pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
09月15日
23:59

ふぃるめも151 神話の軌跡

 
 

 今回は、9月18日~19日の日本上映開始作を中心に、ノーランIMAXレーザーGT上映作、ダニエル・ラドクリフ近年主演作群など11作品を扱います。(含短篇1作/再掲1作)
 ※日本公開9月18日の『TENET テネット』については次々回扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第151弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)


 
■9月18日公開作

『Daughters ドーターズ』
中目黒でルームシェアする女性ふたり。妊娠しシングルマザーとなる決断下す彩乃と、親友を支えながらわだかまる小春。
主演の三吉彩花&阿部純子、姐御的に導く役柄演じる大塚寧々や黒谷友香らが各々に瑞々しい。初老の父役・鶴見辰吾がみせる懐深さにも驚く。耽美没入場面の直球ぶりはかなり好み。

"Daughters" https://twitter.com/pherim/status/1306434316646318080

『Daughters ドーターズ』に溢れる中目黒ぐらし綺麗綺麗の術からは、トラン・アン・ユン『ノルウェイの森』や新海誠『言の葉の庭』が想起され。
RT↓は目黒川、映画に登場する夜桜の2年前の姿。文は当時聴いてたToe “Goodbye Feat. Toki Asako”の歌詩とか。今年は花見がのぅ。
画像&引用RT→https://twitter.com/pherim/status/1310935012301307904




『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』
アパルトヘイト下の南アフリカで、黒人側に立ち収監された白人活動家による驚天動地の実話ベース脱獄劇。
この数年どんどん面白い変遷遂げるダニエル・ラドクリフ、本作では目視で鍵を模造できる特殊能力者を熱演。硬派の社会背景と手に汗握る展開が飽きさせない。

"Escape from Pretoria" https://twitter.com/pherim/status/1301354444114636800

  拙稿「敵対と猜疑のゆくえ 再監獄化する世界(2)」:http://www.kirishin.com/2020/08/28/44943/
  (『ハリー・ポッター』主演イメージからの脱却図るダニエル・ラドクリフの格闘がもつ今日性をめぐって)





 『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』
岩手一関で、半世紀に渡り磨かれつづけた音の哲学と実践の軌跡。
「良い音質」をめぐる数値へ還元不能の価値めぐる語り自体の心地良さ。レコードの真価と場所のもつ意味。オンライン、Bluetooth、ステイホームとは逆向きの、進化ならぬ深化の系譜。

""https://twitter.com/pherim/status/1304628932990230528




『メイキング・オブ・モータウン』
伝説的レーベル《モータウン》を創設者ベリー・ゴーディJr.自らが語り切る。
工員として体験したフォード式を創作現場へ取り入れる革新性。綺羅星人物群も終盤のS・ワンダー登場で頂点かと思いきや、直後に飛び跳ねる少年M・ジャクソンが神過ぎ。モータウンが時代創った納得感しか。

"Hitsville: The Making of Motown" https://twitter.com/pherim/status/1306085524923273216

    
  

■9月19日公開作

『ヴィタリナ』
現代映画の一極点。カーボヴェルデからリスボンの貧民窟へ来た妻は、夫の死を知りなお留まる。大洋の両岸へ引き裂かれた魂魄を、光と闇の両界が輪郭づける。『ヴァンダの部屋』から20年、『ホース・マネー』の先で更なる昇華遂げるペドロ・コスタ、その戦慄。

"Vitalina Varela"

  初見時@2019年度東京国際映画祭ツイ:
  https://twitter.com/pherim/status/1216910645628567552


 


『友達やめた。』
聴覚障碍の監督今村彩子と、アスペルガー+聴覚過敏もつ“まあちゃん”との友情の行方。
予約さえ難儀しつつ台湾他へ二人旅を重ねる謎情熱と、やっぱり起きる面倒事や諍いの数々。互いへの視線の内に優生思想の欠片を自覚する独白は生々しく、それでも切断より共生を望む心模様の粋。

""https://twitter.com/pherim/status/1305698392157290497

  試写メモ94:近日更新




『おかえり ただいま』
名古屋闇サイト殺人事件を扱う、東海テレビ製作映画。
被害者女性視点で描く前半ドラマでの情感的な溜めが、犯人の死刑を求める母を撮る後半ドキュメンタリーで活きる良構成。
あと序盤でヨーヨー片手の斉藤由貴が決めポーズ、この『スケバン刑事』サービスショットは笑う。

""https://twitter.com/pherim/status/1305333676264185856

『おかえり ただいま』監督は、東海テレビ内幕物の秀作『さよならテレビ』に“悪役”報道部長として登場する齊藤潤一。

両作とも同じ阿武野勝彦プロデューサー作で、『さよならテレビ』ラストの秀逸さを考えると、全体に重い主題を追う本作でのスケバン刑事登場の趣向は案外深い。

  『さよならテレビ』:https://twitter.com/pherim/status/1208937086587269120

と思わせつつ、『おかえり ただいま』監督手記では「昔からの大ファン。デビュー当時のグラビア写真は今も実家の机の」などと供述されており、茶目っ気あって抜け目ない。
こうした多層性に『ヤクザと憲法』も想起され、要は東海テレビ製作映画が面白いぞという話。

  『ヤクザと憲法』:https://twitter.com/pherim/status/676339757610237952

利権防衛の欲望だけで突貫した「地デジ化」の惨めな帰結を想起するまでもなく、目下テレビ局は衰退やむなしだ。
けれどバブル期までに蓄えた人的技術的資産がこうして局所的にスマッシュヒットを出す東海テレビのケースは、むしろ電波利権を超えて地方局が生き残り得る新基軸の予感さえ。




■国内過去公開作(含映画祭上映作)

『スイス・アーミー・マン』

ダニエル・ラドクリフが《オナラを排出することで推進力を生み洋上を滑走する死体》を演じ、ポール・ダノがその死体に乗って海駆ける超絶怪作。
娑婆への帰還演出まで笑える充実感。あと死体の躍動には、どうしてもハリポタイメージで潰されかかった俳優ラドクリフの新生を重ねてしまう。

"Swiss Army Man"  

  拙稿「敵対と猜疑のゆくえ 再監獄化する世界(2)」:http://www.kirishin.com/2020/08/28/44943/
  (『ハリー・ポッター』主演イメージからの脱却図るダニエル・ラドクリフの格闘がもつ今日性をめぐって) 
 




『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』
ダニエル・ラドクリフ主演、ボリビアの密林で遭難したイスラエル人探検家Yossi Ghinsbergの手記に基づく実録物。
序盤の天然薬物トリップから密林生存による変貌までスイスアーミーマン味あるカット多し。豪州B級アドベンチャーの匠Greg McLean監督作。

"Jungle"  

映画の主人公がヨッシ・ギンズバーグ(Yossi Ghinsberg)という実在するひとで、おじいさんの腕に強制収容所の囚人番号が入れ墨されているシーンが。
移住とは無関係で、イスラエル徴兵後に、親の反対押し切って大学進学の前にアマゾン探検へ出た若者の話で、単独で観ると何から何までB級映画なのだけど、

  拙稿「敵対と猜疑のゆくえ 再監獄化する世界(2)」:http://www.kirishin.com/2020/08/28/44943/
  (『ハリー・ポッター』主演イメージからの脱却図るダニエル・ラドクリフの格闘がもつ今日性をめぐって) 
 
  



■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

“Where Is the Jungle?”

白人翁はブラジル移住後、先住民文化に惹かれアマゾンへ分け入る画家へ転向する。一方家族を連れ町へ定住した先住民の男は、貨幣経済への適応に一抹の虚しさを覚える。翁の力説するエルドラドの実在が、密林の暮らしを懐かしむ老婆の目線に重なり意外な形で証される終盤の粋。
https://vimeo.com/188564669
"Where Is the Jungle?" "Où est la jungle?" https://twitter.com/pherim/status/1250669584316653568

“Where Is the Jungle?”の画家翁Roland Wilhelm Vermehren Stevensonは、ドイツ系移民。ユダヤでなくプロイセン味漂うお名前。
このティーザー↓、横断歩道で女性2人が踊るだけで本編の梗概や登場人物とはまったく無縁ながら、本質を突くとても風変わりな極短編になっている。
https://vimeo.com/188564669

追記用連想メモ
・グリーン・フロンティア→彷徨える河
            →グリーン・インフェルノ
・“Welcome to Jungle”→ジュマンジ




■ノーランIMAXレーザーGT上映祭@グランドシネマサンシャイン
 https://www.cinemasunshine.co.jp/news/1497.php
 
『インターステラー』 IMAXレーザーGT
度肝抜かれた没入体験、まさに神感。とうもろこし畑を疾駆し、十年飛び続けていたドローンを捕捉する序盤からしてもう神話的。
過去気になったアラとかホントどうでも良くなり、感性がバグって多重暴走し終幕後の池袋がむやみに輝く。てか実家の本棚まじヤバい。

"Interstellar" https://twitter.com/pherim/status/1309486761232326659

  『インターステラー』バンコク初見時ツイ(ふぃるめも15):
   https://twitter.com/pherim/status/533543020952420352

 


 

 余談。

 『TENET テネット』旋風前夜の静けさ、を勝手に感じる昨今ですが、たうたうIMAXレーザー初日の販売が。

 じゃん。(図→https://twitter.com/pherim/status/1305811857496702976/pho...スマホもPCもしばらく混雑途絶し焦るなど。焦りつつ「そだ、ノーランIMAX祭のツリー進行忘れてた」と思い出し呟いたのが昨夜の読書メモ↑という流れです。(ほぼ希望席とれました笑顔)

 あと「ノーランIMAXレーザーGT上映祭」というイベントは存在しませんあしからず。IMAX Laser GT再見『ダークナイト』はふぃるめも147、『インセプション』はふぃるめも150(前回)にて扱いました。
 



おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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