pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
03月27日
22:38

ふぃるめも169 シン・モアランタン・グッドマン

 
 

 今回は、3月5日~3月19日の日本上映開始作と、日本公開中作品から10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第169弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)



■3月5日公開作

『たゆたえども沈まず』

テレビ岩手製作、1850時間に及ぶ映像から構成された記録映画。
「津波てんでんこ」の教えに従って走った子は、三陸鉄道の運転士になった。釜石・宝来館の今。何度観ても衝撃的な震災当日の映像群を皮切りに、この十年を凝視する近しさに、地元メディアならではの矜持を看取する。

"Fluctuat nec mergitur" https://twitter.com/pherim/status/1367683967357313024 

東日本大震災テーマの新作映画3作、『たゆたえども沈まず』『二重のまち/交代地のうたを編む』『きこえなかったあの日』について書きました。当事者性と継承、忘却への抵抗をめぐって。

  拙稿「重なりあう時間たち 東日本大震災からの10年」 http://www.kirishin.com/2021/02/27/47563/




■3月8日公開作 

※↓タイトル末尾の特殊記号反映すると正常に記事更新できない不具合発生するゆえ省略
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

狂って破れまくる庵野節全開かつ、完璧に締める驚きの。
前作から9年の溜めが活きたセカイ系への決着と、震災 戦後復興 ヲタク私小説的いつものアレに、ジブリAKIRAこの世界の片隅にまでが重なり、パリ破壊からジェンダー配慮無視まで貫かれる想像的膂力の極み。

"" https://twitter.com/pherim/status/1369196990446280704

※無料公開もされた冒頭12分のパリ市街上空戦闘篇、個人的にはフランス国立図書館Bibliothèque nationale de Franceを前景のメインに置いた終幕図に一番ぐっときたなど、幾らか細部後日追記の可能性あり。




■3月12日公開作

『フィールズ・グッド・マン』

"feels good man"とつぶやくカエルのペペ。作者も知らぬ間にオルタナ右翼の差別アイコンとしてネットミーム化したキャラクター巡る多事多患。
誰にも抗えない流れを生む原動力として4chanが分析されるも、ひろゆき=2→5chの存在が抹消された起源語りだったのは印象的。

"Feels Good Man" https://twitter.com/pherim/status/1376368103815213064




『アウトポスト』
アフガニスタン山中、死闘となったカムデシュの戦い。
四方からタリバンの砲弾降り注ぐ前哨基地の地獄絵図。のち米軍の方針転換さえ導いた愚策の下、与えられた状況を生き抜く兵士達の相貌。
オーランド・ブルームが扮する、族長の信頼を勝ち取る指揮官の気骨に充ちた演技は新鮮。

"The Outpost" https://twitter.com/pherim/status/1370580083644059652

『アウトポスト』を巡り書きました。
描かれないタリバン兵、『ブラックホーク・ダウン』とソ連のアフガン出征撮るソクーロフ『精神の声』、
主演スコット・イーストウッド(クリント息子)&メル・ギブソン息子マイロの継承他。

  拙稿「祈りのアフガン」 http://www.kirishin.com/2021/03/16/47768/




『ワン・モア・ライフ!』
交通事故死したイタリア男が天国の入口で不平を申し立て、92分の人生延長が認められるドタバタ劇。
シチリア島パレルモへ降り注ぐうららかな陽光の下、時間がないのにセリエAや過去の恋人に気をとられるダメパパと、“それなりに”愛し合う家族の面々の緩い優しさに心和む。

"Momenti di trascurabile felicità" "Ordinary Happiness" https://twitter.com/pherim/status/1371007664243712005 

『ワン・モア・ライフ!』監督ダニエレ・ルケッティ@danieleluchetti
の前々作『ローマ法王になる日まで』(2015)について書きました。解放の神学との関わりなど。
両作では、無神論者のイタリア人監督という立ち位置が対照的に利いています。

 拙稿『ローマ法王になる日まで』(監督インタビュー) http://www.kirishin.com/2017/06/10/41160/

ダニエレ・ルケッティ監督にはインタビューもしたけれど、縁眼鏡の似合う知性派という印象でした。
ちな多くの国で無神論者の自称はアグレッシヴな意味合いを孕みます。(墓前/神社で合掌する人を無信仰とは言い難く、入国カード宗教欄にNo religion記入は要注意の場合あり等)



 
『マジック・ランタン・サイクル』
アナログ時代の映像作家ケネス・アンガー短編集。ブラウン管こそ相応しくも感じられる、懐かしくもどぎつい色遣いに貫かれた魔的アングラ世界。
異教モチーフとして頻出するヒンドゥー&南洋仏教ギミックに時代性を感覚し、今ならどうかと妄想するも像を結ばず。

"Magick Lantern Cycle" https://twitter.com/pherim/status/1376027088243748866





■3月13日公開作

『ラモとガベ』

チベット社会の婚姻をテーマとする今日模様。若い女性の孤立を、叙事詩《ケサル王物語》に重ねる構成が絶妙。
街なかの漢字標記に国家の統べる近代秩序を、漢語まじりのチベット語方言に浸食されゆく精神を象徴させ、尼僧との離婚の困難へ焦点化するソンタルジャ監督の明晰さに唸る。

"拉姆与嘎贝" "Lhamo and Skalbe" https://twitter.com/pherim/status/1372483361399218178

ソンタルジャ第4作『ラモとガベ(原題)』をめぐり書きました。
結婚と馬、尼僧院の《隠された顔》の意味、経済論理下の神事。
デビュー作から未発表第5作まで貫かれるもの、中国市場とチベット映画、他。

  拙稿“「チベット」という物語の形とゆくえ” http://www.kirishin.com/2021/03/21/47931/
  



■3月19日公開作

『クイーンズ・オブ・フィールド』

乱闘騒ぎで存続の危うい名門草サッカークラブを救うため、男達に代わり主婦や女子高生が出場する。
『フル・モンティ』から4半世紀、ただよう暗雲から起死回生を狙う田舎町の人々描くハートフルコメディは数あれど、ジェンダー盛り込む今日風味のほのぼの風刺感。

"Une belle équipe" "Queens of the Field" https://twitter.com/pherim/status/1373283173610647556




■日本公開中作品

『ジャスト6.5 闘いの証』

イラン、新興の麻薬王vs辣腕刑事の鋭き対峙。
麻薬王の諦念、刑事の孤立、汚職の気配。全編に及ぶシリアス演出は圧巻で、単なるアクション娯楽でなく、研ぎ澄まされた台詞や人物造形の逐一に、強烈な社会批判の意志が伐り立つ。監獄や退廃スラムなど映像が抜群にして凄絶。

"Metri Shesh Va Nim" "Just 6.5" https://twitter.com/pherim/status/1360056210968305670  




『ウォーデン 消えた死刑囚』
イスラム革命前のイランで、移転中の刑務所から死刑囚が姿を消す。
極まる様式美。権威主義に高踏趣味も露わな所長のメンツと押し隠す焦燥との対比が、謎めいたソーシャルワーカーの介入でより鮮烈に。革命前という背景の援用により、国家秩序と人間の愚鈍へ迫る秀逸。

"The Warden" https://twitter.com/pherim/status/1361872354847064067 

イランの刑務所物から想い出されるのは、『少女は夜明けに夢をみる』監督メヘルダード・オスコウイへのインタビュー。
その迸る人間的な熱さを巡ってはインタビュー記事にて詳述。http://www.kirishin.com/2019/12/16/39747/

  『少女は夜明けに夢をみる』https://twitter.com/pherim/status/1190093731157827584
  
 
 
 

 春デスノウ。





おしまい。
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