今回は、7月2日~7月9日の日本上映開始作を中心に、10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第180弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■7月2日公開作
『シンプルな情熱』
性の虜となる大学教員エレーヌ。
セルゲイ・ポルーニン演じるロシア大使館勤めの身勝手な男が相手とあってはやむなしの、疾走する欲動日乗。
乗換駅へ着いた列車内で情事の夢から咄嗟に覚める場面など、斬新さと親しさ覚える描写が驚くほど多い。ポリコレ逆張りの本質突く冴え。
"Passion simple" https://twitter.com/pherim/status/1410903941026439169
セルゲイ・ポルーニン当惑画像&原作読むかも、よって後日追記するかも。
『アジアの天使』
池松壮亮&オダギリジョー演じる性格真逆の兄弟が、活路を求め韓国を旅するロードムービー。
旅路へ合流するチェ・ヒソ&キム・ミンジェの兄妹との、通じない言葉を互いに使い続けるコミュニケーションが不思議と良い。この不思議を裏打ちする濃密さに、石井裕也監督作の本領をみる。
"당신은 믿지 않겠지만" https://twitter.com/pherim/status/1411161219977777158
『アジアの天使』の池松壮亮が醸す、《あなたに言葉の意味が伝わるかどうかは大事でなくて、僕は喋るので何はさておき聞いて下さい》という物腰やわらかゴリ押しスタイルが、同じ石井裕也監督作の大好物『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』にも通じてごっつ浸れる。
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』 https://twitter.com/pherim/status/1095514810458955776
芹澤興人の天使わろす。(後日追記するかも)
『微温(ぬるま)』 https://twitter.com/pherim/status/1320185988992303104
『Billie ビリー』
新時代を切り拓くスターは、なぜ失墜するのか。
ビリー・ホリデイ。酒に麻薬、夫の陰湿なる暴虐、記者の謎多き最期と闇展開つづくなか、天を突く歌声響かせるライブ映像の煌めきがひたすらまぶしい。
名声を獲得した後もやまない黒人女性シンガーゆえの被差別体験は沈痛の極み。
"Billie" https://twitter.com/pherim/status/1411554856469336072
■7月3日公開作
『わたしはダフネ』
ダウン症の女性ダフネは、母が急逝したあと塞ぎ込む父を見かね、母の生まれた村へのふたり旅を提案する。
快活な娘が、娘の障碍を心配の種にしたがる父の弱気をほだす流れは秀逸。イタリア映画の良種に充ち、人として気高く生きようとする魂はアポロンに追われるダフネそのもの。
"Dafne" https://twitter.com/pherim/status/1411897263442436099
■7月9日公開作
『サムジンカンパニー1995』
働く女性と環境問題を絡めた大企業内紛物ドラマ。
さすがの韓流、素材の扱いで圧倒的に魅せる。
水俣など昭和の公害や「一般職」という名の女性差別伴うカイシャ組織など日本の諸問題と、酷似しつつも微妙に異なる韓国社会の機微が面白い。’90年代ソウル再現演出も眼福。
"삼진그룹 영어토익반" "SAMJIN COMPANY ENGLISH CLASS" https://twitter.com/pherim/status/1413037024915771396
『ライトハウス』
19世紀、孤島の灯台守2人による精神の極限日乗。
ウィレム・デフォー&ロバート・パティンソンが、
魂の肉弾戦を凄演するA24製作の“これぞ映画”。
霧笛と海鳥の奏でる不穏の下、嵐で船絶え狂気と正気の境は溶け空気さえ歪みだす。逃げ場なしの人間こそ最も醜く怖ろしく、そして艶い。
"The Lighthouse" https://twitter.com/pherim/status/1412753021285453824
『ライトハウス』、霧笛と海鳥の不穏にはブラッドベリ『霧笛』が、リアルの圧倒的な泥臭さが昇華されるモノクロ美からは『神々のたそがれ』、加えて見知った俳優たちの神憑き演技見放題な点で『異端の鳥』など連想され、遊び心さえ感じる名作オマージュ場面も多々感覚される、迫力と眼福の逸品でした。
『神々のたそがれ』 https://twitter.com/pherim/status/589375565410406400
『異端の鳥』 https://twitter.com/pherim/status/1312611511567704064
『走れロム』“Ròm”
サイゴン、闇クジ“デー”で日銭を稼ぐ少年ロムの疾走する日々。
ロムの躍動する四肢へ肉薄し通しの映像がパワフル。メコンデルタの水上集落バラックや、チョロン(華僑街)味ある密集路地、無数のバイク群れる市場前の交差点など、全編にサイゴン=ホーチミン市の今が臭いたつ楽しさ。
"Ròm" https://twitter.com/pherim/status/1413393119123361793
『走れロム』のメコンデルタ水上バラック場面に、サイゴン川沿いの低開発地に棲まう老婆が吼える『落ち着かない土地』も想起され。
“都心対岸の未開エリア”は、活気ある新興都市の多くがもつ伸び代だけれど、それはそのまま昼夜沸騰する人間ドラマの好舞台たり得るのだなと。
『落ち着かない土地』 https://twitter.com/pherim/status/1206159469714952192
サイゴン・チョロン地区訪問ツイ https://twitter.com/pherim/status/442542417099489280
チョロン(華僑街)滞在の沸騰した夜の湿り気の記憶なども呼び起こされる鑑賞体験。後日追記予定。
『ベルヴィル・ランデブー』
おばあちゃんと幸せワンコによる、
マフィアに誘拐された孫奪還の大冒険。
助力する音楽家の老婆トリオが魔女のように気味悪く、かつ凄まじくカッコよい。
絵は見惚れるし音楽は聴き惚れる。ハリウッド的スペクタクルやお涙頂戴の感動物にない極濃の余韻がまさに格別。
"Les Triplettes de Belleville" "The Triplets of Belleville" https://twitter.com/pherim/status/1413112497544908806
『83歳のやさしいスパイ』
老人ホーム入居者の家族から内部の調査依頼を受けた探偵事務所が、選考をへて83歳の素人おじいちゃんを潜入させる。
ドキュメンタリーの語り口としてはやや演出過剰ながら、内偵を進めるうち外見は穏やかな入居者の孤独に迫り、おばあちゃんたちからモテだす展開に和む。
"El agente topo" "The Mole Agent" https://twitter.com/pherim/status/1412611698498752514
『83歳のやさしいスパイ』はチリ映画。本作の特徴は、老人ホームに対し探偵翁の活動目的を隠し撮影するドキュメンタリー性にあるが、お国柄の違いかあざとさも目につく。劇映画として観ればこの点霧消し素朴に涙を誘われる観客も多いはずで、まさに劇映画的な予告編集↑へ仕上げた国内配給の手法に感心。
■VOD/TV配信作(非劇場公開作)
『全裸監督 シーズン2』
山田孝之の圧倒的目ヂカラとバイタリティ。
七転八倒&抱腹絶倒の奔流だったシーズン1に比べ、人間ドラマの深みへシフトしたセカンドシーズン。満島真之介や國村隼、伊藤沙莉や玉山鉄二など脇役達が活きる脚本が目指された感ある質実作、じっくり見応え増した意外さは嬉しい。
"The Naked Director"
おしまい。
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