今回は、10月15日~10月23日の日本上映開始作を中心に、11作品を扱います。(含再掲1作)
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第192弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりドラマ含むネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしばタイトル黒太字表記です。)
■10月15日公開作
※10/15公開作リドリー・スコット『最後の決闘裁判』“The Last Duel”については、4回先のふぃるめも196にて扱う予定です。
『キャンディマン』
鏡に向かいその名を5度唱えるとヤツが現れる。
『ザ・マーベルズ』(2022)監督ニア・ダコスタによる、シカゴの都市伝説に基づく’90年代映画化3部作更新の試み。
「お前は無実とは程遠いが裁かれない、それが問題だ」
背景に黒人差別と現代美術の拝金主義とを並置する今日性の巧緻。
"Candyman" https://twitter.com/pherim/status/1448448877829361665
この『キャンディマン』新作で感嘆するのは、直接的な’90s三部作やホラー領域を超え『パニッシャー』なども想起させる、スラッシャー映画というジャンルそのものの換骨奪胎ぶりで、製作&脚本ジョーダン・ピール(ゲット・アウト,アス監脚)の功績極大。
『かそけきサンカヨウ』
父とのふたり暮らしで気を張る娘。
再婚相手として到来する新たな母と妹。
娘が想う、心臓を病む少年と生みの母。
今泉力哉監督新作は窪美澄原作で、これはもっと観てみたいと思わせる。あの圧倒的に密な今泉演出がオリジナル脚本以外で活かされる、この冴えはとても鮮やか。
"" https://twitter.com/pherim/status/1448121405791477761
『Our Friend アワー・フレンド』
片方が末期癌に冒された夫婦と、
ひとりの生き惑う男とが育む友情。
死をめぐる描写が、家族ではない男の目線によって直接的感情的な受容や拒絶の外へと漏れ広がる。いつも一緒に登場する思春期の長女と幼い次女が、互いに異なる表情を見せ続ける演出も心に残る。
"The Friend" "Our Friend" https://twitter.com/pherim/status/1447531194216632320
『THE MOLE (ザ・モール)』
コペンハーゲンの元料理人ウルリクが、個人的興味からEUの親北朝鮮団体へ潜り込むドキュメンタリー。
10年かけ幹部へ昇進し、元外人部隊の男を石油王に仕立て武器密売の実態へ迫る過程はヤバ過ぎかつデキ過ぎで、ウガンダやカンボジアでの密会場面など凄まじく面白い。
"THE MOLE - UNDERCOVER IN NORTH KOREA" https://twitter.com/pherim/status/1448846202393358341
『THE MOLE(ザ・モール)』の虚実定かならない感じや、ウガンダパートの画作りに『誰がハマーショルドを殺したか』が強烈に想起させられたが、同じマッツ・ブリュガー@MBrgger監督作と知り納得。
暴かれる真相に驚くというより、現実自体の虚構性に迫る手つきが凄いんだよね。
『誰がハマーショルドを殺したか』 https://twitter.com/pherim/status/1283957868882833408
『THE MOLE (ザ・モール)』を観れば、北朝鮮幹部をコケにしたウルリク・ラーセンや「石油王」演じた男の今後を誰もが心配するはずで、しかし当人のツイート@TheMoleUlrichをみるかぎり、自伝を出版したり映画祭等で各地へ飛んだり、二人ともその状況を楽しんでいるらしい。
https://twitter.com/TheMoleUlrich/status/1448804340433661...
ドキュメンタリー映画が扱うことで、その主人公が死に追いやられた前例として『馬三家からの手紙』が直近にあったから心配になるわけで、もしウルリヒが今後も健在であればそれが中国と北朝鮮の差、ないしマッツ・ブリュガー監督作の真相めぐる一側面を証すということになる。さてどうなるだろう。
『馬三家からの手紙』 https://twitter.com/pherim/status/1241237376241815552
『〈主婦〉の学校』“Húsmæðraskólinn”
レイキャビクで1942年から続く家政学校。
理論と実践が常にセットで教えられ、教師たちはみな肝っ玉おかんという風情。
度々挿入される初の男子生徒だった髭紳士の回想はどれも面白く、ジェンダーギャップ指数世界1位常連のアイスランドゆえの、逆説的なおおらかさが興味深い。
"Húsmæðraskólinn" "The School of Housewives" https://twitter.com/pherim/status/1448284161010139136
『DUNE/デューン 砂の惑星』
※通常の作品ツイは後日ふぃるめも196にて。鑑賞当日連ツイを下記に。
"Dune" https://twitter.com/pherim/status/1449886986567782400
『DUNE/砂の惑星』、感想&評が真っ二つな良モード。
『ブレードランナー 2049』もそうでしたね。
引用RT(ホドロフスキーによるリンチ版感想):
https://twitter.com/itsuki_films/status/14486089806332231...
ちなpherimアイコンは、ヴィルヌーヴ初期作から。無名だった20年前、日本でも一瞬だけ上映あり。大作感より未だ『灼熱の魂』以前の手つきを探してしまいます。一度戻ろうよとさえ。今宵観につかまつる。
『ブレードランナー 2049』 https://twitter.com/pherim/status/974220346978021376
ドゥニ・ヴィルヌーヴは10代20代の自分にとって、シネコンでガンガンかかる方向へは突き抜けない、カラックスやアサイヤスのような存在でした。
だから“Prisoners”以降の展開は驚いたけれど、魂の伴侶感あったヨハン・ヨハンソンも今や不在の荒野と成り果てしこの世界。さて。
わいわい。300%ドゥニ濃縮還元わらう。てかその妖怪じみた咀嚼力なんなのハンス神、すでに純粋ヴィルヌん部屋([独]Zimmer!)完成しとるやんなこんなでDolby Atmosにて再見確定。おまけにキモかわスカルスガルド萌ゆ。呑んでないのにナチュラルハイじゃう再見おゔぉわーオヤスミ世界( ´ ▽ ` )ノ~~Zzzimm
鑑賞直後劇場外映像:https://twitter.com/pherim/status/1450117467141902336
■10月22日公開作
『グレタ ひとりぼっちの挑戦』
“HOW DARE YOU!”の国連演説へ至る後半の流れは殊に見入る。
彼女についてはこれまで興味を持てずにいたけれど、報道反復で固定イメージ化されたグレタ像への、トランプら各国首脳から有象無象まで全ての反応が空しく浮き上がる構成はフェア。終盤の航海場面アガる。
"I Am Greta" https://twitter.com/pherim/status/1450665606114545674
拙稿「子どもの宇宙とこの自由」: http://www.kirishin.com/2021/10/27/51237/
『ビルド・ア・ガール』
大家族で暮らす16歳少女が、冴えない鬱屈と沸騰する才気を抱え、音楽誌ライターとして走りだす。
“自分という最大の謎を生き切りなよ”
主演ビーニー・フェルドスタイン、レディ・バード&ブックスマートの溌剌バディ役そのままに躍動する姿は超痛快。
"How to Build a Girl" https://twitter.com/pherim/status/1450438699204833286
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』 https://twitter.com/pherim/status/1292699235675041794
『レディ・バード』 https://twitter.com/pherim/status/1001805966545858560
■10月23日公開作
『Shari』
とける音、ぶつかる音、生きる音。
しゃりしゃり、しゃりしゃり。
知床斜里には赤いやつがいる。雪原に跳躍し、息をきらせ樹下に憩う。住民はそれを知らず、それを感じ、気づかないふりして今日も暮らす。
初長編の撮影・石川直樹という、どんどん面白くなる吉開菜央唯一無二の三昧路。
"Shari" https://twitter.com/pherim/status/1451020748328357888
“私は私を獣だとおもう”
赤いやつ。端的には、行き場を失くしつつある熊や己らを生かす贄としての鹿肉(鹿ではなく)の精、造形的には↘由来。という極私妄想。ムックは公式に雪男=イエティ起源らしい。
対アイヌ防衛の要から、樺太の先住民が住んだというオロンコ岩↙後半登場。鬼の気配。
(画像)https://twitter.com/pherim/status/1451560727924252677
・石川直樹の映像と吉開菜央舞踊
・松本一哉の音響
を巡り近日追記予定。
“流氷の代わりに、奇妙なシャーベット状の波が来ていた”
『サウダーヂ デジタルリマスター版』
シャッター通りに移民労働、パチンコに水商売。街の閉塞が心の摩耗を加速させる。
人を動かす金の流れを、故郷を想う郷愁が遡る。
言葉は錯綜しても交わらず、右肩上がりの欲望が目に見えぬ速度で暮らしを窒息させる。
この甲府のリアルはあまりにありふれて、国境を超えあふれていく。
"" https://twitter.com/pherim/status/846004803981361153
空族作品連ツイ https://twitter.com/pherim/status/830768555998130179
(『バンコクナイツ』『国道20号線』『典座 -TENZO-』他)
『サウダーヂ デジタルリマスター版』、10/23公開。
吐息と発汗の湿った熱気渦巻く『国道20号線』&『サウダーヂ』の多国籍郊外から、ワン・メコンの掛け声(by @Kuzoku_Tomita)響く『バンコクナイツ』経てRap in TONDOへ拡がる汎アジア的空族宇宙。コロナ禍後も楽しみすぎる。
■VOD配信/TV放映作(非劇場公開作)
“Un 32 août sur terre”(August 32nd on Earth)
交通事故による主人公の記憶障害により、
世界は8月32日へ突入する。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ初長編1998年作。
砂への視覚的執着はSicarioからブレラン, DUNEまで貫かれてるけれど、初作での炸裂ぶり和む。後半の妊娠テーマは次作“渦”(2000)へ直に連なる。
"Un 32 août sur terre" "August 32nd on Earth" https://twitter.com/pherim/status/1451905419962552321
※現在mubiにて配信中でやんす。↓(英独伊葡土字幕付)
https://mubi.com/films/august-32nd-on-earth
余談。この10月上旬から11月上旬のひと月余りは、考えてみるとこれまで生きてきたなかで最も多くの時間を映画を観、映画について考え、書くことになりそうだ。
体力的な問題も考えれば、量としては生涯の最多月間になるのかも。もはや些事に躓くとすべてが横倒しになりゆくので、心を空しくして当たりとう。11月中旬には温泉にでも浸かろうかぬ。
なんだその老いた発想。おいとーる。
おしまい。
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