今回は、第33回東京国際映画祭上映作(2020/10/31-11/9開催)のうち、《TOKYOプレミア2020部門》から11作品を扱います。(含再掲1作)
※今週末から始まる第34回東京国際映画祭ではなく、前回分。
いつか更新しようと後回すうち一年たっちゃったシリーズPart1。
タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート
[https://twitter.com/pherim]まとめの第193弾です。
強烈オススメは緑、
超絶オススメは青で太字強調しています。
(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
■TOKYOプレミア2020 部門《1》 (通常年におけるコンペ3部門のコロナ対応統合版)
https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?departments=...
『アフター・ラヴ』
結婚時ムスリマへ改宗した英国女性メアリーが夫の没後、フランスで夫が築いた別の家庭を知る。
手料理や夫の故郷パキスタンでの葬儀時の孤立など趣深い場面多く、ドーバーの白壁が氷河状に崩れる図や、やかんの沸騰音へ心の動揺を投影させる演出は粋。残酷かつ穏やかな海峡日乗。
"After Love" https://twitter.com/pherim/status/1325794704345030656
『赦し』
トルコの隔絶された山村。弟を撃ち殺してしまった少年と、少年に底深い怒りを覚える父、苦悩する母。
カインとアベルを想わせる緊張と、君臨する父の厳格さを突き崩す銃弾一発。そこから“赦し”へと漕ぎだす物語は、人を含む光景の全体が主役となり、神の精緻な箱庭を眺める感覚に襲われる。
"Forgiveness" "Af" https://twitter.com/pherim/status/1338315518848106496
『アラヤ』(無生/Alaya’20)
異様な力作。チベット圏の荒野と辺境都市を舞台とする諸行無常譚で、狩猟中の失踪や森奥の暴行、遺児や閉鎖病棟などが複雑に絡みあう本作原題は『無生』、英題“Alaya”。阿頼耶識由来。
’87年生まれ石梦の長編第1作。中国映画第8世代の女性監督、事象の底部を捉えるこの感性、今後化ける。
"無生" "Alaya" https://twitter.com/pherim/status/1324890492388044802
『アラヤ』(無生/Alaya’20)、ラマ教の仏塔=チョルテンにチベット文化を感覚したけれど、ロケ地は北京に近い山岳地と。蒙古圏か。
石梦(シー・モン)監督Q&A →ttps://youtube.com/watch?v=ROD0rLdfsSU
明晰さは予想通り、仏教徒と明言+英語応答+ヤンキース帽姿は意外&納得。TIFF上映は150分、4時間版もあると。
ちょ!!
以下、関連の連続ツイート→
https://twitter.com/pherim/status/1325322311382171649
『鵞鳥湖の夜』から『薄氷の殺人』『迫り来る嵐』『幻度』までの中華ノワール連ツイ(↓)に続ければ、『アラヤ』は極上の西域ノワール。
東京国際映画祭、忙しすぎて上映作品ツイは今後ゆるりしていくけれど、とりま『足を探して』のグイ・ルンメイ/桂綸鎂は漂亮可笑でした。
中華ノワール連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1265839448635277312
『オマールの父』
イスラエル側で死んだわが子を抱き故郷へ戻ろうとするパレスチナ人の若い父親と、彼を助けたいイスラエル人妊婦とのせつなき珍道中。
医療格差と分離壁の固有背景を後ろ手にした彷徨は、物言わぬ遺体を核とする点『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』を強烈に想起させる。
"Abu Omar" https://twitter.com/pherim/status/1330123595297722370
また主演のカイス・ネシフ、『パラダイス・ナウ』の印象鮮烈な俳優だけれど、本作での受動的・非主体的な沈んだ瞳の底に不可視のマグマを感じさせる佇まいは『テルアビブ・オン・ファイア』に通じる。つまりはこの外見上の脆さこそ、“パレスチナ”を象徴的に擬人化する佇まいなのだろうなとも。
『テルアビブ・オン・ファイア』 https://twitter.com/pherim/status/1191902626884907008
カイス・ネシフのサービスショット with 監督&主演女優 &石坂健二
fromhttps://www.you tube.com/watch?v=JV2I-ApTkKU
↑主役俳優のお茶目ショット目的。動画嵌め込み添付されちゃうので一字あけてます。
原題“Abu Omar”をめぐり『オマールの壁』絡め追記予定。
『オマールの壁』 https://twitter.com/pherim/status/724787832963756033
『Malu 夢路』
ある姉妹の歳月つらぬく愛憎模様。マレーシア華僑を背景に敷くと面白いエドモンド・ヨウ(楊毅恆)、数多い日本舞台作は情感描写過剰が外連味と化すきらいを感じてきたけれど、本作はうまく合流&軟着陸した観。
永瀬正敏の飄々として枯れた中年オーラ安定、
中国語で笑う水原希子新鮮。
"无马之日" "Malu" https://twitter.com/pherim/status/1326172349339639810
『COME & GO カム・アンド・ゴー』
大阪キタ。ベトナム人技能実修生、ミャンマー⼈苦学生、香港移民家庭、韓国人風俗嬢集団等々もはや文化混淆とか超えた特濃日乗。
三線をせつなく奏でる沖縄出身のAV制作会社社長、に騙されかける徳島出身のネットカフェ難民娘など、輪郭蕩ける“日本”描写も趣深い。
"Come and Go" https://twitter.com/pherim/status/1455525807342772225
リム・カーワイ『新世界の夜明け』 https://twitter.com/pherim/status/857768501917892608
リム・カーワイ @cinemadrifter
Nang Tracy @NangKhamHom
渡辺真起子 @nabemaki
『遺灰との旅』
インド人一族の遺産相続めぐるワゴン車ロードムービー。
大黒柱の死をきっかけに家族親戚が集まるドタバタはよくあれど、散骨の旅路を描く楽しさ際立つ。性愛に関しては保守的なインドのコメディ映画で、女性の同性愛や自立を混ぜ込む若手男性監督作(1979年生まれ)が現れた新時代感。
"Ashes on a Road Trip" https://twitter.com/pherim/status/1335946860230397955
『ガンジスに還る』 https://twitter.com/pherim/status/1053462547561496577
『バイク泥棒』
ルーマニア移民の若い父親が、商売ダネのバイクを盗まれ苦境へ陥る。保険なし社会保障なしで働くリスクが一気に噴出、家族友人関係へ無慈悲に影響を拡げゆく。
デ・シーカ『自転車泥棒』から70年たって同種のキツさへ嵌る人間を依然“必要”とする社会。音楽が無闇に良く余計に切ない。
"The Bike Thief" https://twitter.com/pherim/status/1337231189459968002
※主演 ゴッズ・オウン Alec Secareanu
@AlecSecareanu
『ファン・ガール』(フィリピン’20)
憧れのスターが乗る車へ潜り込んだ熱烈ファンの16歳女子が体験する、めくるめく一夜。
虚像の失墜、むせ返る肉弾戦を経る予想不能の展開ながら素朴な冒険成長譚へ落とす巧さ。主人公役Charlie Dizonの熱演もとより、本人役でスター演じるPaulo Avelinoの飄々とした佇まいは印象的。
"Fan Girl" https://twitter.com/pherim/status/1345224585017397254
トーク追記可能性。
『アップル』
記憶をなくした男の日々。
記憶はないが体はある。音楽に身体記憶が揺さぶられ、くねりだす秀逸ダンス。浮遊する現実認識を引き写すような離人症的映像の、明るく渇いた距離感が妙趣。
元ランティモス助監督とは納得のクリストス・ニク監督作。ケイト・ブランシェット製作。
"Apples" "Mila" https://twitter.com/pherim/status/1478559077836128257
『二月』
ブルガリアの辺境に生きる寡黙な男。
その生涯を3篇構成により描く。
羊飼いの祖父と暮らす少年期にみた幻視。入隊の誘いを断り羊飼いの道を選ぶ青年期。そして決断の刻を迎える老年期。荒涼さが先に立ち、物語的快楽の欠如が潔く感じられるほど充溢の時間が漂う。この音無しの余韻は稀有。
"February" https://twitter.com/pherim/status/1344261567043391491
余談。備忘録として始めた本ふぃるめもも、これだけ続くと極私的な検索価値もすでに高く、従って1年遅れとはいえ省略もすでにし難く。
とはいえね、そのうち更新しなきゃっていつも思いつつ1年だよ。自分にびっくりするよもう。
まとりあえず、やらぬよりよし。
おしまい。
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