今回は2月8日~2月28日の日本上映開始作から10作品を扱います。(含再掲1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第133弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■2月8日公開作
『巡礼の約束』
ラサへの五体投地巡礼を決心する妻、とまどう夫、わだかまる息子。傑作『草原の河』から3年、さらに物語的厚み増すソンタルジャ新作は、遺灰を混ぜた携帯仏ツァツァや灯明の花など小道具の逐一までが味わい深い。終盤で旅に加わる母なしロバの、全て持っていきかねない名演がまた妙趣。
"阿拉姜色" "Ala Changso" https://twitter.com/pherim/status/1225250426045419520
ソンタルジャ監督前作『草原の河』:https://twitter.com/pherim/status/855573075122724864
『巡礼の約束』、ソンタルジャ監督+主演ヨンジョンジャさん(チベットの代表的歌手)にインタビューしました。ギャロンの地方文化と仏教的世界観、《チベット》の記号化への抵抗と中国の検閲、監督次作&次々作詳報など。
「巡礼の約束、チベットの気脈」:http://www.kirishin.com/2020/02/10/40878/
なお拙記事「巡礼の約束、チベットの気脈」↑では、ソンタルジャ監督過去作のほか下記5作へ言及、近年のチベット関連映画を概観する流れを試みました。
ラサへの歩き方 祈りの2400km
ゲンボとタシの夢見るブータン
気球
チベット ケサル大王伝 最後の語り部たち
The Sweet Requiem
■2月14日公開作
『1917 命をかけた伝令』
どんどん進む、ずんずん走る。このシンプルな展開が清々しい、高精細高機動による没入系映像表現という
『バードマン』から
『ダンケルク』へ至る流れの完全上位互換作。カンバーバッチやコリン・ファースが主演リチャード・マッデンの繊細なる朴訥ぶりを活かしまくる構成の妙。
"1917" https://twitter.com/pherim/status/1228537328332750850
『彼らは生きていた』:https://twitter.com/pherim/status/1218159652321366016
『1917 命をかけた伝令』に比べ注目度は今ひとつながら、同じ第一次大戦の欧州戦場を舞台とするドキュメンタリー秀作
『彼らは生きていた』も、劇場で観る意義の大きな作品としてお勧めします。(国内ロードショー中)
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』
寡黙なクリステン・スチュワートをひたすら愛でる一作。謎の美少年作家を巡るスキャンダルを、少年に偽装した女性サヴァンナ視点で映画化した本作、サヴァンナ本人の脚本&製作参加や、当時交友のあったコートニー・ラヴの出演など見所が多層的。
"Jeremiah Terminator LeRoy" https://twitter.com/pherim/status/1225976700070055936
『作家、本当のJ.T.リロイ』(2016年製作のドキュメンタリー映画):
https://twitter.com/pherim/status/850606405950218240
↑こちらは実際に本を書き、取材時やパーティなどではマネージャーに偽装していた当時アラフォーのローラ・アルバート主体。
■2月21日公開作
『チャーリーズ・エンジェル』
クリステン・スチュワートの意外なるキレッキレ殺陣&アクションかっこよす。エンタメ作の鑑のごときテンポ良さと、キャメロン・ディアス版のリブートでなく同一世界観の20年後という設定が楽しい。リアル格闘技経験活かし準主役ゲッツの新人エラ・バリンスカも効いてる。
"Charlie's Angels" https://twitter.com/pherim/status/1228149221661896706
上掲作
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』との、クリステン・スチュワートが見せる静動のあまりにも鮮やかな対照性。彼女のファンであれば立て続けに観るのも吉。
『Red』
夏帆やばい。その眼に宿る色相の変化だけで語り切る表現力、抑えに抑えた感情ほとばしる艶やかさ。そして受けとめる妻夫木聡の包容力。建築家宅の空疎な中庭や商社マン一家の虚栄たゆたう豪邸、越後の酒蔵や柄本佑が遊ぶ屋形船からバッティングセンターへの転回など建築ギミックも目に楽しい。
"Red" https://twitter.com/pherim/status/1226711689493504001
『ダンサー そして私たちは踊った』
ジョージアの国立舞踊団で稽古に励む勤労青年が、同性愛に目覚めることで舞踊団の誇る伝統と格式への挑戦者と化す。古老が青年の指先の動きに鋭く反発し、偽装恋人や伴奏者らが青年の覚醒を即興的に寿ぐなど表現性の高い構成は見事。落伍者兄貴の諦念が泣かせる。
"And Then We Danced" https://twitter.com/pherim/status/1226344413862907904
『名もなき生涯』
オーストリア山村に暮らす農夫が、ヒトラーへの忠誠を拒んで処刑されるまでの日々。無名の男が貫く魂の誠実を圧倒的な風景描写により語らせる、テレンス・マリック孤高の達成。夫婦の覚悟を畏れつつ見捨てる司祭や判事(ブルーノ・ガンツ)の苦悶と、排斥する村人らの相貌に戦慄する。
"A Hidden Life" "Radegund" https://twitter.com/pherim/status/1230430112287354881
試写メモ76:近日更新
『スキャンダル』
#MeToo 興隆前の’16年にFOXテレビを激震させたセクハラ事件を描く。マーゴット・ロビー&ニコール・キッドマンは元より、シャーリーズ・セロンのメーガン・ケリーなりきり特殊メイクと精悍な佇まいに震撼。実はレズで左派だがFOXだけ就活通った同僚役ケイト・マッキノンが地味に光る。
"Bombshell" https://twitter.com/pherim/status/1227421852819001344
■2月22日公開作
『うたのはじまり』
ろうの写真家・齋藤陽道が、うたと出会う道のり。授かった息子を腕に抱きふとこぼれた子守り唄から、閉ざされた感覚の向こう側へと歩み出る冒険描写の鮮烈。うたの源は、こんなにも眩しく熱いのか。七尾旅人と飴屋法水の齋藤へ向けた真摯な眼差しに、表現者のみが宿す本気をみる。
https://twitter.com/pherim/status/1230696362804563969
■2月28日公開作
『エスケープ・ルーム』
量子物理学ギミックから密室脱出劇へ。リアル脱出ゲームでシリーズ化を狙うならコレという要素をテンポ良く抑え感心。インシディアス&パラノーマル監督+ワイルド・スピードのニール.H.モリッツ製作のエンタメ盤石構成。
『デアデビル』のデボラ・アン・ウォール、不意の勇躍。
"Escape Room" https://twitter.com/pherim/status/1231075562086490112
バンコクにて初見時ツイ:https://twitter.com/pherim/status/1102902154392530948
余談。
まあ、あれです。すこし世上『パラサイト』で騒ぎすぎ、かな。
この2月3月の日本公開作、かなり異様なのですよ。局面局面では『パラサイト』より良い映画、少なくないです。業界の構造的に例年秀作の固まりやすい時期ではあるのだけれど、にしても異様。コロナの影響が残念ではあれ。
おしまい。
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