今回は、10月8日~9日の日本上映開始作を中心に10作品を扱います。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第190弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■10月8日公開作
『スターダスト』
デヴィッド・ボウイ初期。『2001年宇宙の旅』ベースのアルバム《スペイス・オディティ》から、苦渋を舐めるプロモ活動を経た全米ツアー実現へ。
多重人格に病んだ兄の影が架空人格スターダストを昇華させゆく、生々しいまでの屈折再現。70's初頭の米英音楽シーン描写は見応え充分。
"Stardust" https://twitter.com/pherim/status/1446283777890664448
『草の響き』
函館の街を、橋を、丘を、男は走る。
走り続ける。
精神失調からの恢復の試みは、長距離走者の孤独そのものだ。足は動かず、声は届かず。
自死した作家・佐藤泰志の原作から、またも珠玉の一篇が立ち上がる。東出昌大『寝ても覚めても』以来3年ぶりの主演作、その静かなる気魄の明滅。
"" https://twitter.com/pherim/status/1445292695887355906
『きみの鳥はうたえる』 https://twitter.com/pherim/status/1034633021956087808
『寝ても覚めても』 https://twitter.com/pherim/status/1035887434901250049
『神在月のこども』
十月=神無月が出雲では神在月。ってことは亡くした母にワンチャン会える鴨って異界へ旅立つ少女冒険譚。
全編アンニュイだけど、裏世界と日本神話を束ねる世界観悪くない。
因幡の白兎の末裔的ナニカが説明ゼリフ乱発込みでキュゥべえ(◕‿‿◕)すぎて、坂本真綾ハッスルした感。
"" https://twitter.com/pherim/status/1445376115422294016
『キャッシュトラック』
ジェイソン・ステイサム新作は、一見ありがち銀行強盗アクションぽいPRだけれど中身が超水準。
そこはガイ・リッチー監督作、派手な仕掛けに終わらず独自美学に基づく映像&音響設計、抑揚ある構成から子想う父の物語性まで全要素でジャンルを更新してくる周到さ。堪・能。
"Wrath of Man" https://twitter.com/pherim/status/1445729170240114692
ステイサム主演新作『キャッシュトラック』へ連なるリッチー・リメイク潮流。
『キャッシュトラック』2021←『ブルー・レクイエム』“Le Convoyeur”2004仏
『コードネーム U.N.C.L.E.』2014←『0011ナポレオン・ソロ』“The Man from U.N.C.L.E.”1960s米TVドラマ
『スウェプト・アウェイ』2002←『流されて…』1974伊
『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』
ニコラス・ケイジ主演新作。
アイデアはいいんだアイデアは、てな愛想笑いさえ予め読み込んだかの如く、ニコケイの宇宙彷徨は終わらない。
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』に発した奇天烈航路へ、まさかの園子温ハリウッド進出路線が交錯する狂気。
"Prisoners of the Ghostland" https://twitter.com/pherim/status/1444872473384652800
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』 https://twitter.com/pherim/status/1058196420342075392
『カラー・アウト・オブ・スペース—遭遇—』 https://twitter.com/pherim/status/1266146288782864385
『メインストリーム』
鬱々と生きる若い女性が、ネットやスマホと無縁に生きる男に惚れ込み動画投稿するや一躍スターYouTuber化、欲望と狂気の魔境を突き進む。
さすがコッポラの孫ジア・コッポラ監督作、メディアの暗部に親しく育った瞳が映しだす、蠱惑的なインターネットの妖しい昏さに戦慄する。
"Mainstream" https://twitter.com/pherim/status/1445955313648082946
『メインストリーム』、主演アンドリュー・ガーフィールドに着目すると、ハリウッド舞台でサブカル愛がパない名作『アンダー・ザ・シルバーレイク』の真に対極的進化形。
コロナ禍の閉塞心情を突き破る陽キャ開き直り版アンドリューの、にこやかに晴天下を闊歩する姿は爽快。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』 https://twitter.com/pherim/status/1050755560511918082
『ONODA 一万夜を越えて』
旧日本軍の任務を、1974年までフィリピン・ルバング島山中で守り続けた小野田寛郎の“終戦”まで。
約30年に及ぶ生存模様の再現が迫真的で、陸軍中野学校(スパイ養成校)の教官役・イッセー尾形による締めの演技も秀逸な一切の弛緩なき174分。森奥の30年を穿つ構築力に唸る。
"ONODA" https://twitter.com/pherim/status/1446082494705459208
「秘密戦の究極の原理は、自らの司令官であること」by イッセー尾形 (役名失念)
■10月9日公開作
『夢のアンデス』
大陸分かつ山脈スケールから弾圧のチリ現代史を眼差す試みは、秀作『光のノスタルジア』『真珠のボタン』を直に継ぐ。
“虐殺や拷問への抵抗が、今日では女性の権利等のデモへ変わったが本質は同じだ。私はここに残る”と老練カメラマンに語らせる亡命監督パトリシオ・グスマンの閾。
"La cordillère des songes" "The Cordillera of Dreams" https://twitter.com/pherim/status/1449000996483440654
『光のノスタルジア』 https://twitter.com/pherim/status/716983654719750146
『真珠のボタン』 https://twitter.com/pherim/status/712830494564442112
■日本公開中作品
『レミニセンス』
ヒュー・ジャックマン主演新作は、水没スラム化したマイアミで記憶ダイヴを商う男の追憶物語。
映像眼福の近未来ノワールで、攻殻感あるネオン風味が好めるだけに、水没劇場除き縦の動きがほぼ無かったのは勿体ない。ヨハン・ヨハンソン音楽が似合いそうな流麗モードは好きなやつ。
"Reminiscence" https://twitter.com/pherim/status/1451379247759511556
■VOD配信/TV放映作
“Downstream to Kinshasa”
コンゴ民主共和国キサンガニでの“六日間戦争”で障碍を負った人々が、政府補償を訴えるべく上京する。
首都キンシャサを目指しコンゴ河を下る人々が、船上で生活パワーを炸裂させる中盤は殊に圧巻。
議事堂前で冷遇を受ける描写は、カメラの存在がもつあざとさも気になる。
"En route pour le milliard" "Downstream to Kinshasa" https://twitter.com/pherim/status/1507328895241969667
コッポラ『地獄の黙示録』原作でもあるジョセフ・コンラッド『闇の奥』ではコンゴ河を海から遡るけれど、“Downstream to Kinshasa”に登場するのはその遥かに上流。
この六日間戦争とは、ウガンダ軍とルワンダ軍が両国から500km離れたキサンガニで起こした2000年の衝突。この規模感は知らなかったな。
『コンゴ川 闇の向こうに』 https://twitter.com/pherim/status/918993800722186240
↑現代コンゴ川を遡る映画。観たことを忘れていた。
余談。
ウガンダといえば、きょう10/15公開の『THE MOLE (ザ・モール)』、次回扱うけどこの北朝鮮メインの作品内でウガンダも登場する。登場する遠因として一帯の紛争は当然あるのだけど、『ホテル・ルワンダ』以降この超国家紛争を背景におく映画もだいぶ溜まってきたよね。誰かまとめ解説してるのだろうか。そんな本あれば読んでみたいし、ないなら関わってみたいとさえ思うけど、まぁ需要なさげやね。
おしまい。
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