今回は9月28日~10月11日の日本上映開始作と、ヤスミン・アフマド特集上映作から10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第122弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■9月28日公開作
『エセルとアーネスト ふたりの物語』
牛乳配達の青年によるメイドへの求婚から始まる、『風が吹くとき』の絵本作家レイモンド・ブリッグズが描く両親の物語。ロンドンの労働者住宅の暮らしは貧しいながらも愛に溢れ、戦間期やナチス空襲下の精密な生活再現描写はまさに
『この世界の片隅に』欧州版。
"Ethel & Ernest" https://twitter.com/pherim/status/1177419828325339137
『お嬢ちゃん』
向こうっ気の強い女子が、平穏な日常の奏でる倦怠と惰性に汲々とする己を持て余す。萩原みのりの目ヂカラ演技に惚れる。二ノ宮隆太郎監督新作でこのタイトルは前作
『枝葉のこと』の♀版が観られそう、という事前の期待値を遥かに凌駕する快作。鎌倉の夏、のっぺりした白昼に咲く亀裂。
https://twitter.com/pherim/status/1177050699034550272
『全裸監督』での、國村隼演じるヤクザの舎弟役出演で見せた朴訥な存在感も強烈だった二ノ宮隆太郎監督、『お嬢ちゃん』は萩原みのりが好きで仕方ない(もちろん役者的に)のがよく伝わってくる画作り。この一本気表現は清々しい。二ノ宮監督の長編デビュー作
『枝葉のこと』を紐づけ。
『枝葉のこと』:https://twitter.com/pherim/status/993687008961703936
あと片山健の絵本傑作『どんどんどんどん』の真性の映画化作という
『枝葉のこと』の印象が
『お嬢ちゃん』で更新、もはやどんどんの極み監督という心象。
『バオバオ フツウの家族』"親愛的卵男日記" "Bao Bao"
台湾発LGBTs妊活映画。各々子供がほしいゲイカップル♂がレズカップル♀へ精子を融通する。演出/編集に拙さが目立ち、揃い踏みする主人公らの親達も造形が平板ながら、ロンドンと台北という地理的な隔たりが4人個々の孤絶感に呼応する設定や、テーマの独自性に光るものあり。
"親愛的卵男日記" "Bao Bao" https://twitter.com/pherim/status/1174879851280400384
■10月4日公開作
『典座 -TENZO-』
空族超躍。“寺院消滅”問題から寺嫁の苦悩、葬式仏教批判まで取り込むヤバさはまさしく
『バンコクナイツ』の対極続編。空族映画の素人演技がもつ中毒性の由来は、演技の巧拙を超えた台詞と佇まいの真にあるのだと把握。東日本震災後の荒野が、爆撃の爪痕残すラオスの大地と共鳴する。
https://twitter.com/pherim/status/1178868593804509185
試写直後連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1148774271369375744
響きあう本日。ふつう午前に試写は行かないのだけれど、典座となればむしろ朝4時半に座して然るべし感もあり、これよりマスコミ試写初回。てか永平寺で典座経験あるアラフォー僧侶主人公って、親近感ありまくり楽しみ。以降、音楽的系譜。夜は
《響き合うアジア》東南アジア映画特集最終回、参るす。
空族
『典座』超展開。「寺院消滅」問題から寺嫁の苦悩、葬式仏教批判まで取り込むヤバヤバの快作でした。空族映画の素人演技がもつ中毒性の由来が、演技の巧拙を超えた台詞と佇まいの真にあるのだと把握。総持寺公式PRっぽい予告編から遠い、ギリギリの剣ヶ峰ゆく
『バンコクナイツ』の対極続編来了。
空族作品連ツイ紐づけ。
『サウダーヂ』『国道20号線』『バンコクナイツ』《潜行一千里》他。メコン川祭祀、アピチャッポン映画との連環なども。
空族作品連ツイ: https://twitter.com/pherim/status/830768555998130179
『典座 -TENZO-』はこうした流れ(ex.インドシナ仏教文化へのリスペクト)とは無縁の文脈で観るひとが多そうなのが、逆に興味深いですね。
『エンテベ空港の7日間』
ハイジャック機居座る他国の空港を急襲する、史上にも稀な人質救出作戦の真相描く。ドイツ赤軍の実行犯演じるロザムンド・パイク&ダニエル・ブリュールの流暢なドイツ語熱演に驚かされ、パレスチナ闘士の勇壮な独白やイスラエル首相ラビンと国防相ペレスの静かな対峙に圧倒される。
"Entebbe" "7 Days in Entebbe" https://twitter.com/pherim/status/1180372955089367040
※劇中の舞踊団中心に後日追記予定
■10月5日公開作
『ホームステイ ボクと僕の100日間』
森絵都『カラフル』の、ロイクラトン他タイ演出が楽しい映画化作。BNK48チャープランをヒロインに迎えたキレッキレな画作りに『バッド・ジーニアス』を感じたら同じGDH559製作で、GTH継ぎ韓流脇目にアジア圏エンタメ映画の一方の極となりつつある勢いに眩暈さえ。
"โฮมสเตย์" "Homestay" https://twitter.com/pherim/status/1179593658112176128
■10月11日公開作
『細い目』
マレー系少女オーキッドと、華僑系少年ジェイソンの恋。香港映画が好きな“変わり種”と露店で海賊版ビデオ商う不良を金城武が結ぶ構成の芳しい時代感。多様性押し出す序盤の硬さを後半で見事に昇華、不朽の名作
『タレンタイム』への階梯あがる監督ヤスミン・アフマドの確かな足取りを聴く。
"Sepet" https://twitter.com/pherim/status/1151693163146252289
ヤスミン・アフマド映画、未見の人にはまず
『タレンタイム~優しい歌』だけでも観てと懇願したく。劇場で観た人の多くが生涯ベスト1に挙げるほど奇跡の作品です。昔みた人にも再鑑賞お奨め。例えば↓動画3分の内にも人ならざる天使と精霊が。朗らかヤスミン文法じつは深淵。
https://twitter.com/pherim/status/1086439799936806912
ヤスミン・アフマド
『細い目』、10/11より全国順次公開。女優シャリファ・アマニの代名詞的役柄となったオーキッド連作の第一作です。
『タレンタイム~優しい歌』に感動した人、マレーシア文化の混淆模様やプラナカン意匠に興味のある人などぜひ。いろいろな発見がありますよ。
■没後10周年記念 ヤスミン・アフマド特集@イメージフォーラム渋谷
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/2524/
『グブラ』
ヤスミン・アフマド、凄すぎて泣ける。『細い目』から数年後の物語でオーキッドの夫の不倫と、娼婦姉妹とムスリム聖職者夫婦の織りなす悲話が並走する。和解した華人夫婦が廟へ祈る姿に、教会で聖句読むジェイソン兄と、コーラン諳んずる姉妹が重なる終盤からラストへの神懸かり転回に涙。
"Gubra" https://twitter.com/pherim/status/1161524004915691520
『15マレーシア』
ヤスミン・アフマド遺作短編"Chocolate"含む、ピート・テオ製作の15監督オムニバス。全てヤスミン没後2ヶ月以内に完成され、ヤスミン映画常連の熟練俳優たちが若手監督らの各作へ散らばる様は、彼女の遺伝子継承をみるようで熱い。(link:
http://15malaysia.com/) 15malaysia.com 等にて全作鑑賞可(英字幕)
"15Malaysia" https://twitter.com/pherim/status/1156139620792328193
■日本公開中作品
『天気の子』
東京の地べたをきょうも這いずり回る人々の上空を、少年少女がイルカのように泳ぎ回る爽快さ。新海誠十八番の新宿キレイキレイの術が池袋・神楽坂上や田端にまで降り注ぎ、築地・月島などもチラ見せ眼福。『君の名は。』の表層だけを剥ぎ天日干しにした軽さしかない仕上がりこそ今日的な。
"Weathering With You" https://twitter.com/pherim/status/1178502640310747136
台風、史上最大との形容も目にしましたが、お天気娘の活躍を祈りたく。
直撃圏のみなさま、どうぞお気をつけてお過ごしくださいませ。
おしまい。
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