pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
01月12日
00:11

ふぃるめも129 東京フィルメックスの弐・特別招待作品

 
  

 今回は、第20回東京フィルメックス上映作から特別招待作・特別上映作など12作品を扱います。(含短編1作/再掲1作)

 ※同映画祭コンペティション部門全10作については「ふぃるめも127」にて。
  →ふぃるめも127: https://tokinoma.pne.jp/diary/3599
 

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第129弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)



■第20回東京フィルメックス特別招待作品
 https://filmex.jp/2019/

『シャドウプレイ』
広州の摩天楼直下に残る半ば廃墟化した“村”という、中国現代を象徴する舞台がひたすら眼福。実際の汚職事件を元に『ブラインド・マッサージ』の婁燁(ロウ・イエ)が、香港台湾を包含し30年の時間軸もつ刑事劇を組み上げる。時系列の錯綜が過剰だが、検閲に2年かかった時代性の表出とも。

"风中有朵雨做的云" "The Shadow Play" https://twitter.com/pherim/status/1198449373157326848




『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』
婁燁の妻であり脚本家の馬英力(マー・インリー)によるメイキング。中国の大都市暗部への焦点化がいかに困難かを赤裸々に映しだす。現場での格闘を経てなお検閲との熾烈な持久戦が待つ展開は、中国国内では到底上映不可能。極めて見応えあり。
[動画見当たらず]
"梦的背后" "A Documentary on the Shadow Play" https://twitter.com/pherim/status/1198803747205287936




『ヴィタリナ(仮題)』 “Vitalina Varela”
現代映画の一極点。カーボヴェルデからリスボンの貧民窟へ来た妻は、夫の死を知りなお留まる。大洋の両岸へ引き裂かれた魂魄を、光と闇の両界が輪郭づける。『ヴァンダの部屋』から20年、『ホース・マネー』の先で更なる昇華遂げるペドロ・コスタ、その戦慄。

"Vitalina Varela"

※2020年夏に東京・渋谷ユーロスペースにて公開との情報あり。




『完全な候補者』
サウジアラビアの女医マリアムは、永遠に終わらない病院前の道路工事に業を煮やし、地元市議へ立候補する。女医より男性看護師の診断が信用される旧弊のもと立ちはだかる壁の数々とその向こうに覗く希望を、『少女は自転車に乗って』のハイファ・アル=マンスール監督が活写する快作。

"The Perfect Candidate" https://twitter.com/pherim/status/1210789934086291456

『完全な候補者』の主人公名マリアムは、マリアのアラビア名。聖母イメージの援用とも。本作序盤で感動的なのは、マリアムが自ら車を運転し通勤している場面。女性が自転車に乗ることさえ不道徳に見られる様を描いた『少女は自転車に乗って』の監督作だけに、このさりげない一幕が熱い。

  『少女は自転車に乗って』https://twitter.com/pherim/status/484115096273043457

なお主人公の父親はウード奏者で、属す楽団がテロの脅迫に怯える光景も描かれ印象深い。イスラームや海挟むインド文化圏、さらに上座部仏教圏での舞楽蔑視から欧州ロマの苦悶まで、音楽への抑圧の歴史に思い馳せさせられる一幕。




『ある女優の不在』
イラン当局抑圧下の名匠ジャファル・パナヒ監督新作。自殺動画を残して消えた少女の謎を監督と女優が追うなか、トルコ語圏アゼルバイジャン州の僻村が不気味さを増し、果てはイラン映画史の悲劇まで顔を覗かせる。師匠筋キアロスタミからの借景も意味深な、真の映画史的怪作来れり。

"Se rokh" "3 FACES" "Three Faces" https://twitter.com/pherim/status/1200988434304626689

  パナヒ前作『人生タクシー』https://twitter.com/pherim/status/852829527315144705

イランは現役の優秀な亡命監督を多く輩出している国でもありますが、故国に留まり政府の禁制(製作禁止30年の処分etc.)を出し抜いて奇作傑作を生み出しつづける彼のバイタリティたるや。




『カミング・ホーム・アゲイン』
『ジョイ・ラック・クラブ』『スモーク』
から四半世紀、「映画を一から学び直している感覚」と語るウェイン・ワン監督新作は、韓国系米国人作家の描く母と韓国料理の物語。自己模倣ゆえか中国系監督のみる韓国精神文化への新奇さなのか、一貫した渇いた距離感が印象的。

"Coming Home Again"




■第20回東京フィルメックス特別招待作品 フィルメックス・クラシック
 https://filmex.jp/2019/

『牛』“گاو”
イラン映画1969年の画期作。牛愛でる親父が留守の間に最愛の牛が死亡、親父の愛を知る村人達は牛が失踪したと口裏合わせるが親父は心神喪失、牛へ同化し始める。秘密を守るため知的障碍者を隔離し、小さな嘘が雪だるま式に膨張するなど象徴的な描写の逐一を、陰影の濃い映像が際立たせる。

"گاو" "The Cow" "Gaav" https://twitter.com/pherim/status/1210069670276952064

ちなみに1979年イラン革命後の映画禁制下、『牛』“گاو”をホメイニ師がホメたことから、イラン映画は製作再開されたという。つまりダリウシュ・メールジュイ監督の本作なしにキアロスタミ、マフマルバフ、パナヒもない文字通りの画期作。なお数ある牛映画中でも『東北タイの子』が想起され。

  『東北タイの子』https://twitter.com/pherim/status/836407413989232641

1979年イラン革命後の映画禁制下、『牛』“گاو”をホメイニ師がホメたことから、イラン映画は製作再開されたという。つまりダリウシュ・メールジュイ監督の本作なしにキアロスタミ、マフマルバフ、パナヒもない文字通りの画期作。数ある牛映画中でも『東北タイの子』が想起され。




『HHH:侯孝賢』
オリヴィエ・アサイヤスによるホウ・シャオシェン密着ドキュメント@’97年。稀代の監督同士ながら焦点を映画に特化せず、侯が少年期を過ごした街で幼馴染に会う様子などを楽しげに追う構成の軽快さ。映り込む90年代の台北城市もいまや侯映画的。長渕剛「乾杯」を熱唱する侯翁かわゆす。
[動画見当たらず]
"HHH- Un Portrait de Hou Hsaio-Hsein" "HHH: A Portrait of Hou Hsaio-Hsein" https://twitter.com/pherim/status/1213309052484116480




『フラワーズ・オブ・シャンハイ』
清末の上海遊郭を舞台に、トニー・レオンが贔屓の旦那を気だるく演じる。19C末の呉語小説『海上花列伝』を張愛玲が北京語へ訳出、侯孝賢が1998年に映画化。その4K修復版は、執念の画角固定に撮影監督李屏賓(リー・ピンビン)の静かな闘志感得されるマッタリ眼福作。

"海上花" "Flowers of Shanghai" https://twitter.com/pherim/status/1211876706526478336

『フラワーズ・オブ・シャンハイ』終幕後Q&Aにオリヴィエ・アサイヤス登壇。トニー・レオン上海語演技トライしたができず、広東省役人の設定に。侯孝賢と盟友李屏賓は現場で対立したかとの質問には、『戯夢人生』『憂鬱な楽園』の方が主張真逆だったとアサイヤス。友という以上に凄い侯孝賢フリーク。
東京フィルメックス

あとFilmarksの原題表記、現状“上海花”とあるけど誤り。正しくは“海上花”。後者のほうがずっと薫香豊かですね。




『大輪廻』
男女3人が転生しゆく台湾映画’83。大陸出身3監督が輪廻観通し中台の紐帯想う切なみ。胡金銓(キン・フー)の明朝時代活劇が『七人の侍』級の密度で圧倒し、清末民国初の京劇一座メロドラマから、台湾離島での乩童(霊媒師)息子と旅芸人娘の悲恋物へ。いかにも80年代アイドルな彭雪芬、很可愛。

"大輪廻" "The Wheel of Life" https://twitter.com/pherim/status/1214833916403535872




『空山霊雨』
古寺の継承者選抜と水面下のお宝争奪が並走する、胡金銓(キン・フー)監督作’79。玄奘直筆の大乗起信論を奪い合う点グッとくるし、徐楓(シュー・フォン)扮する冷笑女賊に小太り忍者、越後屋悪代官から弁慶風味な山伏僧まで、多彩キャラが跳び交う韓国林中ロケの動的映像美がたまらない。

"空山霊雨" "Raining in the Mountain" https://twitter.com/pherim/status/1218499288621142016




■第20回東京フィルメックス特別上映作品
 https://filmex.jp/2019/
 
『狼煙が呼ぶ』
拳銃不法所持で逮捕不起訴となった豊田利晃監督が、事件への極私的応答に現代社会風刺を重ねる渾身短篇。近代法の施行以前に銃の記憶を手繰り警察権力への意趣返しを挑む前傾姿勢に、切腹ピストルズの音楽がなお発破をかける。渋川清彦放つ音無しの激昂受け止める浅野忠信微笑の凄味。

https://twitter.com/pherim/status/1214015089335918592

役者の一人が頭巾に羽織姿で劇場内を練り歩く前口上が豪快で、監督x明け方まで呑んでいた渋川清彦さんのトーク楽しす。

  鑑賞日ツイ: https://twitter.com/pherim/status/1200942558735523840

朝イチにて東京フィルメックス会場へ。
何やらありがたきもの頂戴せり。(ありがたきものの撮影リンク先↑)





おしまい。
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