしで再現し切る眼福、LAの光とマンソンの闇、マカロニウェスタンの哀愁とダダ漏れる映画愛。

"Once Upon a Time In Hollywood"


  試写メモ65「タランティーノが目指す場所」:
  https://tokinoma.pne.jp/diary/3459







 余談。ディカプリオ&タランティーノ来日会見いってきましたよの連ツイ継続中↓
 https://twitter.com/pherim/status/1165813975264530434

 ちなみにハリウッド大物俳優の記者会見で挙手して質問できたのは、記憶のかぎり外国人記者クラブでの1度のみ。
 相手はレイチェル・マクアダムスでした。
 ツイッターでは言えない思ったことも色々あるので、そのうち日記別立てするかもですん。
  



おしまい。
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