pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
09月10日
23:59

ふぃるめも150 不屈のバタフライ

 
 

 今回は、9月11日~12日の日本上映開始作と、小田香特集上映作などから12作品を扱います。(含短篇3作/再掲1作)

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第150弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)


 
■9月11日公開作

『ミッドウェイ』

豊川悦司の山本五十六役が驚きのガチ嵌り。真珠湾からの苦渋に満ちた舵取りを熱演、浅野忠信vs國村隼の対立構図も痺れる。
ウディ・ハレルソンら扮する米側将兵が無論主役ながら、変な日本語皆無の構成に名匠ローランド・エメリッヒの気魂みる。終盤の海戦進行は凄絶迫真マジ震撼。

"Midway" https://twitter.com/pherim/status/1302092797441241088




『ソニア ナチスの女スパイ』
大戦下ノルウェーで女優ソニア・ヴィーゲットは、ナチス高官とスウェーデン諜報部から登用され二重スパイとなる。
女優として戦後も長く活動したソニアの、暗躍の軌跡。描かれる情報リスクに対する身体感覚が、監視社会化の進行する今形を変え再襲来しつつあるリアル。

"Spionen" "The Spy" https://twitter.com/pherim/status/1300035914119274502


  映画評 by pherim 「敵対と猜疑のゆくえ 再監獄化する世界2」:
  http://www.kirishin.com/2020/08/28/44943/





『チィファの手紙』“你好,之华”
初恋相手との不意の再会。光も音も純然たる岩井俊二ワールドの中、現代中国映画を牽引する名優たちが躍動するアジア新世紀感。
とりわけ周迅(ジョウ・シュン)の瑞々しさは圧巻で、香港娯楽映画の名匠ピーター・チャン製作というこの流れ、今後の錬成がとても楽しみ。

"你好,之华" "Last Letter" https://twitter.com/pherim/status/1302475513798168578

中国でのPRイメージが素敵で、ヒロイン周迅を囲むのはなんと岩井俊二と陳可辛(ピーター・チャン)。この点めぐり後日ツリー化予定。




『スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話』
『最強のふたり』のトレダノ&ナカシュ監督が、福祉系NPOで働く2人の男に焦点化。
ヴァンサン・カッセルと共にレダ・カテブがW主演抜擢され極私的喜悦の極み。演技素人の自閉症児らによるダンスが完成されゆく様は感動的。

"Hors normes" "The specials" https://twitter.com/pherim/status/1302800731586535426

  『最強のふたり』:https://twitter.com/pherim/status/1243642279740485632

『スペシャルズ!』でヴァンサン・カッセルと二枚看板を張った、レダ・カテブ(Reda Kateb, رضا كاتب)への着目ツイート紐づけ。実は芸能一族出身、いい感じに中年の脂も乗り、今後も躍進必至です。

レダ・カテブですよ、レダ・カテブ。
ゴリ推し。


  レダ・カテブ着目ツイート:https://twitter.com/pherim/status/1279769507498561537


ちなみに元のフランス語題"Hors normes"は、「ふつうじゃない」の意。英題では"The specials"とポジティヴ要素が加わり、邦題ではいつもの以下略。本質を覆い隠す言葉の側面に慎重でない限り、どんな形容も賛辞さえもつねに無粋かつ無様に本来の美質を削ぎ落としてゆくのです。邦題つける時はさ、奢らず一人でいいから言葉の専門家入れなよっていつも思う。




『東京バタフライ』
ど直球の青春音楽映画。業界の洗礼に抗って空中分解したバンドの面々が歩むその後を丹念に描くことで、音楽への情熱の一様でない在りかたが浮かび上がる光景は感動的。
主演・白波多カミンの存在感ゆえか、2020年の今だからこそ問答無用に一直線で迫りくるリアルの肌触りが熱い。

""https://twitter.com/pherim/status/1303889854279770112




『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』
ブラジルの天才ピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンス受難の生涯。
右手を襲った事故を克服するや左手の神経が。しかし病弱な神童期以来のガッツで前進する。娼館での放蕩などユーモラスな若き日と、血流す演奏など格闘の後半生とのコントラストは鮮烈。

"João, o Maestro" https://twitter.com/pherim/status/1304052493538611200




■9月12日公開作

『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』

墨絵調の描写によりレイモンド・カーヴァー短篇「シェフの家」を翻案、1%差で破れた’95年ケベック州独立運動を盛り込む風変わりなアニメ作品。
アル中の自身、夫妻の復縁、住民投票と折り重なる再定義の契機。『父を探して』『手をなくした少女』のニューディアー配給。

"Ville Neuve" "New Town" https://twitter.com/pherim/status/1304268420666601472

  
 

■『セノーテ』公開記念 小田香特集2020 光が溢れ出す―― @ケイズシネマ
 http://www.ks-cinema.com/movie/odakaori2020/

『鉱 ARAGANE』2015
自転公転を続けるこの地上から取り残された坑道の奥でそれは滴り、それは煌めく。闇へ作動音を響かせる重機群、蠢く坑夫の肉体群。坑内深部へ女性監督が分け入ることの珍しさも、ボスニアの炭鉱で日本人の若手が撮ることの新奇さも吹き飛ばす映像と音の胆力にただ圧倒される。

""(ふぃるめも75) https://twitter.com/pherim/status/919382678687772672 




『ノイズが言うには』2010
小田香というと『鉱 ARAGANE』の無機質さとタル・ベーラ師事の東欧的異色感、『セノーテ』授賞式等の寡黙さがイメージとして先立つ。そのため性的少数者の告白巡る家族との交錯を生々しく描き、母撮る姉を撮る自分など構造を操りつつ、カメラの加害性を鋭く問う本作は新鮮。
[動画見当たらず]
"" https://twitter.com/pherim/status/1302576438734802945




『FLASH』2015
サラエボからザグレブへの列車車窓。古びた窓ガラスには抽象画のような汚れが載り、ときに逆側の窓景色が、ときに小田香監督ら乗客の姿が映り込む。
手をめぐる初めの記憶をテロップが語りだす。幼い頃のテープ音声が流れ始める。景色と記憶が往還し混濁する。本当は初めから全てを知っている。
[動画見当たらず]
"FLASH" https://twitter.com/pherim/status/1305645809946357761 




『風の教会』2018
神戸・六甲。安藤忠雄設計のコンクリート打ちっ放しで知られるこの礼拝堂の改修模様を、コミッションワークとして記録映像に収めた一篇。
堂内へと差し込む陽光の鋭さ、滴の跳ねる水音、十字架のつくる陰翳。ガラスを透過する家守の足、壁に映る木漏れ日の揺らぎ、遠のく蝉時雨。

"" https://twitter.com/pherim/status/1308559463578648576




■ノーランIMAXレーザーGT祭
 
『インセプション』 IMAXレーザーGT上映
記憶の果実を盗み、時の神へ背く者達。
垂直へ現実感が折り重なる認識世界に打ちのめされた初見と比べ、マリオン・コティヤールが体現するゴーストの鋭利な危うさにひたすら慄えた。
漆黒姫路城という精神の底。絶対に囚われてはならない存在の顕現こそ最も怖い。

"Inception" https://twitter.com/pherim/status/1306813109789626368
 




 余談。
 
 今秋日本公開予定の『ウルフウォーカー』という北欧アニメ、大傑作でした。
 『ブレンダンとケルズの秘密』、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』につづくケルト3部作といえばピンと来るひともいるでしょうね。
 今後のふぃるめもでも扱う予定です。別途記事化するかもしれません。




おしまい。
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