pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
04月01日
22:52

ふぃるめも170 水底の小さな牢獄

 
 

 今回は、3月26日~4月3日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第170弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)


 
■3月26日公開作

『テスラ エジソンが恐れた天才』

純情不器用男を演じたら唯一無二のイーサン・ホーク主演新作。
電流対決など発明家ニコラ・テスラの生涯を鮮明になぞりつつ、J.P.モルガンの娘やサラ・ベルナールとの交際巡る演出は極めて斬新。第二の絶頂期到来感あるエジソン役カイル・マクラクランも滅法良い。

"Tesla" https://twitter.com/pherim/status/1375054562751508481

※カイル・マクラクランと他1,2名の演者めぐり追記するかも




『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』
眠りながら聴くコンサート“Sleep”実現への日々。
8時間に及ぶ演奏をめぐる奏者の苦心や聴衆の感想は元より、子育てと創作活動の両立を回想するマックス・リヒター&ユリア・マール芸術家夫妻の穏やかな佇まいが印象深い。
全編アンビエントの静謐と充溢。

"Max Richterʼs Sleep" https://twitter.com/pherim/status/1375278990374498306

↑Natalie Johns監督と絵文字会話するなど。(リプ欄)




『騙し絵の牙』
大手出版社の雑誌間対立に始まる、
ニッポンのカイシャ痛快ドタバタ内紛劇。
大泉洋&松岡茉優の主演タッグから小林聡美や塚本晋也、文豪役リリー・フランキー&國村隼まで配役が神懸かり的。
極上エンタメの裏地へ忍ばせる風刺の鋭さに、毎度圧倒され通しの吉田大八監督新作、満喫。

"" https://twitter.com/pherim/status/1375646867715813379

『騙し絵の牙』で、木村佳乃や佐野史郎、佐藤浩市ら演技巧者が脇を固めるなか爽然として異彩を放つのが、小説の才を隠すモデル役の #池田エライザ と、新人作家役の #宮沢氷魚。
吉田大八の監督前々作『美しい星』での橋本愛と亀梨和也の兄妹役起用を彷彿とさせる配役の妙。

  三島由紀夫原作・吉田大八監督前々作『美しい星』
  https://twitter.com/pherim/status/861960664968904705

  の、役柄考察: https://twitter.com/pherim/status/867331738749419521





『ロード・オブ・カオス』
ブラックメタル・バンド《メイヘム》実録作。教会放火に悪魔崇拝、銃自殺したボーカルの死体を写真に撮ったメンバーが、新ボーカルに惨殺される狂乱の軌跡。
絶景瀟洒なノルウェーから、アンチクライストの尖った精神文化が育つ必然を感じさせる描写の機智が飽きさせない。

"Lords of Chaos" https://twitter.com/pherim/status/1377091258171019264 
 
 

 
 
■3月27日公開作

『緑の牢獄』

西表島の炭鉱と八重山の台湾移民。
観光マップに載らない片隅の集落と、島奥の廃坑が響かせるもの。
10歳で父に連れられてきた老婆の語る90年の、どっしりとした重量感。台湾語や八重山方言の入り混じる言葉の温度が、国境と近代の暴力性に対峙する。黃胤毓(インイク)監督作、森奥へ木霊する死者の呼び声。

"綠色牢籠" "Green Jail " https://twitter.com/pherim/status/1377809432839524352

『緑の牢獄』の黃胤毓@kouiniku監督第1作『海の彼方』、アマプラ楽天他で公開中。
ちな『緑の牢獄』本編中で主人公橋間良子さんが話す言葉については台湾華語や八重山語とすべきかもしれない。自身の西表/与那国他の滞在経験に照らしても、正直聞き分けられる気が全くしない。

  『海の彼方』 https://twitter.com/pherim/status/896202370496856064




『狼をさがして』
三菱重工本社ビル爆破へ至る、東アジア反日武装戦線“狼”を巡るドキュメンタリー。
無知の若い世代が遡行する形で掘り下げゆく構成は見やすく、団塊世代が時折真顔で使う“反日”の語の由来を知った感。己の加害意識の根に、松前藩以来のアイヌ抑圧をみる北海道出身者の話など説得的。

"동아시아반일무장전선" "East Asia Anti-Japan Armed Front" https://twitter.com/pherim/status/1379417496625668096 
 
  
  
 
■4月2日公開作

『サンドラの小さな家』

DV夫から2人の幼い娘と逃れたサンドラが、一軒家の手作りを思い立つ。
公営住宅には入れず、制度は彼女の苦境を包摂しない。干渉を続け告訴へ至る夫も悪者一辺倒とは描かれず、手を貸す近所の人々も各々に問題を抱えるなど、ケン・ローチばりの質実さが全編を締め見応え充分。

"Herself" https://twitter.com/pherim/status/1377617617704394752




『ゾッキ』
ありふれた郊外の町と人を揺さぶる秘密と嘘。
竹中直人・山田孝之・齊藤工の共同監督作と聞いた時点で立ち昇る変態的予感がそのまま的中した奇怪作。
松田龍平も吉岡里帆もノリノリの出色演技なうえ、不思議にこっ恥ずかしく、こそばゆくも笑える小ネタ満載。なんだこの朗らかな“春だな”感は。

"" https://twitter.com/pherim/status/1377454639507931139

『ゾッキ』を画像検索すると、配給の方針か場面写真はあまりかからず(商業邦画ではよくある)、代わりに竹中直人や山田孝之が出演者とからむ現場写真がたくさん挙がって、眺めているとけっこう楽しい。※後日追記




■4月3日公開作

『ブータン 山の教室』

標高4800mの僻村ルナナへ赴任した青年教師ウゲンは、歌手となりオーストラリアへ行くことを夢みている。
電気もない山村での格闘の日々を越え、夢を叶えたあとウゲンがふと奏でだす響きに宿る、優しき村人や子供らに囲まれた歳月の意味。異境と故郷をめぐる物語の普遍を想う。

"Lunana A Yak in the Classroom" https://twitter.com/pherim/status/1377229438467776517

  『ゲンボとタシの夢見るブータン』 https://twitter.com/pherim/status/1026063038380617728
   拙稿「踊るブータン、笑う仮面」http://www.kirishin.com/2018/08/21/16611/





■国内劇場未公開作(含VOD公開/DVDスルー作)

『アンダーウォーター』

超重水圧により、施設や人体が内破するド迫力。
クリステン・スチュワート主演新作でこの緊迫感、IMAXで観たかったけど国内劇場未公開。
宇宙でなく深海の孤独で『エイリアン2』、海底での異次元格闘で『MEG ザ・モンスター』を堂々更新、発狂級の孤立演出にガチ震える。

"Underwater" https://twitter.com/pherim/status/1379990680664109056 
 

 
 

 余談。『アンダーウォーター』、ふだんから信頼している超水準の映画人数人がdisってるのをみて、ああこのパターン久々にきたなと。

 いま流行りのVOD公開作なのだけど、これこそ劇場でという質感なり迫力なりにこだわった作品が、手元のモニターやらタブレットやらで観られ酷評されてまう不幸とか。

 『パシフィック・リム』のどこがいいのかわからなかった、と以前ある友人が言っていて、視覚表現全般に関して日本人としてはトップクラスの“観る眼”を仕事とする人なのではじめ意外に思ったのだけど、彼女はなんと通勤の飛行機内で観たと聞き納得の。

 映画は主に飛行機で観るもの、というスタイルに帰着している人は昔からいたけれど、となるとこのコロナ禍は映画の形式(内容ではなく)にさえ早晩影響するのじゃな、とぞ思ゆる春の宵。




おしまい。
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