今回は、1月17日~1月24日の日本上映開始作から10作品+αを扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第130弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■1月17日公開作
『リチャード・ジュエル』
イーストウッド90歳翁の撮る《ジ・アメリカ》シリーズ最新作。1996年アトランタ五輪時にテロを察知し多くを救った警備員が、焦るFBIのリークから容疑者としてメディアに糾弾される。正義と権威の堕落を逆照射する不良的弁護士役サム・ロックウェルのカッコ良さに度々痺れる。
"Richard Jewell" https://twitter.com/pherim/status/1216198235305365504
『オリ・マキの人生で最も幸せな日』
フィンランドで国中の期待を背負い世界タイトル戦のリングへ立つボクサーの、すこし風変わりな道行き。あしたのジョーの苦渋はなくロッキー調の克服もない、スポ根物の北欧的アンニュイな換骨奪胎ぶりが良い。16mmモノクロームの柔らか空気感を新作で味わう妙趣。
"Hymyilevä mies" "The Happiest Day in the Life of Olli Mäki" https://twitter.com/pherim/status/1215875105017884673
ちなみに『オリ・マキの人生で最も幸せな日』は実話ベースの作品だけれども、映画で描かれるタイトル戦の相手デビー・ムーアは、試合に起因する夭折が『あしたのジョー』の力石徹死亡シーンに引用されたとのこと。そうと知らずにツイートしたけど、まさに対照的な作品だったのね。
「オリ・マキの対戦相手は伝説のデビー・ムーアだった!」: http://enterjam.com/?p=244263
『コンプリシティ 優しい共犯』
研修先から失踪した中国人技能実習生が、身分を偽って蕎麦屋で修行する日々。大陸の老母との回想場面や頑固店主(藤竜也)との交流は熱く、張り切りすぎて着地にブレ出た感あるも希望醸す締めが良い。あと若い男女が異言語で合唱するだけで泣けるテレサ・テンの懐深さとか。
"Cheng Liang" "Complicity" https://twitter.com/pherim/status/1217329646682832897
『ジョジョ・ラビット』
ヒトラーユーゲントで奮闘する少年が、自宅屋根裏にユダヤ人少女を見つけ恋してしまう成長譚。逞しき母役スカーレット・ヨハンソンとやさぐれナチス士官役サム・ロックウェルが、夢見がち少年の道行きを両脇できっちり締める。マオリに血筋もつ監督&脚本タイカ・ワイティティの好距離感。
"Jojo Rabbit" https://twitter.com/pherim/status/1213719980547559424
『私の知らない私の素顔』
ジュリエット・ビノシュ扮する50代の教授が、24歳女性と偽りSNSで知り合った優男に、不覚にも溺れてしまう。精神科医の面前で無自覚の欲望を曝けだす教授にほだされ、女医も幽かに狂いだす転移展開が良い。決断的に覚悟を固めるくだりで見せる、ビノシュの表情演技が凄艶。
"Celle que vous croyez" "Who You Think I Am" https://twitter.com/pherim/status/1215126687303655425
ジュリエット・ビノシュ、何度目かの盛期到来な観。
『ボーイ・ミーツ・ガール』の頃からずっとそうだけど、この人の場合美貌がどうとか演技がどうとかより、輪郭の外側に横溢しスクリーンを占める透明な制圧力みたいなものにヤラれるんだよな。何言ってんのかよくわかんないけど。
『冬時間のパリ』:https://twitter.com/pherim/status/1206049955112075266
『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』
1862年、酸素ボンベなし高度11277mの未だ破られない記録に達した気球乗りがいた。気象学の定礎目論む青年の大志と、人類未踏の世界へ挑む未亡人の探検家魂。宙空絶景下でのエディ・レッドメイン&フェリシティ・ジョーンズの二人劇は見応え高高度。
"The Aeronauts" https://twitter.com/pherim/status/1214429593299349505
主演タッグの組み合わせはホーキング博士テーマの下記作以来。
『博士と彼女のセオリー』: https://twitter.com/pherim/status/569496474200907776
■1月18日公開作
『オルジャスの白い馬』
カザフスタンの大草原を駆ける馬と、草原の民の伝統的な暮らしを撮る映像が逐一眼福な草原製ウエスタン。ただ馬術に浅い森山未來の馬上近接とスタント使用のロングショットでの激しい落差など製作の微妙さ露呈する場面も若干目立ち、役者たちの現場対応力を愛でる映画とも。
"Horse Thieves" https://twitter.com/pherim/status/1216621427131998208
『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』
とても風変わりで幸福な鑑賞体験。アゼルバイジャンを舞台に老いた鉄道運転士が、列車に引っかかったブラジャーの持ち主を探し村をさまよう不可思議物語が、全編セリフなしで進行する。テロップも字幕も皆無の言語野お休みモードなうえ音作りが繊細で、予想外の快感シャワー浴びた感。
"The Bra" https://twitter.com/pherim/status/1217643668515033089
しかしおっぱいがいっぱいなのだとしても、この邦題はあまりにも。せっかく先行する国内映画祭での直訳型タイトルからの変更を試みたのに、少しも改善されないこうしたケース結構みる。ギャラ代ケチらず、きちんと語感ある作家なり詩人なりに邦題頼めばいいのに。芸能人/著名人にもらうコメント数十本より遥かに効く。
あとドニ・ラヴァンの脇役出演、久々に観たけど良かったな。
■1月24日公開作
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』
バカ売れ必至の小説出版を巡る機密保持のため、翻訳家を幽閉した屋敷地下で起こるミステリー。原本流出の謎や、脅迫下で多言語話者同士が複数語を暗号的に使用する一幕など知的スリル充溢、また創作の根源や翻訳家の矜持など輻輳テーマの堀り下げが地味に良い。
"Les traducteurs" "The Translators" https://twitter.com/pherim/status/1218754522689884160
『イーディ、83歳 はじめての山登り』
スコットランドを舞台に《なぜ登るのか、そこに山があるからだ》を高齢女性の生き様へ重ねる直球登山映画。ハイランド絶景の魅力が存分に活かされつつ、山岳用品マニア化する場面、高度差への無知から陥る窮地など、登山初心者あるあるな細部描写も逐一楽しい。
"Edie" https://twitter.com/pherim/status/1219842125568692224
余談。
イラン文化財への攻撃示唆に対抗する #IranianCulturalSites へ連なりとう。広くイラン映画事情にも言及してます
あるイラン人監督の祈りと覚悟 | キリスト新聞社HP:
https://twitter.com/pherim/status/1216544362139488257
米大統領が遺産への攻撃=国際法違反をのたまう昨今、バーミヤン磨崖仏爆破の頃とは変わりましたねこの世界。
おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh