pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
10月01日
23:59

ふぃるめも154 時の数奇な罠

 
 

 今回は、10月2日~3日の日本上映開始作を中心に、10作品+αを扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第154弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)


 
■10月2日公開作

『フェアウェル』

NYで鬱屈と暮らす華僑2世の若い女性が、祖母の余命わずかと知り長春へ向かうと、癌告知をしない風習ほか文化衝突の嵐が待っていた。米国の日常でも家と外で別の文化を生きる女性が中国で味わう困惑と逡巡を、台詞より表情と佇まいで表現し切る主演オークワフィナにただただ見惚れる。

"The Farewell" "别告诉她" https://twitter.com/pherim/status/1212219760630362112


  拙稿「心の真実と優しい嘘 『フェアウェル』」:
  http://www.kirishin.com/2020/09/27/45371/


 以下、2020年元日ツイートより抜粋。(元旦から、映画ツイートとしては初の1000↑RT、5000↑favの映画ツイ良兆年、リアルはry)
 
 “The Farewell” 日本公開春頃の模様。アン・リー初期名篇『ウェディング・バンケット』へのこの応答作で、台湾ニューシネマを大向うに見据えた新鋭ルル・ワンの気構えに乾杯。彼女曰く「Netflix,Amazonから巨額のオファーをもらったが、劇場で体験を分かち合いたかった」とA24配給獲得へ。ガッツ最高。

 オバマ前大統領の選ぶ映画&TV of 2019にも“The Farewell”が。それにしても『アイリッシュマン』や『アポロ11』に加え、ジャ・ジャンクー『帰れない二人』からポン・ジュノ『パラサイト』まで、彼の選択眼がもつ幅たるや。こういう人がトップに立つ土壌、そこは素直に羨ましく。オバマ引用RTツイhttps://twitter.com/pherim/status/1212265903858958336
 
 さて、年末のバンコクで絶対観るリストトップに“The Farewell”(別告訴她)があったのは、主演がオークワフィナ @awkwafina だったから。“Crazy Rich Asians”(クレイジー・リッチ!/摘金奇緣)では、限られた出番ながら主演2人を喰うきらめき放つ彼女へ目が釘付けになっていた。(続
 
  『クレイジー・リッチ!』https://twitter.com/pherim/status/1045882275164971008

 この三賀日、実は『クレイジー・リッチ!』を起点とする執筆を画策していた。“The Farewell”ツイートはその素材配置の一環だったけど、バズリ初めしているようだし以下ここで試みる。ともあれCrazy Rich “Asians”を外す国内配給が微妙だった『クレイジー・リッチ!』Netflix, Amazon公開中、お奨めです。
 
 


『ある画家の数奇な運命』
ドイツ現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒター伝記作。
ヒトラー熱に当てられヒス起こす叔母、をガス室送りにしたナチス医師、の娘を愛する中盤から、ヨーゼフ・ボイスとの対峙が加わる胸熱展開。ボヤけた写真調の由来を幼い右掌へ集約させるなど、ミニマル演出の冴えに痺れる。

"Werk ohne Autor" "Never Look Away" https://twitter.com/pherim/status/1311497317195759616

※ナチス退廃芸術展とリヒター作の再現性、ヨーゼフ・ボイス講義、「真実は一切明かさない」の意味など追記予定。(記事執筆検討案件)




『トロールズ ミュージック★パワー』
歌と踊りに明け暮れるポップ村の村人たち。世界征服たくらむロック村船団。世の音楽を統べる5本の弦。
シリーズ2作目で初の日本劇場公開と知り驚く。ヒット曲を贅沢に使用し親子で楽しめ、K-POPとレゲトンのダンスバトルなど第2弾ゆえのマニアック化も楽しい。

"Trolls World Tour" "Trolls 2" https://twitter.com/pherim/status/1310058381684563968

  シリーズ第1作『トロールズ』“Trolls”(バンコク鑑賞時ツイ):
  https://twitter.com/pherim/status/806008634048024576





『エマ、愛の罠』
チリ発、人知れず火炎放射器で世界を焼くダンサーが胸に秘める野望。
レゲトンの激しいテンポが全編の基調を生み、南米現代史映すパブロ・ラライン監督過去作『NO』『ネルーダ』の系譜は美学的飛躍を遂げる。翻弄されまくる夫役ガエル・ガルシア・ベルナルの度重なる硬直顔が愛らしい。

"Ema" https://twitter.com/pherim/status/1308974656871960576

夫で振付師役ガエル・ガルシア・ベルナルの教条主義に対し、ある女性ダンサーがエマと口づけする前に語るダンス論が印象的。
「“いい”ダンスって何?わからないの。私は“いいもの”をみると気分が悪くなる。今のほうが楽しい。火照った顔で悪態をつき体を動かすとヤってるみたい。気づくと人に囲まれている。みんな欲情してて、まるで音楽とするセックス。メチャクチャ快感だよ、生きてるって感じ。あんただって昔、誰かが欲情してイッたから生きてる。今は絶頂を踊る時代なの。」

※この踊りレゲトンと舞台の街バルパライソをめぐり後日追記改変予定。

  試写メモ94:近日更新予定





■10月3日公開作

『建築と時間と妹島和世』

大阪芸大新校舎の設計から実現までを追う、ホンマタカシ監督作。
構想段階における模型製作の功罪めぐる妹島の語りは説得的で、予算との折衝過程で起こりゆくカタチの変容が面白い。基礎工事から竣工まで捉えるタイムラプス映像の質感に、いかにもホンマタカシな写真味あり。

"" https://twitter.com/pherim/status/1310551967287001089




『生きちゃった』
石井裕也監督新作は、幼馴染の3人が描く予測不能の軌跡。
愛情の表し方を知らない男演じる仲野太賀、バディ感が痺れる若葉竜也、愛の渇きゆえ墜ちゆく女に扮する大島優子。体当たり演技の衝突から放たれる閃光が凄まじい。日本映画の製作魂を着火する香港&中国出資という新潮流。

"All the Things We Never Said" https://twitter.com/pherim/status/1311139914558259200

※石井裕也演出と大島優子の演技中心に後日追記予定
  
  石井裕也2017年作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』:
  https://twitter.com/pherim/status/1095514810458955776



 
 
■日本公開未定作(2021年春公開情報あり)

 試写を観たあとコロナ禍で公開延期、未確定のまま半年ほどたつ作品など幾つかあり、保持している意味もないので挙げていく。「日本公開未定」の初めが日本映画というのもあれですが、若葉竜也つながりで。
 
『街の上で』
下北沢に暮らす青年の日常と非日常。
古着屋で働き、古本屋と行きつけのカフェやバーへ出入りする、日々の淡々とした描写が、不意に生じる亀裂の一閃を輝かせる。下北沢だけで充足する男の垣間見る、熱く鋭い未知への兆し。再開発の今重ねるにこの主人公、擬人化された街そのものとさえ。

""

※とはいえ↑の文章、《この映画のツイート》としては全く不足なので、実際につぶやく時はかなり切り詰め固有名4つは入れるはず。
 



■国内過去公開作(含映画祭上映作)

『シチリア!』

ストローブ=ユイレが、ヴィットリーニ小説『シチリアでの会話』の一部を翻案。

農夫や漁師が投げ合う言葉のごとりとした物質感が、極私的シチリア像にマッチして浸れる。あと列車客室場面の映画的魅力とか。いかにもネオレアリズモ調に渋く決まったカットも多く、1998年作なのは意外。

"Sicilia!" https://twitter.com/pherim/status/1326011463308255232

ヴィットリーニ『シチリアでの会話』、もし読めるなら引用連ツイしたい。読んでみたくはあれど、その時間を心から楽しめる状態へもっていくには乗り越えるべき関門が多すぎて大草原。

※後日シチリア関連作言及連ツイ&ストローブ=ユイレ連ツイ予定。
→特集上映@アテネ・フランセ:http://www.athenee.net/culturalcenter/program/s_h/s2020_2...




■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

“Mon amie Victoria”(My Friend Victoria)

幼い頃、家庭の事情で一晩だけ預けられた豪邸の窓を、表通りから見上げながら成長するヴィクトリア。
のち豪邸の息子と恋仲になる《親友ヴィクトリアの半生》を、作家となった幼馴染の目を通して描く本作の、格差/差別を巡る訴求的でない描写の静けさが響く。

"Mon amie Victoria" "My Friend Victoria" https://twitter.com/pherim/status/1316941382389551111

 


■ノーランIMAXレーザーGT上映祭@グランドシネマサンシャイン
 https://www.cinemasunshine.co.jp/news/1497.php

『TENET テネット』 IMAXレーザーGT
超精巧なからくり時計の見せる幻惑に浸った心地。
カモメが後ろへ飛び、自分だけが時間逆行する外界へ踏み出して瞬時に襲い来る宇宙的孤独の体感。その究極の孤立を分かち得る仲間まなざす青臭いまでの情緒こそ、映画のみに可能な表現を研磨する求道者クリストファー・ノーラン必携の隠し味と知る。

"TENET"
 
  クリストファー・ノーランIMAXレーザーGT祭めぐる連続ツイート:
  https://twitter.com/pherim/status/1303320431818993665

  IMAXを軸とする見世物小屋としての映画館体験私史(のようなもの):
  https://twitter.com/pherim/status/1281274060576452608





 余談。

 『TENET テネット』で準主演のバディ役つとめるロバート・パティンソンが、DC新作『ザ・バットマン』で主演バットマン役抜擢。ノーランの筋とは別に、これは楽しみにせざるを得ませんの。
 てかこの昏さ。暗いよ!
 DCはこうでなくっちゃ然とした暗さ!\(^o^)/


"The Batman"

  ノーランの筋とは別の、バットマンとかジョーカーの話「バットマンの死」:
  https://tokinoma.pne.jp/diary/3913



 あとマスコミ試写ではしばしば製作関係者も同席するのだけれど、没入したばかりの作品世界の出演者が間近にいるという状況にいまだ慣れない。自然体の演技がとても良かった役者がそのまま、試写室脇の手洗いで隣に立つとかね。ふつうに話しかけたくなってしまうが、それも変なので大抵お辞儀に留めるけれど。
 
 『街の上で』の若者たちはかなり親近感もてる感じだったので、試写始まる前に静かにオーラだしてる女性がいて「おっ」てなったら映画に出てきて、観終えてロビーへ出ると出演者ほぼ全員がいて「わー」ってなった。とはいえ名前も容易には覚えられない体質ゆえ、いつも内心その場で盛り上がって終わる。一度知り合いになってしまえば楽なんだろうけど、そういう機会はあまりない。





おしまい。
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