pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
05月22日
18:29

ふぃるめも175 ベルモンドの優しき森

 
 

 今回は、5月15日~5月21日の日本上映開始作と、《ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2》上映全作の計10作品を扱います。

 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第175弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)



■5月15日公開作

『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』

東ドイツで気高く反骨の歌声を響かせたミュージシャンが、実はシュタージ(秘密警察)へ通じていた、という実録物。
1980年代東独の若者文化めぐる再現演出と、度々挟み込まれる雄大な褐炭採掘の労働現場が目に嬉しく、表現者の魂揺さぶられる姿に胸打たれる。

"Gundermann" https://twitter.com/pherim/status/1392307176891244548




■5月21日公開作

『藍に響け』

深窓の令嬢が実家の困窮を忍びつつ、
和太鼓に目覚める変わり種青春譚。
筒井真理子が熱血教官へ豹変する中盤から、学園物が真性のスポ根と化し『セッション』ばりの音楽映画へ。という日本の商業娯楽映画にありがちな外見ながら実は奇作。W主演の紺野彩夏&久保田紗友、今後が楽しみ。

"" https://twitter.com/pherim/status/1395351505851490310  
 
  
  

『茜色に焼かれる』
かつてない、尾野真千子の出突っ張り体当たり演技に痺れ通し。
高齢者運転事故、上級国民無罪放免、母子家庭困窮など限界まできた日本社会のひずみをてんこ盛る石井裕也監督新作は、永瀬正敏の風俗ヤクザ、オダギリジョーの甲斐性なし夫、嶋田久作の豪腕弁護士など配役も趣深い。

"" https://twitter.com/pherim/status/1394287870324613126 
 
  


『やすらぎの森』
カナダ・ケベック州、森深くの湖畔に住まう3人の老人。
人の目を避け暮らす各々の事情と、過去の大火が人々に残す傷痕。
個の力では抗いがたい山火事や、少女期不当に精神病棟へ入れられたまま高齢を迎えた主人公女性が象徴するもの。穏やかな語り口の底で渦巻く熾烈さに突如戦く。

"Il pleuvait des oiseaux" "And the Birds Rained Down" https://twitter.com/pherim/status/1393025064585482240




『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』
高畑淳子&橋爪功の夫婦演技がめっぽう良い。
棺桶セールスの場で“お試し入棺”してみる高畑淳子、退職後も技術者時代の面子が捨てられないまま役立たずと化す橋爪功、共に突き抜けた熱演ぶり。剛力彩芽&水野勝への継承が裏テーマとなる構成がまた良塩梅。

"" https://twitter.com/pherim/status/1394864788715433985  
 
 
 
 
■ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2 5/14~ 全国順次
 https://belmondoisback.com/

『リオの男』
ジャン=ポール・ベルモンドのブラジル大活劇。
フランス空軍パイロットが誘拐された恋人奪還へ挑む冒険譚に、アマゾン古代文明の土像をめぐる謎が絡む興奮展開。
主人公の軽妙&洒脱さ安定、建設途上の世界遺産ブラジリア都心部や広大な密林を眼下に展開するセスナ追跡劇は眼福度MAX。

"L'Homme de Rio" "That Man From Rio" https://twitter.com/pherim/status/1389090510019522561

『リオの男』中盤の舞台となるブラジリアは、1960年から建設が本格化した新興首都。

64年公開の本作は、土煙舞う荒れ地にモダニズム建築の父オスカー・ニーマイヤーのビル群が聳え立つレア景色を、記録写真とは異なる画角で撮る点も興味深い。観客の代わりに世界を冒険してくれる二枚目寅さんの風趣。画像https://twitter.com/pherim/status/1391019466813628432




『カトマンズの男』
自殺願望もつ大富豪青年が、暗殺者団に追われ中国・ヒマラヤ・インドを駆け巡る。
雪原、密林、空戦、乗象なんでもござれの大逃走、アグラ王宮から高層化前’60年代香港の水上集落まで眼福大漁。監督フィリップ・ド・ブロカ、超級カルト『まぼろしの市街戦』生む2年前の1965年作。

"Les Tribulations D'un Chinois En Chine" https://twitter.com/pherim/status/1391588385874092032  

 


『アマゾンの男』
ジャン=ポール・ベルモンド&フィリップ・ド・ブロカ最後のタッグ作。
虫に失礼なきよう顔を緑に塗る生物学者と、仏特殊部隊を連れUFO追う美人天文学者、孤高のオーラ放つ謎の少女が織りなすアマゾン冒険紀行。往年のセルフオマージュ満載なファンタジック展開が楽しい2000年作品。

"Amazone" https://twitter.com/pherim/status/1392851265252515842

『アマゾンの男』は、ベルモンド&ド・ブロカ組25年ぶりの作品。謎の少女が導く終幕の渇いた明るさに、ナチス撤退後一瞬だけ生まれたユートピア描く『まぼろしの市街戦』の“先”を見たようで沁みる。

 《ジャン=ポール・ベルモンド傑作選1》連ツイ:
  https://twitter.com/pherim/status/1318748254696165377
  (『大頭脳』’69 / 『恐怖に襲われた街』’73 / 『プロフェッショナル』’81)





『相続人』(1972)
鉄鋼と新聞を統べる財閥トップの死から始まる、謀略の無間地獄。
ジャン=ポール・ベルモンドが派手に跳び回らず軽快なギャグも飛ばさない、渋くシリアス演技を貫くレア作品。ナチスまで遡る陰謀の根源と着地点の意外さが趣深い。機上映像の頻出ぶりに、富裕イメージめぐる時代性を感じたり。

"L'Héritier" https://twitter.com/pherim/status/1395215521323225094




『エースの中のエース』
第一次大戦のフランス空軍エース(複葉機!!)が、ボクシングコーチとなり1936年ベルリン五輪を志す。
ヒトラーの実姉に惚れられるなど、ユダヤ少年の家族を救おうと決心する中盤から物語は急加速。重厚テーマ引きずりつつも、鉄十字のドイツ空軍エースとの友情がひたすら熱い。

"L'As des as" https://twitter.com/pherim/status/1396046043062575105  

『エースの中のエース』のヒトラーいじりは辛辣かつ抱腹絶倒、『帰ってきたヒトラー』『ジョジョ・ラビット』など近年多いヒトラー風刺描写を抑え、チャップリン『独裁者』へ最も肉薄する作品かも。
監督ジェラール・ウーリー(『大頭脳』も)は、原体験的場面を描く名匠の感。

 『帰ってきたヒトラー』 https://twitter.com/pherim/status/742609905341718528
 『ジョジョ・ラビット』 https://twitter.com/pherim/status/1213719980547559424




 

 余談。
 
 5/21から始まる《SPAAK! SPAAK! SPAAK! カトリーヌ・スパーク レトロスペクティブ》 http://www.spaak2021.com/ は次回ふぃるめも扱いにて。

 もはや直近の劇場公開作へ焦点化しがちなこの映画ツイート方針自体が不人気なんだなという空気は、去年より今年になって強く感じるようになりました。ツイッターの場合、ほぼ同じペースで続けているため如実にRT&いいね数やフォロワー数に反映されわかりやすい。特に劇場公開直前の作品へのいいね(favorite)数は半減、フォロワー数はまったく増えなくなりました。投稿ペースは同じなのに微減傾向へ転じているのは残念ですね。
 
 これ逆にいうと、日本語圏で触れるひとは100人もいないようなマイナー作(国内劇場&ネトフリ等VOD未公開作)でも相対的な注目度の差は縮まることを意味しそうなので、そこは試してみる甲斐もありそうです。結果がどうでれば何って話でもないですけれど。





おしまい。
#ふぃるめも記事一覧: https://goo.gl/NXz9zh
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