pherim㌠

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pherim㌠さんの日記

(Web全体に公開)

2021年
10月30日
01:34

ふぃるめも195 第33回東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門

  

 今回は、第33回東京国際映画祭上映作(2020/10/31-11/9開催)のうち、《ワールド・フォーカス》部門から13作品を扱います。(含再掲3作)
 《第17回ラテンビート映画祭 IN TIFF》(ワールド・フォーカス部門内連携企画)上映作を含みます。

 ※きょうから始まる第34回東京国際映画祭ではなく、前回分。
  いつか更新しようと後回すうち一年たっちゃったシリーズPart3!!

 
 タイ移住後に始めた、劇場/試写室で観た映画をめぐるツイート[https://twitter.com/pherim]まとめの第195弾です。強烈オススメは緑超絶オススメは青で太字強調しています。(2020年春よりネット配信作扱い開始。黒太字≠No Good。エッジの利いた作品や極私的ベストはしばしば黒字表記に含まれます)
 
 

■《ワールド・フォーカス》部門
 https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『足を探して』“腿”
敗血症で早逝した夫の、壊死切断された足のゆくえを辿る妻。台湾コメディ特有のおおらかさ充満、せつない話のそこかしこで笑わせる。
グイ・ルンメイ(桂綸鎂)の見たことない要素連発。圧倒的美貌もつ大陸女優の台湾での知名度を使うメタジョーク他、力の抜けた感じが和めて好き。

"腿" "A Leg" https://twitter.com/pherim/status/1478699038870745095




『国境の夜想曲』“Notturno”
ジャンフランコ・ロージ監督新作。
同監督名作『ローマ環状線』から『海は燃えている』の地中海経て混迷の中東へ上陸した質感は、しかし暴力と死の気配漂うその場所で、例えばパトリシオ・グスマンの静謐さとは真逆の軋みをあげる。超越でなく拮抗を選び続ける映像美学。

"Notturno" https://twitter.com/pherim/status/1491019101715582979

※TIFF2020時の邦題は『ノットゥルノ/夜』。

  『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』 https://twitter.com/pherim/status/508867705277906944
  『海は燃えている』 https://twitter.com/pherim/status/829540157674057728

  パトリシオ・グスマン『真珠のボタン』 https://twitter.com/pherim/status/712830494564442112
  パトリシオ・グスマン『夢のアンデス』 https://twitter.com/pherim/status/1449000996483440654





『親愛なる同志たちへ』
ソ連1962年、黒海に近い工業街ノボチェルカッスクの労働者蜂起と虐殺劇。
市井の生活者にしてスターリン信奉者の主人公女性、コサック精神が気配として残る街など好設定。ソビエト街区のモノクロ哀愁美と、沸点へ徐々に近づく前半のタルさを怒涛の終盤へ活かす構成はアガる。

"Dorogie Tovarischi!" "Dear Comrades!" https://twitter.com/pherim/status/1475656925190627331




『メコン2030』“Mekong 2030”
メコン流域5カ国の若手監督5人によるオムニバス。
アノーチャ・スウィチャーゴーンポンもソト・クォーリーカーも、開幕後すぐ分かるのが面白い。
『十年』メコン版の企図とは裏腹に“よそ行き”感やや過剰、メコン結束の困難がむしろ浮き彫りに。

"Mekong 2030" https://twitter.com/pherim/status/1453919088200151049

  『十年 Ten Years Thailand』 https://twitter.com/pherim/status/1060724596192636928
  『十年 Ten Years Japan』 https://twitter.com/pherim/status/1056860832338857985
  『十年』(香港) https://twitter.com/pherim/status/875160251636383745

(共作時アノーチャの地雷感。)

  “Krabi 2562” https://twitter.com/pherim/status/1234424207401816064


 
 
 
『海辺の彼女たち』
ベトナム人女性3人のたどり着く場所。
孤立、戸惑い、希望、悲嘆。
異境の夜を生き抜く3人の表情へ密着し続ける藤元明緒監督新作。技能実習制度の実態を声高には訴えず丹念に掬い撮る。
偽造IDを使わざるを得ない状況へと至る必然。
現実的決断ゆえにこそ考えさせる終幕の秀逸。

"Along the Sea" https://twitter.com/pherim/status/1386895322585001992

終幕における選択は考えさせる。反感をもつひともいるだろう一方で現実的にはそれしかない。その現実の狭さこそ問題だという表現。

  拙稿「最果ての彼女たち」 http://www.kirishin.com/2021/06/13/49370/
  



『悪は存在せず』
イランの死刑テーマ4話構成。同一監督ゆえ統一された質感で微妙に各話リンクする、群盲象を撫でる風はなかなか深趣。現代イランの演劇的厚みも感覚され。
全体を貫く静謐にマレーシア映画“Apprentice”が想起された。日本の死刑物のように激情を迸らせたりしない点込みで。

"Sheytan vojud nadarad" "There Is No Evil" https://twitter.com/pherim/status/1456254646180143108

  “Apprentice”https://twitter.com/pherim/status/851428572438831104




『荒れ地』
モノクローム、荒廃地、古工場。好き。
煉瓦工場の閉鎖が決まったとたん泡立つ人間模様を、流行りの長回しでご堪能あれって趣旨なんだけど、タル・ベーラ調の極美麗画と、イラン社会派映画に特有の過剰にイキってる感とが醸す夾雑音かまびすしゆ。イラン経済を煉瓦で暗喩するのは粋仕草。

"Dashte Khamoush" "The Wasteland" https://twitter.com/pherim/status/1454968715326345216

  煉瓦工場が舞台に使用されたフランス映画“Les Petites Mains”(Little Hands)
  https://twitter.com/pherim/status/1254975354369830912


煉瓦工場映画という新提案。って映画にかぎらず変わった切り口から思ってもない物同士をくらべると、思ってもない発見がありますよねっていう。




『悪の絵』
猟奇殺人を犯した囚人の絵が凄すぎて、刑務所の教官画伯は圧倒され苦悩する。
芸術と倫理、作品と作者の距離問う良テーマながら、剛速ド直球にメリハリ利かせるあまり逆向きステロタイプへ堕した感。台湾映画ながら大陸中国の殺伐芸術観濃厚。陳永錤監督作、東明相+黃河深甚。

"惡之畫" "The Painting of Evil" https://twitter.com/pherim/status/1599764320090738696

  『アウト・オブ・フレーム』(片甲不留)https://twitter.com/pherim/status/857059340691177472
  同リバー・ホアン主演作“翠絲” https://twitter.com/pherim/status/1166198914870984704
  《死刑囚表現展2019》連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1203980100695293958





『トゥルーノース』
北朝鮮。強制収容所の内幕を主題に、
現在進行形の地獄絵図を活写する告発エンタメ作。
『夜と霧』他ナチス物由来かと連想誘う場面場面こそ、しかし最も真へ迫る表現たり得るとも感覚され、不謹慎と受けとる客の不評さえ十全と覚悟する、在日4世監督の巧緻と気構えに唸らされる。

"True North" https://twitter.com/pherim/status/1400696937775464454

『トゥルーノース』は感情移入を誘う演出が巧すぎて、素朴に感動しかねない自分を抑える努力が必要だった。
感動ポルノ的消費を通じ暴虐の周知が為されるスピルバーグ『シンドラーのリスト』の轍が意図されたとしてアリだと正直思うし、わざとポリゴン粗目とするウェルメイドな攻殻的野心も凄い。が(続

  『わたしは金正男を殺していない』https://twitter.com/pherim/status/1313313239799799808
  
例えば『わたしは金正男を殺していない』では独白の凄絶なリアリティを、構成の限界から半ば無視されるもう1人の“実行犯”女性が支えていた。
北朝鮮の内幕告発映画には付き物のこの種の“破れ”が『トゥルーノース』には一切ない、ことに惹起される不穏さ。今後考えてみたい。




『デリート・ヒストリー』
ネットの動画削除したい勢が七転八倒。
便利な物に埋もれ窒息寸前の私達。
今や黒澤明『生きる』の窓口たらい廻し刑さえ温かく、アプリ使うためのpassword再発行のためSMS受信するために電話番号思い出すためメモ探す毎日death!っていう空回りの恍惚宇宙にただ慄える。

"Effacer l'historique" "Delete History" https://twitter.com/pherim/status/1606120239220936704
  
 『タバコは咳の原因になる』(出演者かぶりの仏ライフコメディとして)
  https://twitter.com/pherim/status/1601054074778288128 





□《第17回ラテンビート映画祭 IN TIFF》(ワールド・フォーカス部門内連携企画)上映作
 https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html?keyword=&...
 
『家庭裁判所 第3H法廷』
フロリダの家庭裁判所で、虐待やネグレクトなど子供の保護と親権を巡る審理下の親たちを映すドキュメンタリー。
一切動かないカメラが、驚くほど面白い。審理に臨む法曹人や証言するソーシャルワーカーらの誠意が声に篭り、時に神妙、時に嗚咽する親達の放つ人間味が熱い。

"Courtroom 3H" https://twitter.com/pherim/status/1461314677799993346




『83歳のやさしいスパイ』(『老人スパイ』)
老人ホーム入居者の家族から内部の調査依頼を受けた探偵事務所が、選考をへて83歳の素人おじいちゃんを潜入させる。
ドキュメンタリーの語り口としてはやや演出過剰ながら、内偵を進めるうち外見は穏やかな入居者の孤独に迫り、おばあちゃんたちからモテだす展開に和む。

"El agente topo" "The Mole Agent" https://twitter.com/pherim/status/1412611698498752514

『83歳のやさしいスパイ』はチリ映画。本作第一の特徴は、老人ホームにはスパイ翁の活動内容を隠し撮影敢行する点にあるが、お国柄の違いゆえか正直あざとさが目につく。劇映画として観ればこの点は霧消し素朴に涙を誘われる観客も多いはずで、まさに劇映画的な宣伝をしてみせる国内配給の手法に感心。

※TIFF2020時の邦題は『老人スパイ』。




『息子の面影』“Sin Señas Particulares”
メキシコの母が、仕事を求め旅先で消えた息子を探す旅路へ。一方米国強制退去となった青年は故郷を目指す。
この美しくも残酷な暗黒ロードムービーの、迫真描写の数々に茫然自失。黒澤描く戦国級の生き地獄を同時代にみる’81生まれ女性監督初長編、お見事。

"Sin Señas Particulares" "Identifying Features" https://twitter.com/pherim/status/1453725858095534098





 余談。この部門で痛恨だったのは、アン・ホイ『第一炉香』が満席で観られなかったこと。いやそれ外すかい自分、いっちゃん観なあかんやつやんと、上映時間中お外で地団駄踏んでおりました。ってもう一年前の話ですけどね。大概忘れた映画もあるのに、そういうことはとっても覚えてる残念メモリー。同じ失敗するなよって話ですね。きょうから第34回が始まります。
 
 正直ここまでどっぷり浸かるとは、3年前までまったく思ってませんでした。
 この映画祭、それまで嫌な思い出しかなかったん。ファイッ!





おしまい。
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